アガベを育てる話
さかのぼること約7年、2016年7月僕はメキシコにいた。当時大学生だった僕はある旅行雑誌の影響で漠然と中南米という場所に憧れを抱いていた。日本から最も遠く、未知の文化への憧憬に駆られ、大学ではスペイン語の講座を取ることとした。当時の僕は部活だけに力を注ぎ、講義は睡眠時間と考えるほど怠惰な学生だったためスペイン語の単位は取り切れなった(お父さんお母さんごめんなさい)が、地球の真裏にある地域ではどのような暮らしが営まれているのか自分の目で確かめたい、という気持ちは消えなかった。
大学時代は地域研究を先行しており、対象はフィリピンだったことからフィリピンの大学に留学することは既定路線であった。それに加え、どうしても中南米を訪れたくてカレンダーとにらめっこし、なんとか日本の大学とフィリピンの大学の学期のギャップに部活の都合を付け加えて3か月ほど空白の時間を作ることができた。そして遂にメキシコ、アルゼンチンを目的地として定め、フライトチケットを買った。僕の中南米訪問計画はこうだ。まずはメキシコで約1か月間ホームステイしながら語学学校に通い、なんとか生活には困らない程度のスペイン語を身に着け、その後アルゼンチンを起点として周辺国を周遊する。そうして2016年7月、メキシコはオアハカに降り立った。
オアハカでの生活はとても刺激的だった。ホームステイは初めてだったが、ホストファミリーも多少は英語を理解するだろう、と勝手に想像していたのだが、初対面からスペイン語のマシンガントーク。全く理解できず面食らった。初日にホストマザーが部屋を案内してくれたのだが、ほとんど理解できず、シャワーからお湯が出ることを知ったのはホームステイを始めてから3日経った頃だった。そんなこんなでオアハカを楽しんでいたのだが、語学学校の授業でオアハカという地はお酒で有名なのだそうだ。メキシコといえばテキーラを思い浮かべる人が多いと思うが、オアハカではテキーラの兄弟ともいえるメスカルという蒸留酒が特産で、至る所で様々なメスカルが売られている。なかにはサソリが入ったもの、イモムシが入ったものなどもあった。ちなみに僕が話を聞いた現地の方曰く、サソリやイモムシを入れるのはその方が美味しいからだそうだ。
語学学校のプログラムの中でメスカルの蒸留所を訪れる機会があった。現地の方が連れて行ってくれるとのことで、事前に指定された合流場所に向かうとその方は待ち合わせ時間から30分ほど遅れてやってきて、これからタクシーに乗ろう、と言い出す。10分ほど歩きタクシー乗り場についたものの、なかなかタクシーが捕まらない。やっとの思いでタクシーを捕まえ、僕は助手席に乗り込んだ。同行者が運転手に目的地を伝え、走り出したのだが、途中で何度か停車し、そのたびに便乗者が増えていく。後ろの席にひとり、ふたり、、、さすがに助手席には座れないだろうと思っていたところ、なんとふくよかな中年女性が乗り込んでくるではないか。その後タクシーに乗っていたのは10分もなかったと思うが、サイドブレーキが片尻に食い込みながら耐える10分は拷問さながらだった。見渡す限りのアガベ畑に気が付いたのはタクシーを降りてからで、それはなんと刺激的だったことか。
…最近は塊根植物、多肉植物にハマる人が増えており、アガベもそのひとつとして育てる人が増えている。植物系YouTuberも増えており、僕自身コンテンツとして楽しんでいる。そのような動画を見て、メキシコの刺激を思い出し、僕もアガベを育てることにした。近くの植物屋さんでアガベの子株を購入したので大事に育てていきたいと思う。気ままにこのNoteで成長記録をつけてみよう。いつまで続くかわからないが。