乾杯した時だけ、なぜかビールが美味しい
合法的にお酒が飲めるようになって(つまり二十歳を超えて)すでに20年近く経過するが、ぼくはいまだにビールが苦手だ。家に偶然貰い物のビールがあった時などに開けて飲んでみるのだが、あの苦味と炭酸と匂いに途中でまいってしまう。
でも実はこれには条件がある。
ビールが苦手なのは「家で飲んだ場合」のみなのである。
というのも、宴会などに参加してお店で飲むビールは、あの苦味と炭酸と匂い全てが美味しいと感じられるのだ。
最初は自分でも信じられなかった。だって、ある日の飲み会で美味しくビールを飲んで、次の日にスーパーに行って「今日も美味しくビールを飲もう」と缶ビールを買って帰ったら、その日の夕食では最後まで飲み切れないのだ。
最初は樽のビールと缶ビールの違いかと思い、色々と調べてみた。確かに、炭酸の加減で口当たりが違ったりすることはあるようで、それらの情報をもとに、お店と同じジョッキにして、継ぎ方を工夫し、泡の発生する装置まで導入してみたりしたのだけれど、やっぱり家で飲むビールはおいしくないのだ。
だとすれば、食べ物つまりは「当て」の違いかと思い、これもいろんなものを試してみたが、例えばテイクアウトしてお店と同じものを食べて、同じビールを飲んでいても、美味しく感じないのだ。
ビールも同じ、食べ物も同じ、そうなってくると結論は一つしかない。
美味しいかどうかは、一人で飲んでいるか否かなのだ。
実は我が家は、妻がお酒を一滴も飲まないので、家でお酒を飲むときは一人で缶ビールを開けているのだ。そしてぼくは、外に一人でお酒を飲みにいくことなどもまずない。つまり、お店でビールを飲むときは、必ず誰かと一緒にいるのだ。
一人でご飯を食べると美味しくないというのと一緒で、どうやらぼくはみんなとでビールを飲んだ時だけ美味しく感じるように舌ができているようだ。
つまり、ぼくにとっては、美味しいビールと乾杯は必ずセットなのだ。
ここ半年ほど、仲間と宴会ができないこともあって、長い間ビールを飲んでいない。いや実は、こっそり家で試してみたのだけれど、やっぱり美味しく感じなかった。
だから、1日も早く、みんなと一緒にビールジョッキを片手に大きな声で乾杯をしたい。
その一言で、あの苦味と炭酸と匂いが、深い味わいと適度な刺激と最高の香りに変わるのだから。
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