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「尊厳死」「命の選別」「優生思想」どれも全部べつべつの議論ですから、ごっちゃにするのやめれ。

なんかここ最近、この手の話題(と、一括りにしてしまうことも問題があるが)が尽きません。

きっかけとなったのは、7月3日に大西つねき氏が自身のYouTubeチャンネルにアップロードした動画(現在は削除済み)の中での大西氏の「命の選別」発言。

そして、7月23日に医師が逮捕された「ALS嘱託殺人」事件。時系列からも明らかだと思うが、大西氏はこの事件を受けてあのような発言をしたのではなく、単に「病気と命にまつわる話題」が立て続けに出てきただけである。

嘱託殺人事件は、逮捕されたのが23日というだけで事件そのものは昨年に行われたものなので、大西氏が実はこの医師と知り合いで、事案を前から知っていた、という可能性もゼロではないが、まあ普通に考えてただの偶然だろう。

そして、嘱託殺人については以前から専門家の間でもさまざまな議論があった問題であり、今回の件を純粋に犯罪として扱うのはいささか抵抗がある。

その上で言いたいことだが、SNS上での議論は、両者がごっちゃになってしまっているきらいがあると思う。

以前も書いたが、大西氏の発言は、トロッコ問題であって、尊厳死の問題ではない。また優生思想とも関係がない。優生思想というのは、優秀な遺伝子を選別しようという思想のことであって、老人だから遺伝子が劣っているとか、若者だから遺伝子が優れているなどということはない。遺伝子は加齢によって変化も老化しないのだ。また、「老人は子孫を残せないから」みたいなことも大西氏は言ってない。言ってないことを勝手に脳内で補って他人の主張をねじ曲げるのはやめるべきだ。

また、安楽死の件については、安楽死賛成派の間でも、今回のケースは安楽死ではなく単なる殺人だという意見が多いように思う。私は詳細を知らないし、当事者でもないので意見は保留させていただくが、安楽死反対派の中には「安楽死を認めると邪魔になった人が早く死ねと圧力をかけられたり、勝手にサインされて殺されてしまう」みたいな懸念を持っている人がいる。その懸念も分からないでもないが、手続きを厳格化するなど、やり方はいろいろあると思う。

また、優生思想についても先日記事を書いたが、どうも最近、優生思想という言葉が独り歩きしているというか、単に「ナチス」「レイシスト」等の言い換えとしてしか使われていないというか、論敵にレッテルを貼って悪魔化する目的でしかこの言葉が使われていないように感じる。そのため、「優生思想」という言葉を使っている人を見ると、それだけで身構えてしまう。左派リベラルの人はこうした言葉を好んで使いがちだが、こうやって相手にレッテルを貼って悪魔化することは分断と対立を深めるだけで、建設的な議論にとっては有害無益なことである。ANTIFAがファシストと見分けがつかないほど全体主義的で暴力的であるように。

「命の選別」の問題にせよ「尊厳死」の問題にせよ、反対派の言っていることにも一理あり、賛成派の言っていることにも一理あり、答えの出ない問題、解のない多元方程式のように、私には思える。こういうときは、無理に結論を出そうとしないほうがいい。どうせ自分が結論を出さなくても結論を急ぎたがる馬鹿は大勢いるのだから。


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