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米国株式投資で必須の武器!SEC開示分析講座

みなさん、こんにちは!
米国株式義塾です。「米国株式投資で必須の武器!SEC開示分析講座」第3回を始めましょう。
前回は米国株式の証券取引委員会(SEC)の開示を見つける方法を学びました。今週は、前週に学んだことを簡単に復習し、公示で一番最初に見なければならないことを学びましょう。
公示の読み方に慣れたら、特に順番を守って読む必要はなく、必要な部分だけをじっくり見ても良いのですが、一度一通り内容を把握しておいた方が良いでしょう。
というわけでまずは順番に説明していきます。

第2回の講座はこちら


前回のおさらい

一番最初に見なければならない開示は?

- 米国籍の企業:10-K(年次報告書)、10-Q(四半期報告書)、424B5(重要事項の開示)
- 米国以外の国籍の企業:20-F(年次報告書)
- 上場して間もない企業:DRS(登録明細書草案)、S-1(最終確定登録明細書)


前回は見たい企業の種類によって、見るべき文書が異なることと、どの文書を見るべきなのかを学びました。

アメリカ株式市場において、私たちが見るほとんどの企業は米国国内の企業かと思います。なのでまずは、10-Kを効率的に読む方法を知るべきです。
さあ!それでは、10-Kで私たちが何を見なければならないのかを見てみましょう。

24時間いつでも、ご質問受け付けています。このコンテンツに関する質問でも、私達に気になることでも、金融リテラシーに関することでも、何でも大歓迎です。コメント欄にどうぞ!

伴走



前回と同様に、Tellurian Inc(TELL)を使って説明します。
開き方を覚えていますでしょうか?

「ちょっと忘れちゃった…( ;∀;)」なんて人はいないかと思いますが、万万万が一そんな人がいたときのために前回のリンクをこちらに貼っておきます!
しっかり復習しておいてください。

直接探しに行くのが面倒な方は、上記のリンクを横に開いておくだけです。 TELLの2021年の年次報告書です。


10-Kの記載内容や記載順は規格化されており、すべての会社が同じような構成です。
この中で私たちが最初に見なければならないのは 

  • Item 1 and 2. Our Business and Properties

  • Item 6. Selected Financial Data, Item 

  • Item 8. Financial Statements and Supplementary Data 

の3つです。順番にそれぞれに何が書かれているか説明します。

#Item 1&2 Our Business and Properties 企業概要

このパートでは、会社の紹介と現在の状況、将来のビジョンが書かれています。この部分を見るだけで、何をしている会社なのか、何を作って売るのか、これから何をしようとしているのかがとても簡単にわかります。


#Item 6. Selected Financial Data, Item 財務諸表の要約 

財務諸表の要約が記載されています。Item 8にはフルバージョンの財務諸表がありますが、それを見やすくまとめたのがItem 6です。また、何をして収益を上げ、損害を受けたのかも簡単に書かれています。


#Item 8. Financial Statements and Supplementary Data 財務諸表の総集

財務諸表のフルバージョンです。連結貸借対照表、連結損益計算書、連結キャッシュ・フロー表で構成されています。
複雑に見えますが、理解してしまえば簡単です。



おっと!先に進む前にちょっと待ってください!注意事項が一つあります。
当然ですが、通常100ページを超える10-K公示は全て英語になっているため、英語に弱い方のためにご紹介したい良き相棒がいます。

「Google翻訳」です。開示などの業務文書については、Google翻訳の能力が優れているので、翻訳して読んでも理解に大きな無理はないでしょう。


上のように、WEBサイトをGoogle Chromeで開いて、「マウスで右クリック→日本語に翻訳」をクリックすると、はるかに簡単に読むことができます。ところで、Item 6とItem 8を読むときには、Google翻訳を使う必要はありません。

用語と数字だけが書かれている場合がほとんどですが、問題はグーグル翻訳を使ってしまうと、米国の会計用語を正しく翻訳できない場合があります。もし、間違って米国の会計用語を理解してしまうと、投資にも失敗してしまいます。


