【気圧に注意】わんちゃんの気象病はさまざまな持病にも影響する…!
◎獣医師執筆◎
雨が降ったり、台風が近づくと体調が悪い…という経験はありませんか?めまいや吐き気、頭痛などがよくみられる症状ですが、気圧の変化によって体調が悪くなってしまうことを気象病と呼びます。実はわんちゃんにもこの気象病はあります。おうちのわんちゃんは雨の日や台風が近づいた時に様子が変わっていることはありませんか?今回はわんちゃんの気象病について解説いたします。
気象病ってなに?どうして起こる?
気圧が下がると頭痛がする・めまいがするなど、気圧や湿度などの変化によって身体の不調を感じることがあります。なかには「雨が降る気がする」と天気の変化を言い当てられる人もいますよね。気圧の変化は体感で感じることができるものなのでしょうか?
気圧が1hPa(ヘクトパスカル)低くなるとなんと海面が1cm上がります。普段生活する中において、この気圧差を体感できる人は少数かもしれませんが、私たちの身体は常にこの気圧の差に対応しようとしています。
気圧の変化を感知するのは、耳の奥にある内耳(ないじ)という器官です。内耳はセンサーのような役割をしていて、耳で受けた情報を脳や神経に伝えています。この内耳が敏感だと、わずかな気圧の変化でも脳に対して過剰に伝わってしまいます。内耳は体の平衡感覚をつかさどる器官でもあるため、乗り物酔いをしやすい人は気象病である可能性が高いと言われています。
そもそも気圧とは?
私たちの周りにはいつどんな時も空気が存在しています。この空気にも、実はしっかりと重さがあります!つまり私たちは、常に空気の圧力を背負っているのです。これが、気圧と言われるものです。
ちなみに…私たちの周りにある空気が少ない状態を低気圧、反対に多い状態を高気圧と言います。
わんちゃんにも気象病はある?
気象病は、わんちゃんにも同様にあります。特にわんちゃんが人より気圧の変化に敏感だという根拠はないとされていますが、わんちゃんも人と同様に、気圧の変化の敏感さには個体差があります。気象病の影響の大きさは、わんちゃんの性別・年齢・持病にも左右されます。
気象病の影響を受けやすい病気って?
●てんかん
脳内で異常な電気信号が起こることで発作を繰り返す病気をてんかんと呼びます。てんかんを持つわんちゃんには特定のきっかけに反応し、てんかんを起こしやすい子がいます。具体的にはチャイム音や、かみなりの音などがあります。そのようなきっかけの中のひとつとして、気圧の変化をきっかけにてんかんを起こすことがあるわんちゃんもいます。
●水頭症
水頭症は、脳室内の脳脊髄液が過剰に貯留したため、脳室が正常よりも大きくなってしまった状態をいいます。チワワ、ミニチュア・ダックスフントなどが水頭症のおこりやすい犬種で、大型犬や猫にはあまり見られません。気圧が下がると脳圧が上がるため、症状が悪化する場合があります。水頭症の診断を受けている子は獣医さんに相談してみましょう。
●そのほかに自律神経が関与する症状
そのほかにも、自律神経に関与する様な症状が起こりうるとされています、具体的には、めまい、ヘルニア、神経痛、関節炎、リウマチ、だるさ、食欲不振などがあげられます。
うちの子気象病かも?確認できる?
そういえば、台風や雨の日にはいつもより少しダルそうにしているかも?と思ったらぜひ気圧を確認してみましょう。気圧の変化による体調不良が起こりそうな時間帯の確認ができるアプリやサイトがあります。残念ながらわんちゃん用ではありませんが、わんちゃんの場合も同様に使っていただけます。気圧が下がっている時間帯のわんちゃんの様子を記録し、観察してみましょう。以下のような様子の変化があったら要注意です。
・ご飯を残す
・いつもより寝ている時間が多い
・なんとなくだるそうで元気がない
・散歩に行きたがらない など…
このような症状がある時は、わんちゃんがゆっくりと過ごせる環境を整えてあげましょう。心配だとは思いますが、必要以上に声をかけたり触ったり、無理にご飯を食べさせることはやめましょう。気圧の変化が戻れば、症状は自然と治まってきます。
しかしながら、
・吐いてしまう
・発作が起こる
・呼びかけに反応しない
・ふらついて転ぶ
・触ったり立ち上がる際にキャンと鳴く など…
このような症状があった場合は、様子を見ずに動物病院を受診してください。
記録をつけて備えよう!
病院でお会いした患者様に、ご自宅のわんちゃんが気象病とよく理解していらっしゃる方がいらっしゃいました。台風が近づくといつも具合が悪そうになるわんちゃんの様子に気づき、アプリを使って気圧をチェック、どのくらいの気圧でどのような体調変化が起きたかを記録し、気圧が下がりそうな前後で栄養管理をしたり仕事を調節してわんちゃんが快適に過ごせるようにしていただいてます。
わんちゃんの体調変化に1番早く気づけるのはいつでも飼い主様だなと感じます。ご自宅のわんちゃんは気圧の変化に敏感ですか?今回の記事がわんちゃんの気象病を考えるキッカケになったのであれば幸いです。
●ライター:いぬかい ゆうみ
獣医師の資格を保有
●編集:うしすけチーム