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SPILL da BEANS 制作話
昨日でBOF:TTのインプレッション期間が終了したので、出展した楽曲「SPILL da BEANS」について少し語らせていただこうと思います。
昨年のAPOCALYPTICA 制作話でも書いたのですが、BOFに出展する楽曲については「音楽ゲームの裾野の広さならこういうアプローチもあっていいよね」という自分の想いを乗せることを主軸に考えていて、これまでの『彼女が告白をした理由』『ねぇ、起きてる?』『APOLCALYPTICA』どの楽曲とも異なる印象の楽曲を作ったので、その流れをお伝えするために記事を書くことにしました。
▼楽曲テーマについて
過去3年間はストーリー性・世界観を重視した楽曲を意識していましたが、今年はその根底から変えて「メッセージ性を強く表に出す」ことにしました。というのも、自分の頭の中に作った世界にキャラクターを置いてストーリーを展開させるというやり方はずっと僕がやってきたことで、それに依存していては自分の作風を広げられないと思ったからです。
メッセージ性というと一番に思い浮かぶのは応援歌。でもそういったストレートなぶつけ方は捻じ曲がった性格の僕には難しいので、めちゃくちゃ斜に構えて回りくどく伝えたいことを潜ませるのに注力することにします。
中身を本人が説明するのは野暮なので詳しくは書きませんが、テーマをSpill the beans(=豆をこぼす)というアメリカのイディオム、日本語で「秘密を漏らす」という内容に決め、それを直接的な言葉を使わずにどうやって伝えるか、そればかり考えていました。
まずは楽曲の方向性です。「秘密」というニュアンスを持たせるためには、明るい or 暗い ではなく、かっこいい or かわいい でもなく、どことなく後ろ暗い雰囲気がずっと続く楽曲がイメージに近いと固めていきます。
特に今回に限って言えば、オケが煌びやかに聴こえるとかサビで派手に盛り上がるとかそういった要素はノイズになってしまう。大きく展開をせずに細かい変化だけで成立させる方法を模索していたところ、浮かんだのがエレクトロスウィング。なぜなら、楽曲が持つノリのよさでずっと聴いていられるし、なによりオシャレだからです。
とはいえ同ジャンルはブラスセクションが賑やかになりがちなので、さらに音をそぎ落とすためにビートをバイレファンクに寄せることを決めて、頭の中で楽曲の構成を整理していきました。
▼チームメンバーについて
どういう楽曲にするのかを決めたところで、楽曲に携わってくれるメンバーにお声がけを始めます。
最初に気だるげであまり声を張り上げずに歌ってくれるボーカリストさんを探したのですが、自分自身が作ったことのない曲調のためイメージに合う方を見つけるのに苦労します。
そこで、近しい場所にいながら一緒に制作をしたことがなかったはぁちさんと、今年のBOFの少し前に話す機会があり「今度タイミングが合えば一緒にやりましょう!」と言ったのを思い出します。何気なく彼女のYouTubeチャンネルを覗いたところ、色んなジャンルの音楽を自分の中に落とし込んで歌っているのがわかり、僕の楽曲もうまく表現してくれそうだということで早速正式にお願いをしました。
過去にも主にPonchi♪くんのBOF楽曲で歌唱を担当されていますが、それらの楽曲たちとまた別の魅力を引き出せそうだと思ったからというのもあります。
次にイラストレーターさんを探します。音楽にはテーマに対する直接的な要素を含ませないため、イラストで視覚的な情報・動きのある映像が必要になるだろうということ、賑やかなものよりは情報量が少ないイラストのほうが映えそうだと想定し、アニメーションに精通していてシンプルなイラストを描ける方を探していました。
こちらも過去に『スパダリ / U-ske feat. あいの』という楽曲のイラストを制作いただいた横さんのことを思い出します。当時は一枚イラストをお願いしたのですが、目パチのアニメーションつきのものが届いたこともあってアニメーションも得意とされているとお見受けしオファーしました。
