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GLAYが自然公園法に違反したかどうかは「グレー」なので動画削除は不要

GLAYが国立公園内でライブ映像を撮影した際に必要な許可が取れていなかったという指摘がされている。GLAYは北海道を元気付けようとしてくれたことなので、なんだか残念であり、ぼくは動画を削除する必要はないと思うので、その理屈を記しておきたい。(※タイトルはダジャレですが、中身は真面目に書いています。)

まず、報道によれば、「自然公園内の特定の区域で工作物を設置する際は許可が必要」だが、それがされていなかったそうである。

法律の規定の確認

本当にそうかを確認するため環境省のホームページを見てみたところ、自然公園法の20条の規定がそれにあたるようだ。

(特別地域)
第二十条 環境大臣は国立公園について、都道府県知事は国定公園について、当該公園の風致を維持するため、公園計画に基づいて、その区域(海域を除く。)内に、特別地域を指定することができる。
2 第五条第三項及び第四項の規定は、特別地域の指定及び指定の解除並びにその区域の変更について準用する。この場合において、同条第三項中「環境大臣」とあるのは「環境大臣又は都道府県知事」と、「官報」とあるのは「それぞれ官報又は都道府県の公報」と読み替えるものとする。
3 特別地域(特別保護地区を除く。以下この条において同じ。)内においては、次の各号に掲げる行為は、国立公園にあつては環境大臣の、国定公園にあつては都道府県知事の許可を受けなければ、してはならない。ただし、非常災害のために必要な応急措置として行う行為又は第三号に掲げる行為で森林の整備及び保全を図るために行うものは、この限りでない。
一 工作物を新築し、改築し、又は増築すること。
二 木竹を伐採すること。
三 環境大臣が指定する区域内において木竹を損傷すること。
四 鉱物を掘採し、又は土石を採取すること。
・・・・

これを見る限り、確かに「工作物」を新築するには許可が必要と書いてある。報道のとおりである。

でもここで気になるのは、GLAYが熱唱している台が「工作物」かどうかという事である。

工作物とは何か確認

動画に写っているこのステージ、政治家が街頭演説するときのビールケースと比べたらしっかりしたもののようだが、まあ、広めの机を持ってきたのとそう変わらない気がする。つまり、家具と言えなくもない。

実際に、報道によれば「原状回復が必要な地面に穴や、草木が倒されたりという状況はなかった」そうであるからなおさらだ。

そこで「工作物」の定義を確認してみたが、この法律の中には定義されていないようだ。そうであれば、社会一般的に何が工作物かということになるが、それをとりあえずWikipediaで調べてみる次のように書いている

Wikipedia
建築関連の法律等で、門・塀・電柱・建物・トンネル・溝渠など、地上または地中に、人工的に製作し設置された建造物等。

Wikipediaによると「工作物」とは「門・塀・電柱・建物・トンネル・溝渠など」ということであり今回のステージがこれらにあたるとは社会常識的には言えないと思う

北海道の説明を確認

次に環境省のホームページに、「工作物」に関しての説明があるかとみてみたが、何も書いていないようで、もう少し調べてみると、北海道のホームページ(PDF)に解説が載っていた。

【特別保護地区、特別地域、海域公園地区の行為規制】
特別保護地区、特別地域、海域公園地区内では、次のような行為を行う場合、許可が必要です。
(許可を受けずに行為を行った場合、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されます。)
○建築物(屋根及び柱又は壁を有する工作物)や道路、橋、鉄塔、運動施設、塀・柵など人為的 に造られる工作物(テント、プレハブ含む)。
○仮設(設置期間が3年を超えないもの)の上記建築物、工作物。
工作物の新築・増改築** 【道路、運動施設、鉄塔、電柱、送水管など】**

ここでもやはり「道路、橋、鉄塔、運動施設、塀・柵など人為的 に造られる工作物(テント、プレハブ含む)。」とか「 【道路、運動施設、鉄塔、電柱、送水管など】」となっている。

これであの数時間だけ置かれたステージが「工作物」必要というのは少し無理があるような気がする

そもそも何のための許可

最後に、そもそも何のために許可がいるのかを確認するため、自然公園法の目的である第1条を見てみたら、次のように書かれていた。

(目的)
第一条 この法律は、優れた自然の風景地を保護するとともに、その利用の増進を図ることにより、国民の保健、休養及び教化に資するとともに、生物の多様性の確保に寄与することを目的とする。

また、北海道のホームページにはこう書いてある。

自然公園内は、自然環境と風致景観を保護するために、特別保護地区、特別地域、普通地域 及び海域公園地区に区分され、自然や景観に影 響を及ぼすおそれのある行為が規制されており、 行為を行う際は許可・届出が必要です。

つまりは、自然公園はみんなで利用して欲しいけど、自然環境を傷つけないように、先に届け出てくださいねということである。

法律の趣旨から考えれば、自然を傷つける可能性のあるものはしっかり許可の中で指導しますよということなのだと思う。

工作物なのか

今回のステージのようなものであっても、土を少し掘り返して設置することもあるので、確かに許可の中でしっかり見ておきたいのはわかる。

ただ、今回のステージは「工作物」とまで言えるかどうかが非常にグレーであり、そもそも事前に相談をした時に、制作会社も北海道もこれを見逃してしまったのは仕方ないのではない。こんなグレーなものについて、ここまで厳しく指摘して、また報道される必要はないのではないだろうか。

はっきりと法違反とまでは言えないように思うし、結果として、自然景観が傷付けられることもなく、誰も何の被害も受けていないのだから、大騒ぎをせずに、「今後は気をつけましょうね」と、お互いに話をしておけばいいことである

単なる手続きの際のやり取りの不手際であり、わざわざ報道するような内容ですらない。

二つの結論

長々と書いてきてしまったが、言いたいことを二つにまとめたい。

まず一つ目。まず、理屈を抜きにして、ぼくの感情として、日本を元気にしようと頑張ってくれたGLAYは、何ら非難されるべきではないと思う。

批判する人は、先に法律をきちんと確認をすべきだと思う。

そして二つ目。上記のようにしっかりと理屈を整理した上で、この動画は、法律の趣旨に何ら反していないと思う。

なぜなら、この動画は、自然公園法の趣旨を何一つ逸脱しておらず、むしろ完全に合致している。まさに「優れた自然の風景地を保護しながらその利用を増進し、国民の保健、休養及び教化に資しているもの」だ。

だから絶対に動画は削除しないで欲しい。

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