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EV投資の次なるトレンドは 第二回

皆さん、こんにちは!
アメリカ株式義塾です。

EV特集です。前回は電気自動車の歴史を紐解きました。リチウム電池がバッテリーに使えるようになり発展したのが電気自動車でしたね。

ところが、電気自動車が驚異的な成長を遂げる中、問題も出てきました。今回はその問題とそれを踏まえた新しいトレンドをご紹介します。


電気自動車市場が成熟するなかで現れた問題点

高価である、走行距離が短い、火災が発生しやすい…これらは皆さんもよくご存じの問題点ですね。

しかし、すべての技術が初めから完璧であることはありえません。電気自動車業界も、振り返ってみれば200年近い歴史を誇る内燃機関と比べるとまだまだひよこレベルで、生まれて6年しか経っていない業界です。そこで、多くの問題が発生しました。いくつかの問題をスッキリと整理すると次のようになります。

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まず第一は、価格が高いことです。なぜEVが高価になってしまうかというと、リチウム電池が高価だからです…。

これまでアメリカ、ヨーロッパ、韓国、中国など各国政府が補助金を惜しみなく投入し、どうにか内燃機関車よりも少し高い程度で購入できるようにしてきましたが、補助金を永遠に提供するわけにはいきません。中国ではすでに電気自動車に対する補助金が廃止されており、他の国でも徐々に廃止の方向に向かっています。

第二は、一度の充電で走れる走行距離が短いことです。鉛蓄電池に比べれば、はるかに伸びましたが、ガソリンやディーゼル車は一度給油すれば1,000kmは軽く走れるのに対して、電気自動車はまだ最高でも500km程度です。それも冬になると夏の70~80%程度までさらに減少します。広い国土を持つアメリカやヨーロッパでは、これは実際のところ、かなり大きな欠点です。

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第三は、火災が起きやすい点です。リチウムは反応性が高い元素で、何か誤って物質が接触すると、急激に反応して爆発したり燃えたりします。リチウム電池の構造的な限界によるもので、鉛蓄電池の時代にはあまり関係のなかった問題ですが、リチウム電池がより大きくなり、より高密度で集積され、より商用化が進んだ現在、これは本当に大きな問題になっています。ここで、電気自動車が非難されるべきと言いたいわけではなく、これは電気自動車がリチウム電池を主なエネルギー源とすることで、どうしても発生してしまう問題にすぎません。


これで完璧、電気自動車の変遷

さてここで、前回からここまでで購読者の皆さんにお伝えしてきた、1880年代から2020年代までの電気自動車の歴史と流れ、そしてその変遷の理由、結果をわかりやすくまとめてみましょう。ここまでざっと読み飛ばしてきたとしても、この部分はぜひじっくり読んでください!

(1) 1880年代以前:内燃機関自動車の誕生期
 ・業界の悩み:エンジンを削る金属加工技術が発展途上でエンジンを作るのが難しい 
・解決策:電気モーターと鉛蓄電池を使った方が作りやすいんじゃない?
 ・第1の結果:鉛蓄電池で動く初期型電気自動車の誕生
 ・第2の結果:当時の鉛蓄電池技術では重量が大きく効率も悪く、走行距離も短すぎたため消滅

(2) 1940年代:最初のハイブリッド自動車...ではなく戦車
 ・業界の悩み:自動車エンジンはうまく削れるようになったが、はるかに重い戦車のエンジンと変速機はまだ難しい
 ・解決策:小さな自動車エンジンを入れてこれで発電機を回し、発電機がモーターを回せばいいんじゃない? 
・第1の結果:小型エンジンが発電機を回し、発電機が電動モーターを回す最初のハイブリッド戦車の誕生 
・第2の結果:中間にバッテリーがなく、エンジン → 発電機 → 電動モーターが全てが一度に連動して駆動するシステムはさまざまな問題を抱えていたため、結局消滅

(3) 2000年代初頭:HEV 
・業界の悩み:厳しい排出ガス規制が課され、少しでも炭素排出量を減らせる方法はないか模索
 ・解決策:(1)も(2)も失敗したから…エンジンとモーターをそれぞれ別にして、低速はモーター、高速はエンジンに任せれば炭素排出量が少なくなるんじゃない?バッテリーの充電方式は(2)を踏襲しよう
 ・第1の結果:HEVの誕生 
・第2の結果:バッテリーのサイズを大きくすれば、低速でモーターを長く動かせるのでは?という悩み、課題が残る

(4) 2000年代後半:PHEV 
・業界の悩み:バッテリーのサイズを大きくすれば、低速でモーターを長く動かせるのでは? 
・解決策:バッテリーのサイズを大きくするなら、バッテリーを外部から別途充電できるようにしてみては?
・第1の結果:PHEVの誕生 
・第2の結果:ガソリンと電気を別々に入れなければならない手間についての悩み

(5) 2010年代後半:電気自動車
 ・業界の悩み:リチウムバッテリーというものが出てきたけど、もしかしてこれで100%電気だけで走る車が作れるんじゃない?
 ・解決策:電気だけで走る電気自動車を作ろう!!!
 ・第1の結果:電気自動車の誕生 
・第2の結果:高価、走行距離が短い、火がつきやすい

