見出し画像

3倍レバレッジの罠:TQQQ投資に潜むリスクとは③

TQQQは1倍レバレッジの3倍得をするわけではない?
高リターンの夢と隠されたリスク。TQQQを巡る投資家の必読ガイド

※本記事は連載となります。前回はこちら※
連続性のある記事ですので、第1回から読んでいただくことを強くお勧めします。

第1回

第2回


前編では、TQQQの組入銘柄・リバランシングについて学びました。

今回は少し踏み込んだ内容で、TQQQという信託が安定的に運用されるために必要不可欠な存在である「流動性プロバイダー」と乖離率について解説していきます。ちょっと難しい内容ですが、今回も同様に私たちアメリカ株式義塾ができるだけわかりやすく解説しますのでご安心ください!

早速一緒にポイントを見ていきましょう!


本日のポイント

  • ②「LPと乖離率の秘密」

  • ③「運用手数料の穴」: TQQQって長期投資に不向き?


TQQQシリーズ3篇、大変おまたせしました!

3편 시작


Expense Ratio:運用手数料

運用手数料

今回紹介する落とし穴の1つ目は、手数料!
運用手数料です。他の上場投資信託と同様、TQQQには運用会社であるProSharesに支払わなければならない運用手数料があります。Expense Ratioと呼ばれるもので、約1%程度です。 運用手数料は口座から引き落とされるわけではなく、自動的に株価に反映されます。

手数料が自動で株価に反映されるとは?

運用手数料が1%である場合、TQQQが何の価格変動もなく100ドルで1年間停滞していたとしても、1年後には運用手数料が反映されて勝手に99ドルになっているということです。

つまり、理論的には長く持っているほど損をするシステムになっています。

TQQQの激しいボラティリティに比べれば1%の程度の運用手数料は相対的に低く感じられるため、短期投資を狙う方々は別に注意を払うほどのものではないと考えても良いほどではあるものの、
もしTQQQを数年かけて長期投資する考えを持っているなら、毎年取られる1%の運用手数料も決して小さい金額ではないので、抑えておくとべきです。

要チェック!


TQQQ理想のリターン

TQQQの唯一の勝ち目

逆に、ナスダック100指数が横ばいすらせず右肩上がりをし続ける場合、TQQQはナスダック100の3倍よりも「もっと」早く上昇します。このノートで一番最初に紹介したグラフで、2021年1月を基準に1年間の上昇率を見ると、ナスダック100は32.9%上昇、TQQQは110%上昇という結果が出たのも納得です。

つまり、2020年初頭に、新型コロナウイルスの影響が危惧され、ナスダック100が暴落した時にTQQQを大量買いした人は大儲けしたということですね。残念ながら同じ状況はすぐには起こらないとは思いますが…

ナスダック100が量的緩和に支えられて右肩上がりに異常な上昇を見せた時にTQQQで甘い汁を吸った人たちは確かにいます。

ですが私の考えでは、これからも右肩上がりするという確証はないですし、特にダウ・ジョーンズとS&P 500が高値を更新した直近の市場の雰囲気の中では、なおさらコロナの時のような右肩上がりを期待することは難しいと思われます。

現在の米国株式市場の状況と市場の雰囲気自体、当時と180度違っている状況でTQQQを買い、保持し続ければいつかは報われるだろうと言う思い込みは非常に危険です。

TQQQ投資で利益を出せるのは基本的に市場が右肩上がりであることが前提となるのですが、近況を見てみると、ロシア-ウクライナ戦争や原油価格、スタグフレーション(景気後退+高インフレ)、米国大統領選挙の結果により予想されるグローバルサプライチェーンの大幅再編、高金利、アメリカの量的緊縮(QT)など、懸念すべき悪材料が多すぎる状況で市場の右肩上がりを期待できるのか...についてはどうしても懐疑的にならざるをえません… 

さらに、このナスダック100指数が右肩上がりの時にも、TQQQの収益率には非常に大きな落とし穴がありますが、これは最後の解説に取っておきたいと思います。

ん、市場が右肩上がりにならないと考えられるなら、今すぐナスダック100の3倍の逆の値動きをするSQQQ(ProShares UltraPro Short QQQ)を買えばいいんじゃない?

SQQQも答えにならず

では、SQQQを買えばいいのでしょうか。
そういうわけでもないのです。

 横ばいの値動きをするといつの間にか利益が溶け消え、損失を出してしまうのは全ての3倍レバレッジのさだめです。

横ばいの値動きは、いつも同じように見える雪の山が少しづつ溶けだしていていつの日にか雪が消えている雪解けのようなものなのです。

構造自体がそうなっているので、ナスダック100が横ばいになっている状況でSQQQを持ち続けていたら、その間ずっとその価値は割られていたはずです。 「ナスダック100はもう右肩上がりが難しい」という言葉は、「ナスダックがこれからずっと下がる」という言葉と同義ではないことに注意しましょう。


乖離率とNAV

TQQQのような3倍レバレッジ上場投資信託を取引する際に知っておいてほしい言葉をあと2つお伝えします。

  • 純資産価値(NAV, Net Asset Value)

  • 乖離率(Disparity Ratio) です。

NAV(ナブ)、純資産価値は、上場投資信託に投資する際に知っておきたい重要な概念です。NAVは各証券会社の株アプリでも確認できますが、パソコンで過去のNAV推移を簡単に確認したい場合は、これが便利です。


