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賛成39% 反対59%


あなたは東京五輪・パラリンピックの開催に賛成ですか、反対ですか?

こんな世論調査を多くのマスメディアが行っているが、「視聴者の関心を引きつける」以外にどのような意味合いがあるのだろう。

「RDD方式」と呼ばれるコンピューターで無作為に電話をかけて調査する方法を用い、一定のサンプル数があれば統計学上は「全数調査をした場合とほぼ同じ割合の結果が得られる」のだろうが、仮に


国民の39%が開催に賛成、59%が反対

 
という結果がでたとして、「国民の多数は反対している。五輪は中止すべき」といいたいのか?


そもそも回答者のその時の状況によって考え方が大きく変わるような場合は、世論調査なんかしても意味がないのでは?


例えばの話。サンプル調査数が1000であったとして、最初の500サンプルが集まった時点までは賛成・反対の割合が半分づつで均衡していても、その瞬間に

「プロ野球 2球団14人が試合中にコロナ感染 5人が重症」

との臨時ニュースが流れれば、その後の500サンプルは反対が大多数を占めるのではないだろうか。

読売新聞が5/7~5/9に実施した全国世論調査では、今年夏の東京五輪・パラリンピックについて


中止する 59%
観客数を制限して開催する 16%
観客を入れずに開催する 23%


とあるが、これはあくまでも「調査をした瞬間に知らされている情報を元にした国民の世論」でしかない。

大阪府のGW周辺の1日あたりのコロナ感染者数は


4/27  1230人
4/28  1260人
4/29  1171人
4/30  1042人
5/1  1260人
5/2  1057人
5/3    846人
5/4    884人
5/5    668人
5/6    747人
5/7  1005人
5/8  1021人
5/9    874人
5/10  668人


と遷移している。このころの大阪の感染者数は東京を上回っており、全国的にトップニュースになっていた。緊急事態宣言にあわせ、「大阪府の新型コロナウイルスの重症病床使用率、初の100%超え」のニュースが大きく流れたのもちょうどこのころ、5/5のことである。

今回の読売新聞の全国世論調査は5/7~5/9に実施されており、このニュースが調査に与えた影響は大きいはずである。

この統計がどのような状況下でなされたか、その情報を欠いたまま数字だけが一人歩きしては意味がない。世論調査ではなく、世論創作になってしまう。もし、

五輪を中止した場合、IOCやスポンサーへの違約金などで2兆円、機会喪失などの経済損失額を含めるとトータルで10兆円ほどが見込まれます。この損失がもたらす税収不足・さらなるコロナ対策費を消費税で補填する場合、消費税を3%アップして13%にする必要があります。


と政府が財務省の試算を発表したあとに世論調査を行えば「開催すべき」が増えるであろうし、その数日後に


五輪を開催した場合、観客数を50%に制限した場合は東京を中心とした開催地のコロナ感染者数は1日あたり1万人、無観客でおこなった場合は選手・大会関係者に限定されるので最悪でも約10~20人程度と予想されます。東京で1万人のコロナ患者が出た場合、病院機能は完全にマヒ状態となり、その場合はコロナ以外の救急患者を含めて1日あたり100人ほどが治療を受けることなく死に至ると予想され・・・


と政府が厚生労働省の試算を発表した後に同じ内容の世論調査すれば間違いなく「観客を入れずに開催する」が増えるはずである。

 

政府には手持ちの情報を国民に対して出すことも、隠すことも出来る。情報を出す順番を変えることも可能だ。

マスメディアも世論調査と称して「国民の意思」を形成することが可能だ。今回の読売新聞の調査では、東京五輪の開催について

 ・中止する
 ・観客数を制限して開催する
 ・観客を入れずに開催する

の三択であったが「延期する」の選択肢があった場合、結果はどうなっていただろうか?「選手間の接触が少ない競技に限定して部分開催」という選択肢があったら?

勘違いしないで欲しい。「政府が情報をコントロールしている」といっているのではない。読売新聞の実施した世論調査を否定しているのでもない。読み手の側も書かれているものをただ鵜呑みにするのではなく、その背景に何が隠れているかを考えて欲しいといっているのである。



テレビのワイドショーなどの娯楽番組は別にして、報道機関を名乗るマスメディアには国民の不安をあおるような記事ではなく、あくまでもニュートラルで根拠のある情報提供に徹してもらいたい。我々国民が情報を得る手段は政府の公式発表以外には、マスメディアしかないのだから。

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