電気自動車が私たちの身近なものになって6年、皆さんもご存知の通り、電気自動車の需要は2023年末から減速の兆しを見せていました。その理由は、(5)で述べた「高価」、「走行距離が短い」、「火がつきやすい」という2次的な結果も一定の要因を占めているでしょうし、これまでに、電気自動車が市場に大量に出回ったことも原因の一つです。 このすべては「電気自動車キャズム(Chasm)理論」として要約できます。これは電気自動車産業だけでなく、他のほとんどの成長産業にもよく見られる傾向で、初期のニッチ市場から、より広い、誰もが使う大衆市場へ移行する過程でさまざまな共通の問題が現れ、それが成長の停滞を引き起こすことを指します。 過去200年間、(1)から(5)まで、より正確には最も最近の電気自動車の成長鈍化まで、順を追ってすべて経験してきた自動車業界ですが、それでも電気を諦めるわけにはいきません。電気自動車が炭素排出を削減するには最も効果的で、他に解決策がないことは明らかだからです。彼らは考えに考えを重ねます。そして、ある奇妙な解決策を生み出します。


行き詰まった業界の希望の光

その解決策とは、レンジエクステンダーEV(EREV、Extended Range Electric Vehicle、長距離電気自動車)です。電気自動車への転換に全社的な運命をかけたものの、わずか数年で「電気自動車キャズム」という涙を誘う状況に直面した現代自動車グループは、グローバル市場でこの困難な時期を何とか乗り切るために、最高の頭脳を集めてEREVという解決策を生み出しました。 このEREVという解決策が生まれたときの思考の流れを追ってみましょう。

現代自動車グループ:電気自動車こそが未来だ。炭素排出削減の唯一の手段でもある。しかし、高価だし、走行距離が短いし、火がつきやすい。じゃあどうすればいいのだろうか? 今回うちじゃなくて、ベンツで事故が起きたからよかったものの、私たちのIONIQ(アイオニック)6があんな事故を起こしていたらと思うとぞっとする…。 

天の声:バッテリーのサイズを縮小しないと。バッテリーが原因で高くなるし、火がつきやすくなるんだから。 

現代自動車グループ:でも、バッテリーを減らすと、ただでさえ短い走行距離がさらに短くなるんじゃない? 

天の声:あ、それならちょっと待って。この写真を見て!


天の声:こうやってエンジンでバッテリーを充電できる電気自動車を作ればいいんだよ。
 
現代自動車グループ:…。これって私たちがハイブリッドと呼んでいるものじゃないの?

 天の声:いやいや、焦らず最後まで聞いて。HEVやPHEV、いわゆるハイブリッドはエンジンがメインでバッテリーがサブだよ。エンジンのほうがずっと大きくてバッテリーは小さいでしょ。でもこれはエンジンがサブでバッテリーがメインなんだ。 

そうです。これ、どこかで見たことのあるメカニズムでしょう?上記の(2)で出てきた方法です。でも、(2)がどうして消えたって言いましたっけ?バッテリーなしで、エンジン→発電機→電気モーターでシステムが直結されていたので、ティーガー戦車が動くたびにエンジンが動いたり止まったりして、エンジンが簡単に故障したと言いましたね。 

では、どうしてバッテリーを間に入れられなかったのでしょうか。

当時の低性能な鉛蓄電池技術では、戦車のような重いものを動かせるほど大量の電気を蓄えられなかったからだと言いましたね。

しかし今はリチウム電池があります
1940年代に開発されたこのシステムを「エンジン→発電機→バッテリー→電気モーター」に変えれば、多くの問題が一気に解決します。どう解決するのか簡単に説明します。 

まず第一に、エンジンの負荷(ロード)が減ります。バッテリーという、一種の貯水池の存在が追加されたので、エンジンは常に一定の回転数と一定の燃費で発電機を回すだけで済みます。発電機はバッテリーに電気を貯めるだけで済みます。バッテリーは電気モーターに必要に応じて電気を供給するだけで済みます。 内燃機関の燃費が悪い理由は、走行環境によってエンジンがすぐに反応しなければならないからです。しかしEREVは、内燃機関車がクルーズコントロールを使うかのようにエンジンを同じ速度で回すため、信頼性も高まり、燃費も良くなります。


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第二に、構造がシンプルになります。燃費を良くしようとすると、内燃機関車のトランスミッションが先ほど見たようにあんなに複雑になるのですが、ここではエンジンが直接車を動かすのではなく発電機だけを回せばいいので、エンジンが大きくなる必要も、複雑になる必要もありません。 

第三に、バッテリーをもっと小さくできます。リチウムバッテリーが現在のように大きくなった理由は、充電を頻繁に行うのが難しいからですが、エンジンが常に充電してくれるのであれば、大きくする必要はないでしょう。バッテリーが小さくなれば価格も安くなり、火災が発生する確率も減るでしょう。少なくともHEVやPHEVで火災が発生したという話はあまり聞いたことがありません。リチウムバッテリーが少し小さくなっても、鉛蓄電池に比べてはるかにエネルギーの蓄積量が大きいため、エンジンが常に電気を充電してくれれば車を動かすのには全く問題ないでしょう。 

この方法によってEREVは確かに電気自動車ですが、航続距離が1,000km以上に達する内燃機関車と似たパフォーマンスを持ちながら、より小さなエンジンで環境汚染も減らすことができる奇跡のメカニズムとなりました。 

現代自動車グループ:でも... EREVってなんか馴染みがある感じがする。確か10年前ぐらいに見たような気がするけど... 

そうです。実はEREVは新しい概念ではありません。2010年に発売されたシボレー・ボルト(Volt)、2013年に発売されたBMW i3がまさにEREVです。しかし、車好きの方々はご存知のように、彼らは目立った成果を上げることなく市場でひっそりと消えていきました。 その理由は簡単で、当時のシボレー・ボルトとBMW i3は、消費者にとって単に電気自動車と内燃機関車の間に位置する曖昧な車両として認識されていたからです。要するに、電気自動車の波が押し寄せる中で一時的に持ちこたえたが、結局は飲み込まれてしまった不運な車種というわけです。 しかし今や、電気自動車が成長期を過ぎて成熟期に入り、状況は180度変わりました。 

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