カムカムエヴリバディ
最終回を終えました。(ちょいちょい見逃している回もあるかもしれませんので間違っていたらごめんなさい。)
このドラマで最初に感動したのは第1週の2回、算太がダンスするシーン。本来ならまだ様子見の段階で、
既に登場人物に感情移入して感動してしまうくらい、いろんな要素がギュッと詰まった作品でした。
また、朝ドラによくある(←?)スタジオセットばかりの窮屈さもない奥行きのある演出も良かったです。
最終週は大団円といった感じでいろんなことが繋がって、長い長い伏線を最後に回収する藤本有紀さんの脚本も素晴らしかったです。
…と言いたいところなのですが、本当にそうなのでしょうか??
安子編の前半はかなり好きです。
個人的に好きな朝ドラベスト3は「カーネーション」「あまちゃん」「ちりとてちん」なのですが、
始まったときは「カーネーション」超えもありえるなと思っていました。(←伏線)
主人公が3人いるということで、展開はかなり早かったものの、必要な情報をテンポ良く詰め込んで、それでいてそれぞれのエピソードが丁寧に描かれていました。
登場人物も算太や吉右衛門のキャラクターが面白かったり、杵太郎を始めとした橘の家族の軽快なやりとり、そして安子と稔の恋愛パートなど、全てがバランス良く丁寧で、王道ではあるものの、その王道をしっかりとやっているなと感じる作品でした。
そこから戦争パートに入り作品の雰囲気は一気に重くなります。戦争を描く朝ドラはたくさんありましたが、本作は他の作品と比べてもかなり攻めた残酷な内容で(岡田惠和さん脚本の「おひさま」とは真逆)、毎朝見るのが辛かったものの心を揺さぶられるエピソードが多くて良かったです。
ただ…。
戦争が終わっても、算太が戻ってきても、重たい雰囲気は変わらず、
いろんな歯車が狂って安子が姿を消す展開には…。朝に見るものではないなと思ってしまいました。もちろん朝ドラは昼にも夜にも見ることができるのでそこはまだ良いのですが、
いい加減シリアスパートが長すぎるといいますか…。もう少しカラッと明るいパートもほしかったなと思ってしまいました。
また、「おしん」のように(←?)周りの人達が悪役だったりすると、たとえ話が暗くても、ヒロインのことを応援しながら見ることができるのでギリギリ耐えられるのですが、
誰も悪くない、皆少しずつ落ち度があって…。みたいな展開はもう辛すぎて…。
しかもそんなとてつもなく重い安子編のラストが「I hate you」で終わるって…。その後の展開がしばらく入ってきませんでしたよ。(いくら るいダンスを踊ろうが、お洒落に着飾ろうが、クリーニング屋の夫婦に優しくされて涙しようが…)
正直、ここで安子がるいを手放す展開にもう少し視聴者が納得できる何かがあった方が良かったのではないかなと思ってしまいました。
そして、るい編。
るいと錠一郎のエピソードは良かったのですが、連続ドラマとしては、安子編でメインとして描かれていた英会話講座は全く登場せず…。
それは設定上仕方ないにしても、るいが回転焼きを始める展開では、いくら小さい頃母親があんこを作る姿を見ていたとはいえ、作り方は知らないであろう「たちばな」のあんこをいとも簡単に(←個人的にはそう見えてしまった)作り上げてしまう展開には「???」でした。
あんこに関しては安子編がるい編・ひなた編に繋がる重要なエピソードなわけですからもう少し丁寧に描いてほしかったです。
そして、ひなた編。
個人的にひなた編の序盤は私が好きな「ちりとてちん」(←本作と同じ藤本有紀さんが脚本)と雰囲気が似ていて良かったのですが…。
やはり気になったのはラジオ英会話とあんこのエピソード。
まず、るいが実はラジオ英会話を聴いていたという展開。この辺の描き方については、あくまでひなた編の主人公はひなたなので、ひなたが把握していないエピソードは劇中でも描かないということだったのかもしれませんが、
だとしても後出しジャンケンに見えてしまうといいますか…。あからさまに描かないにしても、もう少しラジオや英語の存在を匂わせてほしかったかなとは思いました。
そしてあんこ。
もしかすると、味は関係なくて「おいしゅうなれ~」が受け継がれていたこと自体が算太や安子にとっては嬉しかった。そういうことなんでしょうか?
「たちばな」という店があることについても、あの子が金太から教わったのはおはぎの作り方ではなく商売の面白さだったので、そこが繋がるのも少し違うかなと思うのですが…。
結局のところ、描くべき要素が多すぎたのではないでしょうか。
たった半年で、3人のヒロインの話を描いて、さらにラジオ英会話、あんこ、ジャズ、時代劇などの要素を入れて、それらを繋げる…。
普通に考えて無理じゃないですか??いろんな要素をごった煮して一つの作品で描くのは宮藤官九郎さん脚本のドラマなどでよくありますが、プラスαでヒロイン3人の一生まで描ききるのは無理があったと思います。
最後にはなんとか繋ぎ合わせたものの、これはwikiに書いてある藤本有紀さんの作風「長い長い伏線を最後に回収する」とは少し違うと思います。
おそらく、このドラマで脚本を手掛けた藤本有紀さんにはマンネリ化してきた大阪制作朝ドラに新しい風を吹かせるという使命があったのかもしれませんが…。
もちろん「おちょやん」や「スカーレット」もすごく面白い作品でしたが、朝ドラに馴染みがない方からすれば「いつも実話をモデルに元気で強気なヒロインが昭和の時代を無双する…(?)」みたいなイメージがついていたかもしれません。
とくにヒロイン像に関しては朝ドラ最高傑作とも言われている「カーネーション」の残像を引きずっているところは少しあったかもしれないので、
それに当てはまらない「カムカムエヴリバディ」は大阪制作の朝ドラに新しい風を吹かせることはできていたと思います。
ただ、最終的な完成度はちょっと今ひとつだった気がしなくもないですね…。つまらなかったわけではないですし、面白かったですし、雰囲気も安子編の終盤を除けば好きでしたが記憶に残る朝ドラにはならなそうです。
(安子編、るい編、ひなた編のどれか一つをじっくり見たかったです。「おかえりモネ」に続き、出だしの期待値が高かっただけに中盤からコレじゃない感が多少ありました。)(あと、風間俊介さんは遊川和彦さん脚本の「純と愛」に続き、NHKに弱みでも握られてるんでしょうね。きっと。)
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