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【すっぽんノベル】「桃太郎」第十話

writen:AD.TAKEDA

その時だった。強烈な爆風に飲まれたかと思うと、大量の桃太郎のクローンが壁を壊して押し寄せてきていた。

「バックスめ、しくじったか」

瞬間、一人の桃太郎が、まだウトウトしているこっちの桃太郎に襲いかかる!ドグシュゥ!!鈍い肉の音がする。呆然と見ていた目の前には、エドワーズが、まるで弁慶のように微動だにせず立ちはだかっていた。

「待たせてしまったのぉ…、ふさえ」

白髪まじりの頭髪からにじむような汗に、光が反射して、後光が指しているように見えた。エドワーズの不器用さの中に優しさが垣間見える。この人は自分にとって、本当に大事な人だとふさえは再認識した。

「エドワーズ、、あたしは、もうええから、、この子を...桃太郎を守ってくれるかい…?」

「わかっておる...。坊っちゃんはもちろん、ふさえも必ず守ってやる」

カッコいい、、ふさえの目が、きらめいた。それをしってか知らずか、エドワーズは、向かってくるクローン軍団へ正面突破をしかけた。10体はいるだろうか、坊っちゃんと同じ顔をしたクローンがこちらに向かってくる。中には、すでに黄金のオーラを身にまとっているクローンもいるようだ。肉弾戦だ。まずは1体ずつ。鍛え上げられた肉体で勝負する。

「うわぁぁ!!」

エドワーズは簡単に弾き飛ばされた。2メートルほどは上がっただろうか。高く飛ばされたエドワーズの体は、一回転し、地面に強く叩きつけられた。

「エドワーーーズ!」

ふさえがさけぶ。その心配をよそに、すぐさまムクッと起き上がる。高く飛ばされたが、落ち方が良かったのだ。落ち方?いや、受け身といった方がいいだろうか。そうだ、エドワーズは、柔道部だ。

「これくらい、なんてことないわい」

エドワーズはそう言うと、すぐに立ち上がり、またクローンへ立ち向かう。だが、また簡単に弾き飛ばされしまう。今度は、コンクリートの壁に激突した。

「さっきのは、前まわり受け身。そしてこれは、後ろ受け身の応用じゃよ」

そういうと、少しよろめきながらも、クローンからふさえを守るため、何度も何度もぶつかっていく。ドーンとまた大きな音。

「これは、横受け身…」

「もうわかったって!受け身がうまいのわかったから!受けてばっかりやないの」

たまらず、ふさえがそうさけぶと…

「すまない...」

と一言残したエドワーズは、横受け身に失敗したのか、グッタリして、立ち上がることができなくなった。柔道部の稽古はさぼりがちだったため、受け身は稽古していたが、相手を攻撃するための投げ技は、まだ習っていなかったのだ。

「エドワーズー!」

ふさえの声を近くで聞いていた古いおじいさんは、複雑な気持ちだった。ふさえのことを思って、ふさえと一緒にいたいからと、考えに考えて、桃太郎と同じ能力を持つクローンを作った。そのふさえのこころは、エドワーズこと山内に向いているのではないか。ちょっとクローンを応援しちゃっている自分がいた。ただ、気がかりなのは、クローンの方が、桃太郎にはいまだ見られない黄金のオーラがただよっていたことだ。

「これを使うこともできたが…」

古いおじいさんの手には、親指サイズの精密機器があった。このスイッチを押せば、黄金のオーラの力を消すことができた。

「ん?ちょっと待てよ。」

これはふさえにかっこいいところを見せるチャンスじゃないか!古いおじいさんは、草むらに落ちていたエロ本を見つけた少年のように、鼻の下を伸ばした。

「ふさえ、大丈夫か...?お前に何かあったら...」

男は黙って背中で語る世代の古爺は、今までにみせたことのないほどの優しい顔をしてみせた。

「…あんた、、今更なんね?…あんたは、私がいて欲しい時におらんかった。こんな弱っている時に、あたしにつけいるなんてこと、通用すると思ってんかい」

よ、読まれている...。上辺の優しさは、すぐにバレるものだ。パリーンという音とともに、古爺の思惑がこの一言で、全て崩れていった。ワシは、何のために、頑張ってきたのか。ふさえと一緒にいたい。それでも、ふさえはこっちを向いてくれない。

「く、くそう」

なぜだ、何もかもうまくいかない。どこにぶつければいいのか。古爺は気付けば、手に持っていたスイッチを握り潰していた。

「あぁ、最後の一個じゃったのに...」

その時だった。空気を読んで様子を見ていたクローンが、4人に向かって襲ってきた。どうすれば、このクローンを制御できるのか...

↓以下、世界線の選択になります↓

1、『びーびーびーびー』耳を刺すような電車音が響いた。この音は、久しぶりだ。元いた星「地球」からの連絡だった。
「...左之助、左之助、聞こえておるか。我々はようやくそちらの星への到着できそうだ。聞こえておるか。準備はよいか」
古い爺さんは、静かにこう答えた。
「準備は...、できております」

2、クローンは、桃太郎目掛けて飛びかかってきた。母親ふさえのひざで寝ている桃太郎を跳ね飛ばし、クローンがふさえのひざで甘え出した。なるほど。やはりクローンなのだ。ふさえのいうことなら聞いてくれそうだ。ふさえはこうつぶやいた。
「お前たち、あの爺さんをやっておしまい!」

3、その時だった。
「ブーーーン」
聴き慣れない羽の音がする。漆黒に塗られたドローンが、頭上を飛んでいる。そのドローンに向かってクローンが、吠えた!
「ワオーン!」

番組内ではリスナーさんの投票で「2番」の世界線が選ばれました。第十話は「2番」の世界線で物語が続きます。

放送業界を夢見る相方「AD.TAKEDA」と楽しくおしゃべりの時間「夜のすっぽナイト」は毎週木曜日22時からツイキャスにて生配信中!!


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立花裕介
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