米国株式投資で必須の武器!SEC開示分析講座④〜1から連結貸借対照表を読む〜
みなさん、こんにちは!
米国株式義塾です。「米国株式投資で必須の武器!SEC開示分析講座」第4回を始めましょう。
この「SEC開示分析講座」シリーズは、私達アメリカ株式義塾で取り扱うコンテンツの中で最も重要で、最も参考価値が高く、投資を行っていく中で「基礎体力」を向上してくれるものになります。多少難しい内容が続くと思いますが、ぜひ最後までお読みください。
前回は、SEC開示の中で最も重要な年次報告書である10-Kで何を見るべきかを学びました。 Item 1 and 2は企業の情報全般を含んでおり、Item 6とItem 8は企業の財務諸表を説明するパートです。今回の3編では、企業の財務諸表、その中でも一番最初に見なければならない連結貸借対照表(Consolidated Balance Sheets)を理解する方法について学びます。
前回(第3回)はこちらから
前回の大好評につき、今編も無料公開しますので、お見逃しなく!
英語の用語が非常に多く出てきますが、一つ一つ丁寧に説明しますので心配は不要です。
さあ今日も一緒にレベルアップしましょう!
白カブ部長: ただでさえ英語難しいのに、英語の開示を分析する方法なんてもっともっと大変なんじゃない…?
大丈夫!私たちが一つ一つ日本語のマニュアルを作ってご紹介します!心配なんて無用です!
上記のリンクは、2021年2月24日に掲載されたTELLの10-Kレポートです。これを例にして説明しましょう。リンクをクリックして隣に開きながら見てください。
目次から「Item 8. Financial Statements and Supplementary Data」を探してください。 Item 6. Selected Financial Dataは要約版なので、最初からItem 8を見た方がはるかに良いです。ちなみに、目次の右側に直接その場所に移動できるハイパーリンクがあるので、それをただクリックだけでOKです。
さて、ここで見なければならないのは、上の写真の連結財務諸表(Consolidated Financial Statements)の中でも赤い四角で囲った部分です。この四角内の5つの要素が連結財務諸表を構成しています。
その5つがこれらです。
- 連結貸借対照表(Consolidated Balance Sheets)
- 連結損益計算書(Consolidated Statements of Operations)
- 連結資本等変動計算書(Consolidated Statements of Stockholders’ Equity)
- 連結キャッシュフロー計算書(Consolidated Statements of Cash Flows)
- 連結財務諸表に関する注釈(Notes to Consolidated Financial Statements)
記載項目が分かったところで早速中身を見ていきます!
財務諸表を見る前に、必ず抑えるべき基本事項
すべての財務諸表に共通の事項です。
引き続き、TELLを題材に見ていきます。
これは連結貸借対照表です。
ここで一つ注意です!財務諸表を見るときは、Google翻訳を使用しないでください。
用語はアメリカ株式義塾がすべて教えます!
Google翻訳を使用すると間違って翻訳されて出てくる会計用語があるので、むしろしない方が良いです。
というわけで、まず、一番上にある内容から見てみましょう。
1. December 31と書かれている部分が示すのは、各会計年度の締切日です。つまり、2020年会計年度の締め切りは2020年12月31日だということです。ということは、2020年会計年度は2020年1月1日から2020年12月31日だということになりますね。この期間を1会計年度とするという意味です。会計年度の締め切りが常に12月31日だというわけではなくて、企業によって異なります。ある企業にJune 30と書かれているとしたら、この時は2020年会計年度が2019年7月1日から2020年6月30日だと理解すれば良いのです。
2. in thousands, except share and per share amounts という部分は、財務諸表内の数字の単位を示しています。今回の場合、すべての数字が「in thousands」、すなわち、千ドル単位であることを意味します。ただし、「except」の部分には例外が書かれています。今回の場合、株式数を数えるときを除きます。 in millionsと書かれている大きな会社もありますが、この時は数字が百万ドル単位だという意味です。
3. よく見ると数字に括弧が付いている場合もありますよね。括弧はマイナスという意味です。つまり、写真に示されているAccumulated deficit(総累積赤字)の数字(816,322)は-816,322千ドル、-8.16億ドルを意味します。その間、会社に積もった赤字が8.16億ドルほどあるという意味です。それほど難しくないですよね?これらはすべて連結財務諸表全体に適用されます。
連結貸借対照表(Consolidated Balance Sheets)
企業の現在の資産の状態を最も明確に示す表
#連結貸借対照表とは?
