衆人に訴える論証、芸能人の政治発言

なかなか面白い分析です。

特に面白いのが最後のほう。

③ なるべく正解したいから
(これも私の偏見/経験が入ります)日本の学生は、テストという物差しで測られてきた「テスト物差し人間」が多いように思われます。

なるべく正解したい、正解じゃなくても、正解に近いポジションでいたい。だから、日本人はランキングが好きだったり、メディアは街頭インタビューを撮影して大衆の声(=正解に近い発言)を使うわけで。

自分のモヤッとした感情を、誰かが代理で発言していたら、そこについ乗っかっちゃう。自分の考えが正解であると信じたいから。

要するに「みんなと同じことを言ってれば正しいんだろう」という思い込みがある、ということですね。実際、それはあると思います。

ですが、これが誤謬であることは言うまでもありません。多数派が間違っていること事例など枚挙に暇がありません。

ところで、多数派信仰が事実ならば、なぜ野党支持者は多数派から嫌われている野党を応援しているのでしょう。

これも答えは簡単で、①彼らの周りでは野党支持が多数派。②マスメディア等が反政権的な報道をしている。③大学教授や弁護士など権威ある人に野党支持者が多い。

実際、彼らは、自民党を支持する人が40%もいることが信じられないと言うし、無党派層が立ち上がれば無党派層は全員野党に入れると信じています。

Twitterは恐ろしいツールで、自分の意見に近い人ばかりフォローしていると、自分の意見が多数派であるような錯覚を受けます。いわゆるエコーチェンバーですね。そうやってどんどん先鋭化していって、平均的な世論から自分が離れて行ってしまう。しかもエコーチェンバー状態にある人はそのことに気付くことはほとんどない。

ところで、きゃりーぱみゅぱみゅさんの件について少しだけ反論があります。きゃりーぱみゅぱみゅさんは別に芸能人だから責められたわけじゃないと思います。芸能人であっても、法案の趣旨をきちんと理解して意見発信をされたなら、ああまで批判されることはなかったと思います。

しかし、きゃりーさんは、それまで一切政治的発言をしてきてなかったのに、唐突に「#検察庁法改正案に反対します」とだけツイートして、この法案の何が問題なのかとか、あるいは、なぜ反対なのかということは、どこかから拾ってきた画像1枚貼っただけで、自分の言葉で説明されることはありませんでした。

これは、たとえファンであっても違和感を持ちますし「突然どうした?」と思うなって言うほうが無理な相談です。

当然、きゃりーさん自身の言葉で説明してほしいと思う人は大勢いたと思いますし、「こいつ何も分かってなくて誰かに言われてやってるだけだろ」という意地悪な見方をする人も大勢いました。正直に言えば、私もその1人です。ただし私はきゃりーさんに直接返信するというようなことはしてません(私のアカウントが凍結していましたし)。

で、そういう反応に対してもきゃりーさんは「芸能人だからって馬鹿にするな」みたいなことを言うだけで、やはり法案の何が問題なのかを自分の言葉で語ることはなかったので、結局のところ、彼女は何も理解していなかったのだと思います。彼女自身、「信頼できる人に言われて投稿した」みたいなことを言ってましたので、最初に思った通り、誰かに誑かされてツイートしてしまったのでしょう。

つまり、芸能人の政治発言が悪いのではなく、これは芸能人に限った話ではなく、また政治に限った話でもないですが、一般論として、よく知らない話を安易にツイートしてはいけない、という問題だと思います。

芸能人の政治発言はどんどんするべきだ!と言ってた人達は、米国大統領選は不正選挙だった!これからトランプが巻き返す!みたいなことをツイートしていた芸能人のことを、どう思っているのでしょうか。

政治発言とデマは違うと言うかもしれませんが、よく知らないことを安易にツイートすれば、デマを発信してしまう可能性は高いです。きゃりーさんの「信頼できる人」がもしもQアノン信者だったら、きゃりーさんは、その人の言うことを信じて「バイデン不正選挙許さない」とツイートしていた可能性が高いと思いませんか?

そういう、知識の乏しさ、リテラシーの危うさが、きゃりーさんの発言から強く感じられたために、批判されたのであって、それを「芸能人は黙ってろ」みたいな主張と曲解されるのは、ちょっとあまりに酷い印象操作だなあ、と思わずにはいられません。


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