「デキるヤツがうつになりやすい」という話(じぶんのタイプを知る)
生きづらさを脱却するのに、「まず自分のタイプを知ろう!」という話を前回しましたね。
で、これからタイプをいろいろ紹介していくんだけど、実際に患者さんや友人たちと話ししてて話題にすることが多いやつを挙げていくので、まったくMECEではないことを宣言しておきます。
(「MECEじゃないと気持ち悪い」ってひとがいたら、もっと肩の力を抜いたらいいよ。)
「あ、これわたし当てはまるかも」みたいなのがあれば、それをきっかけに自分の理解を深めてもらえたら幸いです。
さて、「うつになりやすい性格があるよ」って言ったら、どんなものを考えるでしょうか。
古くからうつになりやすい性格の傾向について様々な専門家が提唱しているのですが、その中でも有名な「メランコリー親和型性格」というのがあります。
メランコリーとは「ゆううつ」という意味なので、憂うつに馴染み深い性格、というそのままの意味になります。
実際は、どんな性格の人でも「うつ」になるので、この性格に当てはまるか否かというのは決定的な問題ではないのですが、「自己理解を深める」という観点でとても有用な考え方なので、紹介します。
「メランコリー親和型性格」とはドイツの精神医学者H.テレンバッハが提唱した概念で、以下の様な特徴があります。
・ルールや秩序を守る
・几帳面である
・自分の仕事に対する責任感が非常に強い
・完璧主義である
・他者を重んじる
・親切・律儀・誠実である
・衝突や摩擦を避けるために、自ら折れることができる
これ、学校だったら「優等生」だし、職場だったら「デキる人」の性格そのままですよね。こうした性格は、組織活動においてはまさに模範的で、非常に高い評価を得やすい性格傾向であると言えるでしょう。
メランコリー親和型のベースには「秩序志向性」という特徴があります。「自分で決めたルール・規範を、しっかりと守ろうとする」という性質のことです。これは、高い成績や評価、質の高い仕事をする上ではとってもプラスに働きます。
その一方で、厳しい「自分ルール」の中にはまりすぎるために、気持ちの切り替えができなかったり、プライベートにも仕事を持ち込んでしまったり、未完了の業務があると気になってリラックスができないといった弱点もあるのです。
ストレスマネジメントの観点からは、以下の様なマイナス面があります。
・秩序を重んじるあまり変化に弱い
・融通がききにくい
・人に頼れない
・うまく手を抜けない
・他人の評価を気にしすぎる
こうした人達は、得てして他人に悩みを打ち明けたり、助けを求めることがすごく苦手だったりします。
むしろ、優秀であるからこそ、大抵の困難を独力で解決できてしまったがために、他人に本気でヘルプを求めたことが今まで一度もない、というケースもわりと多いです。
なので、自分のキャパシティを大きく超えた業務ストレスが襲いかかってきたとしても、他人からの評価が気になるため、自分自身の心身を休めることを後回しにして限界までがんばってしまい、やがて心身の限界が訪れうつを発症するといったパターンが非常に多いのです。
もともと信頼を勝ち得やすいがゆえに、組織の面倒事がこうした人に一手にのしかかってきやすいという側面もあります。断るのが苦手なために、ますますキャパシティオーバーになりやすいという危険性があるのです。
とくに、これまで学業も仕事も順調だった人がはじめて挫折する、「優等生のファーストキャリアでの適応障害」とかはこのパターンが多い。
他人の期待に応えることが喜びで、その期待をエンジンにどこまでもハイスピードで走り続けてしまうハイスペックな人、いますよね。
僕はこれを「ブレーキのないスーパーカー状態」と呼んでいます。
どんなにしんどくても、フェンスにぶつからないと止まれないのです。
マリオカートならコースアウトしてもジュゲムが釣って戻してくれますが、実世界にはジュゲムはいませんし、失うものもコイン2枚よりも高くつくでしょう。
(注:ジュゲムとは「マリオカート」という名作レースゲームに登場するサポートキャラクターの空飛ぶカメ。スタートの合図を出してくれたり、コースの案内をしてくれます。コースアウトから復帰する際には、ペナルティとしてジュゲムにコイン2枚没収されます)
このような性格の人が、ダウンしないための対策を3つあげたいと思います。
①自分がそういう性格であることを自覚する
ストレス耐性が強いわけではないということをまず自覚する、ということがなにより重要。理解することで自分に起こりうる変化が予測でき、それだけで予防効果は大きく高まります。
②相手が求める成果物のレベル感を確認しておく
たとえば書類を提出するにしても、全てにおいて自分の中の100点を目指すのではなく、まず先に「例のレポートの原案、ひとまずA4で5枚くらいでいいですか」「スライド10枚くらいですかね」というように、相手が求める成果物のレベル感を先に聞いておきます。そこに少しだけ加点するということを心がければ、評価が下がることはありません。
③ 「しょぼい頼みごと」でヘルプの練習をする
究極的にはどんなに大きな困難があっても、信頼できる誰かに助けを求めることができれば潰れることはそうありません。助けを求めることを「援助希求」といいますが、これは生きていく上でかなり必要度の高いスキルです。「頼る」というのは、どこまで頼るか、どのタイミングで頼るか、などのバランス感覚を必要する、高度なスキルでもあるので、習熟していくためにはそれなりに練習が必要です。まずは、信頼できる人に「小さい頼みごと」をすることで、「ヘルプ慣れ」をしていくのがいいとおもいます。
一番大事なポイントは、「他人の期待のみをエンジンとする運転をやめること」です。「ブレーキのないスーパーカー」に、自分の意思で「ブレーキ」を搭載することです。
自分の体力や気力をしっかり把握し、「厳しいな」と思ったら、相手の評価が下がることを恐れずに、「ちょっと無理です」「今日はそれはできません」ということを伝えられる勇気と強さをもつこともまた、高度な技術。
それができないと、何度事故っても「壁にぶつからないと止まれない」という状態が繰り返されてしまいます。
「そうは言っても、難しいよ」と思う人もいるかもしれません。
このメランコリー親和型性格は、「"HSP"」や「愛着スタイル」とも深く絡んでいることが多かったりします。
「タイプ」の話はまたつづきまーす。
これは、今書いている次の本に入れる予定で、「自己肯定感マガジン」にいれようかとおもったんだけど、該当する人が超多そうなので公開にしてみました。
ではまたね。