会計報告を終えた特定の時点で企業が所有している経済的資産、その経済的資産に対する負債、所有者及び株主が持つ純資産の残高を報告した表
会計の勉強をしていない方は、不慣れな用語ばかりで少し難しいかもしれませんが、私たちの文章を読んでいただければ簡単に理解できるはずです。
これが連結貸借対照表を構成する要素です。一番上から順に説明します。
Assets(資産)
企業が持っている、お金になるものすべて
企業が所有するものの総価値を指すのがAssets(資産)です。短期間に現金化が可能なCurrent assets(流動資産)と施設や設備、技術、長期で縛られるお金など、短期間での現金化が不可能なNon-current assets(固定資産)に分かれています。
Current assets (流動資産)
企業が短期間で資金にして回収または資金に転換できる資産
Current assets(流動資産)は通常1年以内に現金化できる資産を言います。企業が持っている現金または貨幣性資産だと理解しておけばよいです。このCurrent assets(流動資産)には、Cash and cash equivalents、Accounts receivable、Prepaid expenses(現金および現金同等物、売掛金、前払費用)などが含まれています。
Cash and cash equivalents(現金および現金同等物):
企業が持っている現金と、いつでも現金に交換できる証券を合わせたものです。例えるなら、私たちが銀行に預けている預金や、明日でも売れる株式口座にあるお金のようなものです。
Accounts receivable(売掛金):
商品を販売したりサービスを提供したりして受け取る権利のあるお金や受け取る権利のある手形のことをいいます。簡単に言うと企業の営業活動を通じて発生した債券であり、1年以内に企業が受け取ることができるお金です。このほかにも、下に Accounts receivable due to related parties(関連当事者に対する売掛金)という項目がありますが、これは Related parties(関連当事者)に対する売掛金のことです。役員や従業員などを指しますが、これはあまり重要なことではありません。
Prepaid expenses(前払費用):
すでに費用として支払いが完了していても、当期(今四半期)の費用として認められず、次期(次四半期)に繰り越すべき費用をいいます。つまり、当期に経費として支払われたものの、次期に属する費用をあらかじめ出したものであるため、資産に分類されます。
もう少し詳しく説明しましょう。
たとえば、ある企業の会計年度の締め切りが12月31日で、今年4月に1年契約の賃貸のオフィスを契約したとしましょう。家賃の支払いを毎月50万円ずつ1年間しなければならないのですが、それが面倒なので、1年分の家賃である600万円を契約時に一度に家主に渡しました。
8ヶ月が過ぎた後、12月31日に会計年度が締め切られたとき、4月から12月までの家賃はもちろんのこと、1月から3月の3か月分の家賃150万円まで既に支払ってしまっています。この1月から3月分は原則として翌会計年度に支払うべきお金です。逆にいうと、本来支払うべきこの家賃を翌会計年度に払う必要がないので、前払費用として処理して資産に編入します。
Total current assets(総流動資産):
上記をまとめたものが総流動資産であり、企業が1年以内に確保できるすべての現金の総量をいいます。
この下の項目からはCurrent assets(流動資産)ではないものです。 Non-current assets(固定資産)とよばれます。
Non-current assets(固定資産)
今すぐ現金に変えられない資産。
property, plant and equipment, net(不動産、工場、設備を含む有形固定資産):
企業が持っている、どんな種類であれ形のある資産を言います。工場や設備、施設、技術すべてに金額価値を付けて資産に入れるんです。事務机やコンピュータが持つ価値もみんなここに入ります。企業を経営するには、この種の資産を使って製品を生産したりサービスを提供したりしなければならないので、当然すぐに売って現金化することができない資産です。そのため、Non-current assets(固定資産)と呼ばれます。
Deferred costs(繰延資産):
前払費用と類似していますが、来年に支払われる予定の費用を予め支払うことで、それらを資産に移すことができます。
開発費のような一時的な支出でありながら、将来に渡り資産のような性質をもつものがこちらに含まれます。
上記の場合、「Deferred engineering costs(繰延エンジニアリング費用)」のカテゴリーに分類されており、本来は来年支払う予定だった1.1億ドルのエンジニアリング費用が今年一括支払いされ、繰延資産として処理されていることを示しています。
Non-current restricted cash(固定制限付き預金):
これは、企業が保有する、自由に引き出したり自由に使用したりできない現金を指します。したがって、これは流動資産ではなく固定資産として分類されます。この種の現金は通常、他のビジネス活動や契約の担保として拘束されています。例えば、ローンや工場のアップグレード、または設備購入のための担保として設定された現金です。これらは保証が必要な資本的支出の例です。
さて、これで、連結貸借対照表の資産項目をすべて説明しました。当然ですが、企業が持つ流動資産(Current assets)は多いほど良いですよね?もちろん、その中でも多くの現金及び現金同等物(Cash and cash equivalents)を持っていれば尚良いです。ただし、すべての連結貸借対照表が同じように作成されるわけではありません。一般的にはほとんど同じですが、企業の運営方法や事業分野が異なるため、企業ごとに項目にはわずかな違いがあります。もう少し説明しますね。
これはALFIという企業の2021年2Qの連結貸借対照表です。これまで説明したTELLの連結貸借対照表と少し異なる部分があります。
Note receivable(受取手形):
前述のAccounts receivable(売掛金)と同様の概念です。
Property and equipment, net of accumulated depreciation(減価償却累計額控除後の有形資産):
以前に、Propertyは企業が所有する有形資産を指すと述べました。物理的な形態を持つため、当然、有形資産は減価償却されます。したがって、企業は毎年、有形資産に減価償却を適用してその価値を算定します。
Intangible assets, net of accumulated amortization(減価償却累計額控除後の無形資産):
企業が所有するのは、工場や設備、オフィス家具などの有形資産だけではありません。IT企業では、プログラミングコードが重要な資産であり、ベンチャー企業では特許や技術が重要な資産です。これらの物理的な形態を持たない資産は、無形資産と呼ばれます。無形資産に、有限の寿命や契約期間がある場合には減価償却の対象となります。減価償却は時間の経過に伴って無形資産の価値を算定するために適用されます。
企業のSEC提出書類を見ると、連結貸借対照表の資産部門には企業が保有する資産の種類と数量が詳細に記載されています。
さらに重要なことに、10-Kなどの提出書類では、Account receivable(売掛金)、Property(有形資産)、Intangible assets(無形資産)などの資産の各構成要素について、減価償却の種類や金額などの詳細な情報が開示されます。
SECの提出書類でこれらの詳細な開示に詳しくなることは重要ですが、今は少し置いておいて、連結財務諸表の説明をすべて終えた後にこれらの詳細を再度取り上げる予定です。
※「米国株式投資で必須の武器!SEC開示分析講座」は連載となります。次回投稿までしばらくお待ちください※
本日で第4回目まできましたが、SEC開示分析講座は、約合計40編まで続きます。