成田再ハブ化〜ユナイテッド航空の思惑〜
みなさんこんにちは。突然ですが、10月27日、ユナイテッド航空が成田−セブ線を開設しました。ユナイテッド航空といえばアメリカ最大規模の航空会社の一つです。ではなぜ今になってアメリカ本土から離れた地点間にフライトを開設したのでしょうか。
以遠権フライトとは
まず初めに、前提知識として、「以遠権フライト」という言葉があります。以遠権フライトというのは、ある国の航空会社がその国を出発し、別の諸外国へ到着したあと、またその国から自国ではない別の国に経由地(正確には経由地ではない)からの乗客も含めて運行する権利を持ったフライトのことです。今回開設された路線もこれにあたります。しかし今までは、それぞれの国々で航空業界また航空会社の権益を保護するために以遠権には規制がありました。しかし、時代の流れに伴ってグローバル化が進み、こういった以遠権についても見直されてきました。その流れに乗ったのが今回のユナイテッド航空の開設の決断であるといえます。
なぜ成田なのか
さあ、いよいよ本題に入りますが、なぜユナイテッド航空は世界に数え切れないほどある空港の中から成田空港をハブとして活用することを決めたのでしょうか。
そもそもハブ空港というのは、一般的には国際線を持ち、さまざまな航空会社が乗り入れ、その航空会社同士、アライアンス同士で乗り継ぎをするのに適した空港のことを言います(例外として大阪国際空港など、国際線が乗り入れていない空港もある)。
そういったハブ空港として、成田空港が適している理由がいくつかあります。
①地図上での位置
成田空港は、位置がとても適しているといえます。これは成田に限った話ではないですが、日本は、東南アジアと、北米大陸との距離がほぼ同じであり、航空機の乗り継ぎで、この「ほぼ同じ」というのは結構重要になってきます。
例えば、北米大陸から日本に到着して、そこから東南アジアを目指した方が、直行便よりも気持ち的に楽じゃないですか?特にエコノミー症候群などの懸念もあり、乗り継ぎはそういった面が利点であるといえます。ですので、多くの北米の航空会社は、日本の航空会社とコードシェアなどを活用しながら乗り継ぎ需要を確保しようとしてきました。昔北米の航空会社が日本の航空会社のアライアンス加盟とその誘致に必死だった理由もわかりますね。やはり、どの国の航空会社も日本の空港に乗り入れることには積極的なのです。
②発着枠の余裕
空港には、発着枠というものが存在します。空港は施設などに限られていますので、使用できるフライト数には制限があります。例えば北米スロットのように大陸などの比較的広い範囲で何便などと決まっている場合が多く、成田空港は、どのスロットも比較的余裕があります。なぜなら、今世界の航空会社の多くが東京路線を成田空港から羽田空港に移管する動きが出ているからです。
2010年、羽田空港第3ターミナルおよびD滑走路の供用が開始し、羽田空港の発着枠が年間約40万回、1.4倍へと拡張されました。これにより、日本発着国際線を運行する航空会社は、都心から近い羽田空港へ移管する方がメリットが大きい、ということから、羽田空港への移管が進められており、また国土交通省もそれを推進しています。ですので成田空港は、比較的発着枠には余裕があると言えばあります。
③航空会社や運行国の充実
成田空港は、羽田空港に比べて国内線が圧倒的に少なく、主に国際空港としての役割を果たしています。ですので、運行国数は成田空港の方が圧倒的に多いです。なので、乗り継ぎ需要を確保しやすいのは成田空港であると言えます。しかしその分便数は少ないです。また、成田空港は外資系航空会社が多く就航していることから、多種多様な航空会社から便を選ぶことができるという利点もあります。ちなみにちょうど書いているまさに今日(9/28)、イベリア航空が成田便を再開したように、航空会社は多彩であり、アライアンスに加盟している航空会社も多くあります。
以上のようなことから、成田空港は乗り継ぎ、ハブとして適していると言えるでしょう。
ユナイテッド航空の思惑
話をユナイテッド航空に戻しまして、じゃあなぜユナイテッド航空は、今回のように、以遠権を活用して路線を開設したのでしょうか。
①ユナイテッド航空の機材は直行できない
ユナイテッド航空の機材は、国際線用だと、777-200、777-300ER、787-10などが挙げられますが、これらの機材では、アメリカの東海岸から東南アジアまでは直行できません。燃料が持たないからです。しかし、成田なら全然いけます。
②そんなでかい機材だと採算が取れない
今回ユナイテッド航空が開設したセブですが、フィリピンの都市です。しかし首都ではなく、いわゆる第2都市です。ここまで777などの300〜400人級の飛行機を入れても採算は取れません。日本ですらこんな路線はありません。だから、成田からある程度小さい737-800、100〜200人級の飛行機を利用して運行したいのです。他にも、成田-コロール線、成田-ウランバートル線なども開設する予定です。これらは全て大型機では直行が厳しい空港(滑走路長、標高から)なので、成田を使いたいという考えなのです。
まとめ
成田空港は
北米とアジアの需要を両方取れる立地
発着枠の余裕があるから路線を作りやすい
運行国や航空会社の充実により乗り継ぎ需要を確保しやすい
ことから、成田空港はユナイテッド航空のハブ空港になろうとしている!!
最後に
いかがでしたでしょうか。成田が再ハブ化する理由について詳しく知ってもらえたら幸いです。他にも面白い記事、誰でも航空に興味を持てるような記事を書いていこうと思いますのでフォロー等よろしくお願いいたします。