純資産価値(NAV)

乖離率と純資産価値について説明する前に、今日のノートの最初から振り返ってみましょう。

TQQQはナスダック100指数の3倍に連動する投信でしたね。
TQQQの運用会社であるProSharesは、「スワップ」などのデリバティブを各投資会社と契約し、運用手数料の一部を利息として支払い、その代わりに指数が上がれば一定の収益を受け取るのですが、この収益と現物、先物の適度な比率を合わせると、ナスダック100指数の動きの3倍を追うことになります。

そうなると当然、TQQQというベア型レバレッジファンドが保有している資産は、ナスダック100指数の動きによってその価値が決まるわけです。
理想的な場合には、その日のナスダック100指数が5%上昇した場合、TQQQの総資産価値も15%上昇しているはずです。
さらに、先ほどの運用手数料を1日単位で計算して、毎日株価をごくわずかですが少しずつ削って反映していきます。

そうすると、この価格がTQQQの「本質的な価値」、つまり純資産価値(NAV)になります。

乖離率

さて、TQQQは上場している投資信託なので、上場企業の株式と同じように買い手と売り手の両方が呼び値を行って自由に取引することができます。ここで発生する問題が乖離率です。

どういうことかというと、
ナスダック100指数を見たある時点で、TQQQを構成する原資産を通じて計算したTQQQ 1株の価値が100ドルなのに、
市場で100ドルでTQQQを買いたい人が多すぎると、より高い102ドル、103ドルでもTQQQを買おうとする人が出てくる可能性があるということです。

逆に、ある時点でTQQQを売ろうとする人が多すぎると、
98ドル、99ドルでもTQQQの取引が行われる可能性があります。
この時に生じる1ドルや2ドルのギャップを乖離率というのです。1ドルの乖離があれば、乖離率は1%といった具合です。


流動性プロバイダー(LP)

この需給の差によって起こる問題の解決方法
この乖離率を放っておくと、TQQQの価格は、実際のNAVとは全く関係なく、市場のTQQQの需要と供給によってのみ決定されることになり、ナスダック100指数の値動きの3倍を目指すという当初の目標から大きく逸脱してしまいます。

そこで、この問題に介入するお兄さんたちが流動性プロバイダー(LP, Liquidity Provider)です。

お馴染みの野村證券も!

LPは通常、とてもたくさんのお金でオーダーブックを「無数に作って」くれます。

無数に?どういうことなのでしょうか。

LPがいない上場投資信託のオーダーブックを想像してみましょう。今この時点で、TQQQが、連動しているナスダック100指数から見て、現在の純資産価値が100ドルだとします。

買い手と売り手の主張はこのようになっています。

  • 買い手: 95ドルかそれ以下であれば買うよ。

  • 売り手:いや、105ドルじゃないと売らないよ。


こうした対立が起こった時、どちらか先に折れた方が5%の乖離率を背負って105ドルでTQQQ1株を買うか、95ドルでTQQQ1株を売ることになります。
これは運用会社であるProSharesにとっては都合が悪い状況です。
ナスダック100指数の3倍に連動させなければならないので、今は100ドルで売買されなければならないのに、
ある人は105ドルで買って、またある人は95ドルで売って、もう呼び値がめちゃくちゃですから。

そこでこの人たちが登場します!

LP:俺様登場。配備完了、これよりオーダーブック介入を開始する。

この時、運用会社と契約しているLPが出動してくれます。ほぼ無限のお金を持ってオーダーブックに、ぎっしりとオーダーを出し、

誰でもNAVである100ドルに近い価格でTQQQを買ったり売ったりできるようにするのです。

99.5ドル、100ドル、100.5ドル...。
に買い注文、売り注文をたくさんかけておいて、注文が成立する分だけ勝手に市場参加者の注文を売買してくれます。

しかしながら、LPがこのように介入しても、すべての瞬間に介入することはできないので、ある程度の乖離率は発生してしまいます。

0.00%付近で上下繰り返している乖離率

このグラフはTQQQのNAVに対する割引率を示したものです。

これを見てみると、このグラフの時点ではTQQQが実際に取引されている株価がNAVより若干(0.03%)割引されて取引されていることが分かります。
もしこれが逆になると、実際に取引される株価がNAVより高いというになります。

 最近のようにナスダック100が乱高下するときは、この乖離率も大きくなることが多く、
2021年冬にはなんと0.6%まで乖離率が上がったこともありました。

ほとんどの米国株式サイトではTQQQがNAVより割引される時、乖離率が-で表記されますが、ychartではdiscount to NAV(NAVに対する割引率)ということで+で表記されます。 この部分は注意してください。

したがって、大きな差はありませんが、この乖離率も参考にしてTQQQがNAVより少し割引されているときに買い、TQQQがNAVより少し高く取引されているときに売れば利益を最大化することができます。


いかがでしたか?

今回の記事では、流動性プロバイダーと乖離率について重点的に学んできました。 もうすぐ終了ですので、もう少し頑張りましょう!

今回のTQQQシリーズは全4回で、次回が最終回となります。
最後の記事は、おそらく最も重要な、アメリカ株式義塾でしかお伝えできない特別な内容ですので、お楽しみにお待ちください。

次回予告

最終回!TQQQに対するアメリカ株式義塾の見解

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?