榊PUTTERが製品化されるまでの物語
第1章 榊原さんとの出会い
遂に製品化が決定しR&Aへのルール申請を控えている榊PUTTERですが
今回はその榊PUTTERが完成するまでのお話と理論をお話していきます。
この話が始まったの2020年の4月頃、知人の紹介によりパターを制作されていると言う(有)榊原工機 社長の榊原崇さんと出会いました。
榊原さんの会社ではマシンニングセンターという世界最先端の5軸加工切削機器を所有していましたが、ちょうど新型コロナウィルスの影響を受け、その機器を使う仕事が少ない時期でした。
そこで榊原さんのパターを拝見させて頂いたのですが、そこで見たパターはどちらかと言うとアンティークのようなデザインのパターでした。
そこで受けた相談はこのパターを製品かするというお話でした。
そのお話だけ聞くと特に問題は無いと感じたのですが、一つだけ大きな問題がありました。
それはこのパターにかかっていたコストだったのです。
パターは大きく分けて2種類の製造方法があります。
それは鋳造と削り出しです。
そしてこのパターは削り出しで作られており、なんと24時間かけて1つのヘッドが作られるという工程でした。
当然そのコストは高く売り値を伺った時にびっくりしました。
アンティークパターとして売り出すには少々値段が高すぎたのです。
そこでシンプルなピンタイプのパターを提案させて頂いたのがこの話の始まりでした。
第2章 世界一のパターオーラを出せ!
そこで榊原社長にまずお願いしたのは、一流選手のパターを実際に見ていただくことから始めました。
実は私自身もパターマニアで以前から世界の有名選手のパターを集めるのが趣味でした。
家には世界賞金王にも輝いたジャスティン・ローズや全英オープンチャンピオンのフランチェスコ・モリナリが実際に使用していたパターがありました。
そこで一流の選手のこだわりを榊原さんに見ていただきました。
そしてここで榊原さんに理解していただきたかったのは「パターのオーラ」です。
皆さんは中古ショップに行ったことがありますか?
中古ショップで並んでいるパターを見て値札を見ずとも高級品だと分かる瞬間ってありませんか?
私が言いたいのはパターの性能も大事かもしれませんが、一番大事なのはオーラなんです。
10年前のパターでも名器であれば値下がりすることなく、堂々とショーケースに並んでいます。スコッティキャメロンやベティーナルディーがその象徴です。
そこで榊原さんと目標を決めました。
10年後に中古ショップに並んでも殆ど値下がりすることのないパターを作ろうと。
そうして榊パターの制作が始まりました。
まず初めに取り掛かったのはシンプルなピンタイプのパターで一流の輝きを出すことでした。
そこでまず考えたのはノッメッキで作ることでした。
皆さんはノッメッキのパターを見たことがありますか?
ほぼないでしょう。
通常パターにはメッキ加工が施されていますがメッキ加工されていないパターはあまり見栄えがよくありません。
なぜかというと切削面と削った後がはっきりと分かるからです。
しかし、これを逆手にとることにしました。
日本の削りの技術と切削機器の技術は世界NO1。
つまりメッキ加工をせずに世界を圧倒することができるチャンスなのです!
そして完成したのがこちら
削った後がハッキリと見えるかと思います。
個人的にはこれは素晴らしいと思いました。そして人に見せてもかなりの高評価でした。
しかし、ここで思わぬ酷評を受けることになりました。
第3章 First Run
それは私も榊原さんも全く見ていなかった部分でした。
実はこのパターを見せた中の一人がマイスターと呼ばれるパターの目利きのような方にこのパターを見せた時に言われた言葉がありました。
それは
「これは何回目?1回目じゃないよね?刃ケチったでしょ?」
ハッキリ言って何を言っているのか全く分かりませんでした。
そして榊原さんにその話をしたところ榊原さんはビックリした顔で答えました。
「どうやって分かったの?」と
つまりこういうことだそうです。
削り出しをする際に鉄を削るために鉄用の刃物を装着します。しかしその刃物も当然使えば切れ味が悪くなります。
そしてその刃物を何回も使い回せば当然形は崩れますが通常メッキ加工すれば分からなくなります。
しかしマイスターはそこを見逃しませんでした。しかもマイスターに見せたのは2回目の作品。つまりほぼ製品に差はないはず。
ですがパターに詳しいマニアに見せればそこは一瞬で見抜かれるということだったのです。
そこでこのパターを削る時は毎回刃物を取り替えることにしました。
もちろんコストもかかります。しかし一流のオーラを出すには必要なコストだと考えました。
これをゴルフ界では「First Run」と呼ばれています。