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退職金なしの経験から言える3つの利点

新卒で入った会社には退職金がなかった。といっても正確に制度の説明を受けたわけではない。入って1、2週間経ったとき、昼休みに先輩の女性と世間話をしていると突然「この会社退職金ないの知ってた?ありえないでしょ。3年頑張ったらやめないとだめよー」と言われたのだ。彼女は笑っていて、軽口を叩いたつもりだろうが、ぼくは絶望的な気持ちになった。

新卒で入ったブラック企業

そもそも、出社1日目から上司の怒号が飛び交い、GWに「カレンダー通り」3連休をとるとなぜか糾弾されるような、かなりブラックな企業だった。他にも、お盆休み無し、昇給は年1500円などの情報を得て、いろいろ気持ちが凹んでいるところに来たこの言葉で、ぼくはこの日から、3年後の3月31日までの日々を数えるようになった。

当時退職金のことをしっかり調べていたわけではない(そもそも貰えないものを調べても仕方なかった)が、少なくともそれは「社員の老後のための大切なもの」という認識であった。働いている間もブラックなのに、退職後も幸せな生活が保証されない「そんな会社いる意味がない」と思うのは当然だった。

退職金がない会社の働きかた

情報をくれた先輩の女性(その3ヶ月後に退社)がそうであったように、その会社の社員の会社に対する思いは本当に低かった。特にわたしがそれを実感していたのは、散らかった倉庫である。だれもが、早くて1年(最短3日の人もいたが)長くても5年で辞めてしまうため、だれも倉庫の整理を本腰を入れてしようとしないので、中はグチャグチャ。

ほかにも、通年行事のマニュアルが整備されていなかったり、過去の資料をすぐに捨ててしまったり、節々に「短期決戦」を意識した仕事をしている人が多かった。同期の会話も「お前辞めるの?」ではなく、「お前はいつ?」と、やめることは前提で話をしていた。

退職金なし経験から言える2つの利点

もちろん、その会社をやめる人の全ての原因が退職金にあったとは思わないし、例えば年棒を上げることで退職金に代えることもあり得ると思う。ただ、新卒で退職金のない会社に幻滅したわたしの経験から、退職金は次の2点において、有用だと思う。

1 会社が従業員のことを考えくれていると感じられる。

2 退職金を預けている会社が潰れては困ると感じられる。

1については、よく考えてみれば退職金の支払額を上乗せして払ってくれた方が、従業員の自由度が増すように思えなくもないが、誰もが老後に備えて一定額を貯蓄している現代において、自動的に、しかも税制上有利に会社が一定額をプールしていてくれる制度は非常にありがたい。実際に退職金がないという情報を聞いたことが転職を考えるきっかけになったぼくにとって、「いい会社である」と感じられる大きな要素の一つであると思う。

2については、退職金は、会社にいわばお金を預けていることになることになるわけだから、その会社のために頑張る気になると言うことである。今回の投稿にあたって初めて調べてみると、退職金は会社が倒産しても一定額を保証される制度があるようであるが、それでも、行動経済学等でも言われているが、実際に手にしているお金と手にできると約束されているお金は全く価値が違うのである。つまり「会社が潰れたら退職金が貰えないかもしれない」という思いもあり、会社に貢献できると思うのである。

妻を見ていて思う利点

あと、これは3つ目と言っていいかわからないが、妻を見ていて思うことがある。

妻はある会社にパートとして10年ほど働いていて、長く働くと昇給もあるのだが、僕の扶養家族に入っている関係で、昇給すると不利になってしまう。そこで、その分を積み立てて、退職金で渡すと言う制度があるのだ。時給のアップは毎年40円ほどで、それほど大きくないのだが、それが年々積み重なって、すでにかなりの額になっているようだ。

正直、職場の仕事は忙しく、人間関係も色々と大変そうだが「やめる?」と聞くと「まあ退職金もあるしねえ」と返してくる。妻の言動を見ている限り、ぼくがためているT-POINTと同じように扱っているようである。正直、5000ポイントたまろうが、1万ポイントたまろうが、普段の給与収入からしたら微々たるものであるが、ついつい残高をチェックしてしまう。つまり、ためること自体が楽しいのだ。

だから退職金の3つ目の利点は

3 ポイントカードと同じ醍醐味を感じられる。

ことだと思う。

実はこの退職金、毎月の給与明細にきっちり合計額が明記されているそうだ。だから、毎月、給与明細を見ながらほくそ笑む妻の横顔を見て「退職金っていいなあ」とぼくは思うのである。

#COMEMO #退職金制度は必要ですか

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