例えば、上記の財務諸表でGoogle翻訳を回した結果、「年末決算12月31日」と記されていたとしましょう。これは英語では、Year Ended December 31で、「12/31会計年度締め切り基準財務諸表」という意味です。横に「関連当事者料金」と書かれたのは Related party chargesで、「特殊関係者費用」を意味します。とにかく時に相棒にも間違いがあるということを頭に入れておいてください。

米国の会計用語は私が後で一つ一つ説明します。
相棒に頼るのもいいですが、Item 1 and 2、そしてItem 6、Item 8の財務諸表の下にある会社の財務状況の説明は、もちろん英語で見るのが最も正確です。米国株式義塾で用語を学んで英語でも見られるようにしましょう。


Item1&2 最も詳しい会社紹介とマニュアル

おそらく皆さんは「なぜどれよりも先にItem 1と2を読む必要があるの?
どうすれば賢く読むことができるのだろうか?」と疑問に思っていることでしょう。

皆さんは、今までに興味のある米国の会社について詳しく知りたいと思ったとき、どのように情報を探していましたか?
おそらくインターネットで、日本人が日本語で書いた投稿や会社のホームページを探したのではないでしょうか。

これには2つの問題があります。

まず、アップル(AAPL)やテスラ(TSLA)など、世界的によく知られている有名な会社でなければ、日本人がその会社について書いた投稿はほとんどありません。得られる情報がほとんどないということです。第二に、会社のホームページを開いて直接探してみる場合には、もっともらしい会社の宣伝文句と華やかなグラフィックを見ることしかできません。

#会社のホームページに騙されてはいけない理由は?

いくら財務状況が悪く全く成長の可能性がない会社でもホームページは大概きれいに飾られており、何か良く見えるように説明されている。会社のホームページは投資を受けるための看板のようなもので、いくらでも飾ることができる。

だから会社のホームページだけを見て企業の情報を得る場合、企業の手のひらの上から脱出することはできません。しかし、10-K開示のItem 1 と 2を読めるようになれば、皆さんにとって強い武器になります。企業は開示資料にありのままの姿を載せるしかないからです。もし不正をしてしまったら、証券取引委員会の厳罰を受けるためです。もちろん、10-Kも最強の資料というわけではなく、企業があまり良くない情報をなるべく載せないようにすることはありますが、それでもItem 1 and 2は私たちが企業について最も正確に知ることができる手段です。

さて、少々前置きが長くなりましたが、ここからは、TELLの10-Kを題材に読み解いていきましょう!



このように、TELLの10-KのItem 1 and 2では、会社の全体的な紹介から始めて...


CEOや経営陣の略歴、会社が何を作ったりどんなサービスを提供してお金を稼ごうとしているのか、どんな種類の資産をどれだけ持っているのかなどを非常に詳細に説明しています。おおむね5~10ページほどでそれほど長くないので注意深く読んでみてください。ここで何をする会社なのかを大まかに把握したら、すぐに次に注意深く読んでみなければならないのがItem 1A Risk Factor (リスク要因)です。

Item 1A. Risk Factors

会社のリスクを率直に開示するパート


これがまさに、単に日本語の会社の投稿や会社のホームページを読むだけでは分からない、本当に重要な情報です。 Item 1Aは、簡単に言うと、会社が直面する、またはこれから直面するリスク要因を述べたパートです。


#財務状況に対するリスク要因(Risks Relating to Financial Matters)では何が説明される?

会社が財務上の困難にぶつかる場合、それが包み隠さず説明されます。あるいは、現金及び現金等価物を多く積み上げていて、十分に資金がある場合、当面お金の心配はしなくてもよいと説明されます。
ここでTELLの場合を見てみましょう。

TELLは、画像に見られるように、Driftwoodプロジェクトに数十億ドルを費やしていました。


#普通株式のリスク要因って何?

会社の株価変動によるリスクを説明している。TELLは最低の0.67ドルから最高では8.69ドルまでの株価変動幅を経験したことがあり、その原因の一部はLNG(液化天然ガス)価格の変動によるものの、残りは市場参加者の投資過熱によるものかもしれないと記載されています。


#LNG事業のリスク要因(Risks Relating to Our LNG Business)とは?

