大豪寺勉の孤独な闘い
(ハァ…ハァ…)
嫌な汗がとめどなく流れる。
(なんで…あの時…)
悔やんでも、もう遅い。
(進め…とにかく進むんだ…)
そう、私は今…
腹 が 痛 い 。
この大豪寺勉、自分で言うのもなんだが輝かしい道を歩いてきた。
スポーツ万能、容姿端麗、難関校を常にトップで卒業し、誰もが羨む大企業で出世コースを倍速で歩いている。
そんな私が下着を汚すなど…
閑静な住宅街、駅前のコンビニから自宅までトイレを使えるような施設はない。
帰還不能点は先ほど超えてしまった。
この状況で20m余計に戻る事は200m加算されるに等しい。
…意味のわからない計算だが、多分そうだ。
「クソッ(※駄洒落ではなくマジのやつ)…見栄を張ってこんな所に越してくるんじゃなかった…」
私は身をよじりながら角を曲がる。
[この先、工事中につき迂回お願い致します]
最短ルートを封じられた私はお辞儀をする作業員のイラストを睨みながら、必死に別ルートを検討し始めた。
【続く】