お二方ともお忙しい中ご快諾いただき、制作を進めていくことになります。
▼制作について
実際にエレクトロスウィング+バイレファンクを意識した制作に入ると、音楽ゲームとの親和性が問題になってきます。音の抜き差しでグルーヴを作る構成上、シンプル・単調になってしまうのは避けられず、演奏感が大事な音楽ゲームの楽曲としては致命的だったからです。
1小節のノリを「4分音符x2・付点8分音符x2・8分音符」「付点8分音符x2・4分音符・8分音符・4分音符」「4分音符x4」のように複数のパターンを使い、キメを多めを作り、同じオケでもボーカルだけを3連符にして耳に入る情報を変え、とにかく単調さを少しでも減らすように試行錯誤しましたが、どこまで伝えられたかはなんともです。
少なくとも音楽に浸りながらプレイするスタイルの人に没入感を提供できるところまでは持ってこれたかなと思いつつも、高難易度を求めるスタイルの人にはあまり合わないかもなとも思っていました。
そして、昨年とは違って制作のスケジュールをそれなりに長く取っていたおかげで時間的な余裕はたくさんありました。そこで、これまで以上に意図を正確に伝えるために、一旦全ての制作を自分でやってみることにします。
具体的に言うと、楽曲の歌唱も自分で行い、イラストも自分で描き、アニメーション化し、映像に起こす。それをα版としてはぁちさんと横さんの両名にお渡しし、本職のお二人のアイデアや表現を組み合わせることでより高いレベルの作品にしようと思ったわけです。
歌に関しては仮歌を自分で録ることもあるのでそれほど苦労はしなかったのですが、問題はイラストとアニメーション。絵心もなく、ましてやアニメーションなんて作ったことのない中でイメージを具現化していくという作業は途方もないことでした。さらにそれを伝えるために絵コンテを描き、文字で説明し、映像化したものと合わせて用意するというのは本当に難しくて、陰鬱な印象を与えたいという僕の意図をうまく汲み取ってくれたことを感謝しています。
実際にお送りした仮歌(絵コンテやイラストはあまりにもだったので割愛)
実際のスケジュール感としては、以下のように進みました。
7月23日~8月2日 U-ske/楽曲デモ制作
8月2日~8月8日 U-ske/絵コンテ・デモ映像制作
8月3日~9月8日 はぁちさん/ボーカル収録
8月9日~9月12日 横さん/イラスト・アニメーション制作
9月13日~10月3日 U-ske/ミキシング・マスタリング・映像化
そんなこんなで制作開始から約2ヶ月半、はぁちさん・横さんに多大なお力添えをいただいて『SPILL da BEANS』が完成しました。
選ぶだ捨てるだ迫られし今日日 どうにも避けようがないって
容易く消去? それも空虚 で溜まってく一方
ため息と一緒に漏れ出した心の質量 その分だけ確かに軽くなるなんてもう
やってらんない日常
ひどく詰め込まれた荷物の底のほう
見ないようにして伏せた視線に焼きついた穴
広がる隙間から生まれた天使と悪魔 もはや流されるのが相場
言い訳だとか理由なら万全 指先から染まり汚れた腕
虚像に塗れた万能感で 気づかず浸る影
思い及ばずのSPILL da BEANS 少しくらいならば問題なし
もしや大注目? 一挙手一投足 と、浮足立つもんです
狙い定めてはNIBBLE with BEAKS 甘すぎた蜜に占める味
蓄えた中身 数えて一二三 逃れられない BOGGED DOWN
飛び回り群がる外野 DANGER? 叱咤? なんだっていいや
さあ、どうぞ大盤振る舞っちゃって 独りよがり気持ちよくなって
はぁ おだてりゃ登るソレの習性 降りられなくなるまで
わずか なけなしのSPILL da BEANS 知らないフリで躱せない
「そんなつもりじゃない!」「何かの間違い!」は、後の祭りなんです
狙い定めてはNIBBLE with BEAKS 甘すぎた毒に堕ちる意志
いつのまに空っぽ 束の間の夢 今頃 覚めたって END
BOF:TTは昨日で終了しましたが、もちろん今後も無料で遊べるのでぜひ楽しんでみてね!