短歌の連作の作り方まとめ(構造編)
①2テーマ+しりとり型
長編向け(20首以上)
王道
2つのテーマ(表テーマ+裏テーマ)を決めて中心に回しながら、前後の歌を微妙にリンクさせながら展開していくという作り方です。
【表テーマ】は時間に沿って変化があるもの。可能なら人的なもの。
例:旅、仕事、恋、別れ、挫折、変化、歴史など
別に実生活を書く必要はなく、自分で物語を作ってもよいと思います。
【裏テーマ】は抽象的なもの。
例:季節、土地、花、星など。
裏テーマがあるメリットは、連作に道筋を付けることで個性や言いたいことをはっきりさせることができる点です。
また、表テーマが描くメインストーリーの中に意外な変化をもたらしたり、小休止をいれたり、サブストーリー展開させたりするときに、前後をゆるやかにつなぐ橋渡しの役割も担ってくれます。
【しりとり】は、前の歌と同じテーマや素材が入っている歌が後に来るように、歌をつないでいくイメージです。
実際の手順
【表テーマ】と【裏テーマ】を設定して、それを意識しつつ1首だけで成立する歌をいくつか作る(全体の2/3の分量)。
とりあえず時系列とストーリーに矛盾がないように歌を並べる。
【しりとり】を意識して、それぞれの間をしりとり用の歌で埋めていく(全体の1/3の分量)。
②手記型
中~長編向け(15首~)
①がまとまりや起伏を持った「ストーリー」だとすると、こちらはエッセイ・随想風の作り方です。
連作を貫くテーマを設定するのではなく、一連の出来事を、その流れのままに素描していくイメージです。
つねに時間が等質に流れてゆき、視点もそれほど揺らぐことはありません。
いかにバランスよく日常感を出すか、いかに飾り気のない視点の独特さを保てるかがカギになると思います。
③主題のバリエーション型
短編向け(~10首)
濃い主題をひとつ決めて、それをいろんな切り口から見せる方法です。
主題の広さは、舞台の特定の演目、スポーツの特定の競技、美術館や水族館といった特定のスポットなど、具体的かつ限定的に設定します。
10首くらいの分量であれば、1つの主題に集中した方が印象に残りやすいでしょう。
いかに自分の歌の性質と合ったテーマに巡り会えるかが勝負。
④ランダム型
短編向け(~15首)
テーマは決めず、単体で自立できる歌だけを作って並べます。
シンプルな作り方に見えますが、読者の印象に残りやすいテーマや主題、空気感といった装置自ら手放すことになるので、成立させるのは難しいです。
それぞれの歌が接続することなくよい距離感を保つ、というのも難しいことです。
例としては村木道彦「緋色の椅子」10首が該当するかと思います。
⑤アイデア突破型
中編(20首前後)向け
やや奇策。実験作として作るのであれば面白いでしょう。
「縛り」を自分で作ってそのアイデア、型の面白さで勝負する方法です。
橘曙覧の「たのしみは~」縛り、子規の「足たゝば~ましを」縛り、茂吉の「~ところ」地獄絵図縛りなどの例があります。
うまくいくと非常に面白いですし、作っている最中も楽しいですが、ネタ切れ感を出さずに最後まで突っ切るのが難しいです。
狙いすぎると格好悪さが全面に出るので怖い。「このアイデア面白いやろ!」という気配を徹底的に封じる必要があります。
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