極限状態の記者と地元メディア企業: ロサンゼルス山火事報道

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ロサンゼルスで発生した大規模な山火事は、多くの人々の生活を一変させ、地域社会に深刻な影響を及ぼしました。しかし、この状況下で地元テレビ局などのジャーナリストたちは、自身の被災経験を乗り越えながら長時間の報道を続けています。


個人的な影響を受ける記者たち

多くの記者が、自身の家族を避難させる一方で、現場での報道を優先させています。KABCのジョシュ・ハスケル記者は、火災現場からの生中継中に家族を避難させるよう指示した経験を「心身ともに限界を超える体験だった」と語りました。さらに、彼自身の幼少期の思い出が詰まった地域が炎に包まれたことに、深い悲しみを感じているといいます。


またNBCニュースの特派員であるジェイコブ・ソボロフ氏は、彼の幼少期の家が焼失した現場からの報道を行い、その個人的な悲しみを視聴者と共有しました。 


記者たちは時には被災者の支援にもあたりました。例えば、KCALのジャスミン・ヴィール記者と彼女のカメラマンは、家を失った住民のペットを救出するために行動を起こしました。

またKTLAのジョン・フェノグリオ記者は、取材中に見つけた小火を消すために中継を中断し消化活動を行いました。


被災したのは当然テレビ局のスタッフだけではありません。新聞記者や他のジャーナリストも深刻な影響を受けています。

例えば、ジャーナリストであるキャサリン・ターマン氏は、パシフィック・パリセーズの自宅から避難する際の緊迫した状況を語っています。彼女は友人からの緊急の連絡を受け、貴重品や家族の思い出の品を急いで持ち出し、近くの高齢者施設にいる友人の両親の避難も手助けしました。避難後、彼女は一時的に元夫の家に身を寄せ、地域社会との連絡を保ちながら、被害の大きさに心を痛めています。 


また、ロイターのリンゴ・チウ記者は、パシフィック・パリセーズ地区で小さな家々が炎に包まれる様子を撮影し、その悲惨な光景を伝えています。同僚のホルヘ・ガルシア記者が取材したカーティスさんという男性は、避難後に自宅が全焼して何も残っていない状況を目の当たりにし、無力感を感じていると語っています。

ビジネスと報道の狭間で

ビジネスの観点で見ると、各テレビ局は山火事の報道を最優先し、コマーシャルなしで報道を続けることで収益に大きな影響を受けています。一部の局では収益損失が数十万ドルに達すると予想されていますが、局の幹部たちは「正しいことをしている」と収益よりも報道を優先する姿を示しています。例えば、KABCは2017年のハリケーン・ハーヴィーの時にも、広告なしで報道を続けた経験がありました。

KTLAなどの局では、状況の急変に対応するため、計画を柔軟に調整しながら報道を続けています。KTLAは、自社の建物が避難警告区域に入った際にも放送を維持できるよう、バックアップの中継トラックを準備していました。最新技術やサテライトシステムを活用して、報道体制を整えています。

また、地元局だけでなく、他の州や都市の姉妹局からも支援を受けており、特に週末には疲労がピークに達するスタッフを休ませるために外部の助けが重要となるでしょう。多くのスタッフが自分の家を失うなど、個人的な被害を受けながらも報道を続けています。その中には、仕事が「気を紛らわせる役割を果たしている」と話す人もいました。


長期的な課題と適応

テレビ局は、現在の火災報道が一時的なものではなく、長期的な取り組みが必要であることを認識しています。被害の全容解明、保険問題、地域の再建など、これから何年も続く課題に対応するため、新たな報道体制の構築が進められています。

そして記者たちは「人間性」と「職業意識」の狭間で、地域社会に寄り添いながら情報を届けています。ロサンゼルスの風景が変わる中、報道の在り方も進化を続けていくでしょう。

最後に。NBCデイトラインの特別番組で、特派員のキース・モリソンの言葉が印象的でした。「この瞬間この世の終わりだと感じていても、我々は復興させる。」と。

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