
「BPaaS」って何?今どきの「業務プロセスの外注」を、もっと手軽にする仕組み
突然ですが、「BPaaS(ビーパース)」という言葉、聞いたことありますか?
おそらく「初めて耳にした」という方が多いと思います。最近までは私もそうでした。
「SaaS」「クラウド」「BPO」……。ビジネス周りにはカタカナ略語があふれていますが、この「BPaaS」こそ、ひょっとするとこれから中堅企業やスタートアップの“裏方仕事”を大きく変える存在になり得るかも?と個人的に思っています。
この記事では、そんなまだ知名度の低い「BPaaS」を、なるべくわかりやすく説明してみたいと思います。
「業務の外注」や「業務プロセス改善」に興味がある方、これから起業する人、あるいは今の仕事環境をアップデートしたい中小企業のご担当者さんは、ぜひ読んでみてください。
そもそも「BPaaS」って何?
BPaaS = Business Process as a Service
つまり、「ビジネスプロセスをサービスとして利用する」という考え方です。
「え、それってBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)とどう違うの?」と思われるかもしれません。
BPO:顧客企業ごとにオーダーメイドで業務を外注するイメージ。導入時には打ち合わせやシステム構築、カスタム対応など、結構な準備やお金、時間がかかることも多い。
BPaaS:あらかじめ型化・標準化されている業務プロセスが用意されていて、「ポチッと申し込めばすぐ使える」感覚。まるでWebサービス(SaaS)のように、業務アウトソースがパッケージになっている状態。
要するに「業務そのものをクラウド上で必要な分だけ買える」ようなイメージです。
背景にあるのは「柔軟な働き方」と「固定費削減」のニーズ
中堅~中小企業、あるいはスリムな組織で悩ましいのが、「バックオフィス業務」や「ルーティンワーク」にリソースを割かれる問題。たとえば請求書処理、経理サポート、メールやチャットでの顧客対応、各種事務手続き……こうした「なくてはならないけれど、付加価値を直接生まない」業務に手が取られていませんか?
これらを社内スタッフで回そうとすると、
人材確保・教育コスト
季節的な繁忙期と閑散期のバランス不良
社員が急に辞めたときのリスク
などの課題に悩まされますよね。
そんなとき、「BPaaSを導入すると、必要な業務を必要なときだけ外部化できる」という柔軟さが価値を発揮します。
しかも、すでにテンプレート化されたプロセスがあるから、新たなシステム導入や、ややこしいカスタマイズなしでスタート可能。「SaaSを使うような感覚で業務プロセスを借りる」イメージですね。
例えるなら「家電レンタル+家事代行サービス」が合体した感じ?
ちょっと身近な例で考えてみます。
日常の家事を助けてくれる「家電レンタル」は便利ですが、最初に取扱説明書を読み込んで機能を理解し、高性能・多機能の家電をどのように使うのがベストか自分で試行錯誤しながらカスタマイズしないといけないため、慣れるまで手間がかかります。(SaaS的なアプローチ)
日常で家事を外注する「家事代行サービス」は便利ですが、あなたの家の家事ルールや道具を覚えてもらうために、最初の打ち合わせやカスタム対応が必要です。(BPO的なアプローチ)
でも、BPaaS的なアプローチなら、そういった個別対応はほぼ不要。必要な業務プロセスが最初から標準パッケージ化されていて、最新家電を使いこなせるスタッフが、効率化されたプロセスで家事を遂行します。
家電レンタルで必要なツールが既に揃っている状態と、家事代行の「お任せ」感覚が一体となったようなサービスイメージ。
それが、BPaaS的なアプローチの特徴といえます。
じゃあどんな業務で活かせるの?
現時点で注目されているのは、
請求書処理や経理サポート:
定型的な処理が多く、標準化しやすい。メール・チャット対応などの顧客サポート:
FAQ対応や定型問い合わせがあらかじめ決まっていれば、外部オペレーターがマニュアル通りにスムーズ対応。簡易的な営業事務サポート:
見積書作成補助、顧客フォロー連絡など、一定のテンプレがある業務。
これらはどの業界にも共通する課題が多いので、幅広い企業で使えそうです。
さらに、慣れてきたら「採用サポート」や「契約書レビュー補助」など、もう少し専門的な領域へ拡張できるかもしれません。
「固定費→変動費」へのシフトで経営がラクに
月々社員をフルタイムで雇わなくても、業務量に合わせて増減できる点は大きなメリット。
たとえば年商15億円規模の企業が、バックオフィス担当を1~2名雇うとなれば、年間の人件費や社会保険、教育コスト、離職リスクなどが発生します。BPaaSなら、それを「月々固定のサブスク費用+利用量に応じた変動」といった、より柔軟なコスト構造に変えられる。
結果、
業務繁閑に合わせてコストを調整
社内で育成・管理する手間が不要
外部リソース活用で品質を一定に保ちやすい
といったメリットが生まれ、経営者や管理部門の負担が軽くなる可能性があります。
導入時のハードルは?どう始めればいい?
とはいえ、「知らない仕組みをいきなり導入するのは不安」と思う人も多いでしょう。
そんな場合は、以下のようなステップを考えてみてください。
まずは課題洗い出し
「毎月の請求書処理、実はすごく大変…」
「顧客対応が増えてコア業務に集中できない…」
そうした悩みをリストアップ。
テスト導入(MVP)
一部の業務だけ、短期間で試してみる。
たとえば「請求処理1ヶ月限定でお試し利用」のように、スモールスタートで相性を確認。
KPI計測
時間削減率、コスト削減率、エラー率改善など、定量的な指標を最初に設定。
トライアル終了後、どれだけメリットがあったかを可視化。
フィードバックと拡大
効果が感じられたら、次の業務領域へ拡張。
徐々に自動化ツール(RPA、AI)を導入し、より効率的なプロセスへ進化。
これから期待できる未来
BPaaSはまだ発展途上の領域ですが、
テクノロジーの進化(AI、RPA)
働き方改革やリモート体制の普及
スモール組織やスタートアップの増加
といった社会的背景が、「外部から手軽に業務を買う」モデルを後押ししています。
将来的には、皆さんがネットでSaaSを導入する感覚で、バックオフィスやカスタマーサポート、契約管理などの“業務プロセス”そのものを即時利用することが当たり前になるかもしれません。
おわりに
「BPaaS」という言葉はまだ一般的ではないかもしれませんが、その考え方は私たちの働き方を少しずつ変えていく可能性があります。
もしあなたの会社が「もっとバックオフィスやルーチンワークを軽くしたい」「固定費を減らしつつ品質を保ちたい」と考えているなら、一度この新しい発想に目を向けてみてはいかがでしょうか。
カスタマイズ要らず、業務がすでに“サービス化”された世界。BPaaSは、そんな未来への入り口となり得る存在かもしれません。