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【すっぽんノベル】 「桃太郎」 第四話

writen:AD.TAKEDA

「遅かったじゃねぇか。てっきり逃げ出したのかと思ったぜ。んで?例のものは手に入ったのかい?」

振り向くとそこには、いかにも高そうなスーツにオールバックといった出立の中年の男が立っていた。

「悪いが、あんたと喋るために、ここに戻ってきたわけじゃない」青年はそう言うと、その場を離れ、奥へと続く路地を進んだ。

「ちょ、ちょ、坊ちゃん!待ってよぉ、それ冷たくない?久しぶりなのに、なんか冷たくない?」

オールバックの男は、青年の前に立ちはだかり、とうせんぼと言わんばかりに、両手を大きく広げていた。

「もう一度言おうか?ボクは、父さんと話がしたいだけだ。そこを通してくれ」

「坊ちゃん...、そうはいかねぇよ。いくら坊ちゃんでも、信用ならねぇ。なにせ一度、俺たちを裏切ったんだぜ?そう簡単に通すわけには行かねぇな」

オールバックの男は、スーツのうちポケットに刺さった“水鉄砲”をチラつかせた。いかにも高そうに見えていた光沢あるスーツは、よくみると、光沢ではなく、水で濡れているだけだった。どうやら水鉄砲で遊んでいたらしい。

昔と少しも変わらない光景を目の当たりにし、懐かしさよりも呆れる気持ちの方が上回っていた。ふぅーとため息を吐いた青年は諭すようにこう言った。

「なぁ、バックス。あんたらが楽しく過ごしている間に、エドワーズはしっかりと準備を進めていたぜ」

オールバックの男の顔色が変わった。

「エ、エドワーズは…生きているのか?」

「そんなことも知らないのか…組織も落ちぶれたもんだなぁ。はぁ…エドワードは、“母さん”という最強のパートナーを手にしていたよ」

青年はニヤリと笑って、遠くの方を見つめた。いつの間にか夜があけようとしていた。

一方その頃、エドワーズを抱え、部屋に戻ったふさえは、自分の取った行動に驚いていた。
高層マンションの30階から落ちていくおじいさんを光の速さで駆け抜け、助けたのだ。

「なして、わたしもおじいさんも無事だったんじゃろう…」

自分では何が起きたのかよくわかっておらず、ふさえからは、もう“黄金のオーラ”は消えていた。

「とにかく、おじいさんが無事でよかった」

マンションから落ちる時に破れてしまったのか、エドワーズの着ていたステテコは、ボロボロになっていた。

「あらあら…」

エドワーズを寝かせるために、ふさえが買ってきたお気に入りのくまさんのパジャマに着替えさせようとした。

↓以下、世界線の選択になります↓

1. その時、ふさえの後ろで懐かしい声がした。
「探し物はこちらかの...」
そこには、右手にくまさんのパジャマを持って、もう帰ってこないと思っていた古いおじいさんが立っていた。

2. ボロボロのステテコを脱がせると、ふさえは驚いて大きな声を出してしまった。エドワーズの太ももの内ももには、“黒い桃“が描かれた刺青が入っていたのだった。

3. ボロボロのステテコを脱がせると、すぐさま目を覚ましたエドワーズは、急にトーンを変えて「ふさえ...、最近は薬の力なといらんけんのぉ」と言い放つと、ふさえを強引に抱き寄せた。

番組内ではリスナーさんの投票で1番の世界線が選ばれました。第五話は1番の世界線で物語が続きます。

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立花裕介
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