三年先の稽古

相撲の世界には、「三年先の稽古」という言葉がある。

明日の勝負に勝つためではなく、3年先に大輪の花を咲かせるための稽古をしろという意味合いの言葉だ。

まだ若い力士が、明日勝ちたいからと言って、小手先のテクニックばかり磨くのではなく、明日負けたとしても、自分の相撲を確立するための基本をしっかり身に付けることが大事ということだ。

これは、ランナーの世界でも同じことだと思う。

目先のレースばかりにとらわれて、身体に負荷をかけるだけではなく、将来勝つための土台作りもしていかなければならない。

すぐに結果が出なくても、負けたとしても、今後につながるトレーニングを続けていくことが大事だと思う。

しかし、私は欲張りなので、明日勝ちたいし、3年後にも勝っていたい。

そうなると、明日勝つためのトレーニングと、3年後に勝つためのトレーニングの両方をやっていかなければならないということになる。

明日勝つだけでも大変なのに、更に3年後に勝つためのトレーニングが必要だとしたら、ときにはトレーニングに矛盾が生じることだってある。

3年後に成果が出てくるようなトレーニングというのは、すぐに実るわけではない。

距離を踏んだり、体幹を鍛えたり、ときにはしっかり休んだり…

そしたら、明日は勝つことが難しくなるかもしれない。
身体に余計な負担をかけることだってあるかもしれない。

現在の利益と、未来への投資を両方取ろうとするのは、思っている以上に難しい。

3年後とは言わなくても、現在順調にやれていること、うまく進んでいることというのは、昨年や一昨年の取り組みの活動の成果だと思うし、逆に、現在うまくいっていないことや足りていないことというのは、昨年、一昨年にやってきたことが良くなかったり、積み重ねられていなかったりするのだと思う。

それでも、3年後のことばかり考えていたって、今すぐに結果を出さなければ競技を続けることができなくなるかもしれないし、明日勝つことだって疎かにはできない。

特に、マラソンや駅伝というのは年間を通じてレースがあるため、どっちもやるというのは、本当に難しい。

しかし、新型コロナウイルスの影響で軒並みマラソンが中止・延期となっている今なら、日頃できなかったことをやるチャンスなのかもしれない。

長い距離を走ることでも、スピードを磨くことでも、ゆっくり休むことでもいい。

今なら、3年後に成果が出てくるようなトレーニングができる。

そう思えば、少し前向きになれると思う。

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牛山純一
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