会社の主要事業領域であるLNG事業にどのようなリスク要因があるかを説明しています。
LNG価格が下がると損失が発生する可能性があること、Driftwoodの遺伝プロジェクトの費用が289億ドルも入ったが、さらに入るかもしれないことを説明しています。また、特に輸入鉄鋼などの建設資材のコストが上がったり、関税が上がって材料費が増えることを懸念していることも分かります。
ここまで見てきて、察しの良い皆さんなら、1A Risk Factors(リスク要因)に注目すべき理由が分かってきたのではないでしょうか。

このパートを読めば、どの要因が事業に関係するのかという情報を手に入れることができます。
というわけでどんどん読み進めましょう。

これもItem 1Aの内容の一部です。これを見て何が分かるのでしょうか?
前に説明したようにItem 1 and 2を読めば、TELLはLNG(液化天然ガス)を掘削して売る会社だということがわかりますよね?TELLが商品とするLNGの価格や供給はLNG船の数にも大きな影響を受けます。




2021年当時の状況を見てみると、LNG船が供給過剰な状態です。そのため、LNG船の運賃(LNG Tanker Charter)が今年初めに高値を記録してから再び暴落しています。このような環境は、TELLが持っている「LNG船の不足のために掘削した天然ガスを供給できないこと」に対するリスクを大幅に減らすことができますよね。さらに、LNG船の運賃も低くなるので、TELLのお金でLNGを供給する際のコストも少なくなります。
Item 1Aに書かれていることは、その企業の業績に影響を与える項目、すなわち、業績を見極める鍵ばかりなのです。


さてさて、お次は何の話でしょうか?

GHGはグリーンハウスガス、すなわち地球温暖化を引き起こす温室効果ガスのことです。LNGを掘削して輸送するには、大量の工場設備の稼働が必要であるため、温室効果ガスが多く排出してしまう可能性があります。バイデン政権の下で、州政府がLNG生産施設に対する温室効果ガス排出規制を発表したとしたら、その要件を満たすために追加費用がかかると懸念していますね。このように、TELLの収益に温室効果ガス規制も大きな関連性があることがわかります。

Item 1A Risk Factors(リスク要因) を慎重に確認すれば、会社が心配するリスクだけでなく、会社の収益や成長が市場のどの要素と密接に関連しているかについてもわかりますね。

そうです。これがItem 1A Risk Factors(リスク要因)を必ず読むべき理由です。もちろん、読んでみると…


こういうふうに、なんとか分量を埋めようと、あるいは何か書かなければならないからとりあえず書き留めたことが明白な内容もありますが、こういうところまで読んでおく必要はありません。
とにかく、一度読んで見た皆さんはもう、Item 1Aで何を詳しく読まなければならないのか、何が分かるのか理解できたかと思います。


#Item 1Aで重要なことは?

上記の例では、LNG船の過剰供給や温室効果ガス規制など、市場の他の要因と密接に関連するリスクを中心に読んでください。市場のどの要素が関連するのかが分かれば、この会社に投資するのが良いのか、悪いのかを知ることができるはずです。


皆さんも、本人が関心のあるアメリカ株式のティッカーをEDGARに検索して、何をしている会社なのかItem 1 and 2を一度読んでみてください。投資の方向性に多くの役に立つでしょう。次の時間から、会社の財務状況を分析するために読む必要があるItem 6、Item 8について説明します。もっと詳しくは、

- 連結貸借対照表(Consolidated Balance Sheets)
- 連結損益計算書(Consolidated Statements of Operations)
- 連結資本変動表(Consolidated Statements of Stockholders’ Equity)
- 連結キャッシュフロー表(Consolidated Statements of Cash Flows)


について、各表に記載されている米国会計用語の説明を含め、4つを見る基本的な方法から説明します。米国株式財務諸表の見方、全く難しくありません。用語と概念だけを知ることができます!上位1%だけができるスマートな投資のために一緒に行きましょう。


※「米国株式投資で必須の武器!SEC開示分析講座」は連載となります。次回投稿までしばらくお待ちください※


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