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スポーツベッティングの導入の功罪

 最近、プレミアリーグにおけるスポーツベッティングの導入による問題がよく話題になっています。

 大きなもので言うと、ブレントフォードに所属していたイングランド代表FWイヴァン・トニーがベッティングサイトにて自身のチームの負けに賭ける等による賭博規則違反で罰則を受けています。
ウエストハム所属ブラジル代表MFルーカス・パケタもイングランドサッカー協会(FA)から賭博規則違反の疑いで告発されています。

 では、スポーツベッティングの導入によって、リーグ全体の経済どのような影響を受けているのでしょうか?


具体的な経済効果には以下のようなものがあげられます。

1. 広告収入の増加

 スポーツベッティング企業は、プレミアリーグのチームやスタジアムに多額の広告費を支払っています。現在では多くのサッカーチームはベッティング企業をスポンサーにしており、これがクラブ運営における収益源となっています。
 例えば、現在のブレントフォードの胸スポンサーである「Hollywood bets」は南アフリカのオンラインカジノ会社であり、2年契約年間500万ドル(7,500億円)と巨額の契約を結んでいます。
 ブレントフォードFCの2023年6月期広告収入は18.9Mユーロ(32.6億円)であり、売上全体166.5Mユーロ(287.6億円)の11.3%ほどであり,重要な収入源と言えます。
 このようにスポンサー契約はクラブの財政を支え、選手補強やインフラ整備に使われます。

2. 視聴者数と放映権の価値向上

 自身のお金が絡むことにより、試合観戦をより主体的なものにし、多くの視聴者を惹きつけます。これにより、放映権の価値が高まり、テレビ局やストリーミングサービスからの収益が増加しています。スポーツベッティングによる視聴者の増加は、特にリアルタイムでの視聴を促進し、リーグの全体的なメディア収入にもプラスの影響を与えています。
なお、前述したブレントフォードFCのCentral Distributionリーグの放映権リーグ全体で獲得されるスポンサーシップ契約からの収入等の中央配分収入)も135.1Mユーロと、売上全体の81.8%を占めており、いかにクラブにとって放映権収入が大きい存在かわかります。

3. ベッティング会社の雇用創出と税収

 ベッティング産業の成長により、関連企業はプレミアリーグを通じて多くの雇用を生み出しています。マーケティング、技術サポート、データ分析、顧客サポートなど、様々な職種での雇用が増加しています。さらに、ベッティング業界からの税収も政府にとって重要な収入源であり、この点でも経済効果が見られます。

4. 地域経済への影響

ベッティングに興味を持つことで試合当日のスタジアム観客が増えることが見込まれます。これによりスタジアムへの来客が増えるということは地域経済にも波及効果があり、観客数の増加による飲食店や宿泊業などの収益にもプラスの影響を与えます。


5. ギャンブル依存症リスク

 ベッティングによって試合への関心が高まり、ファンのエンゲージメントが強化される一方で、ギャンブル依存症などのリスクも指摘されています。
 スマートフォンを利用したオンライン賭博の増加により、いつでもどこでも賭けることが可能になり、依存症を引き起こす要因となっています。
 2022-23シーズンには、ギャンブルを理由にイギリスの国民保健サービス(NHS)に相談した患者数が過去最多の1,389人に達し、2年前の約2倍に相当しているとのことです。
 正直これが多いのか少ないのかわからないですが、プレミアリーグの視聴者は全世界にいるため、相当な数の人が依存症になっている可能性があります。


 イギリス政府ギャンブル法の見直しを進めており、2026-27シーズンからはクラブのシャツ胸部にベッティングブランドの広告掲載を禁止する方針を発表しました。

引用:https://www.goal.com/jp/

 総じて、プレミアリーグにおけるスポーツベッティングの導入は経済的なプラス効果をもたらしており、リーグやクラブにとって重要な収益源となっている一方で、依存症対策や倫理的課題についても注目されています。

 日本では、スポーツベッティングが禁止されている理由は、大きな理由の一つとして、ギャンブル依存症への懸念が挙げられます公営ギャンブル(競馬、競艇、競輪、オートレースなど)だけが特例として許可されていて特別扱いされているのもありますが…)。


ただ、これだけどこの駅前にもパチンコがあったり、競馬や競艇が浸透している国もそうそうないので今更ギャンブル依存症への懸念をあげる必要はなく、その対策も比較的今までの経験からできると考えられます。

お金があるところに経済は発展するため、日本のスポーツビジネス発展のため、日本もスポーツベッティングの採用について前向きに考えていいのかもしれません。


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