ON YOUR MARK
「どうして俺なんだ⁈」
追っ手に銃弾を撃ち込み、繰り返す。
「どうして俺なんだ⁈」
簡単な仕事のはずだった。
偶然舞い込んできた楽な仕事に妥当な報酬…疑わしいところは何もなかった。
ヤバい荷物でもなかった。
セキュリティは問題なくクリアした。
何より”もう俺は荷物を持っていない”。
この奇妙な追跡劇が始まったのは荷物を届けた後だ。
荷物を狙うのなら、届ける前にいくらでも機会があったはずだ。
狙いは俺、そうとしか考えられない。
幸いなことに追っ手の男達は強くはない。
荒事に慣れていない俺でも何とかなる…だが、いつまで?どこまで追ってくる?
呆然と見下ろすと、4人目の男の胸にある「T」の刺青が目に入る。
追っ手の男達は皆、不気味なほど似通っていた。
同じ文字が彫られていたか?
いや、違う。違った!
それが唯一の手がかり。
思い出せ…思い出せ…今までの男達には何と書いてあった?
俺は銃を再装填し、再び走り出した。
【続く】