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子どもがいる駐在家庭、必読です。『赤ちゃんはことばをどう学ぶのか』【読書メモ】

ページ数 205

版元 中公新書クラレ
初版 2019年
4版 2024年

読書日:2024/12/10〜2024/12/16
メモ日:2024/12/17





ざっくり

赤ちゃんは言語を獲得するまでに、どのようなことを理解しなければならないのか。特にバイリンガル環境や日本語母語の赤ちゃんの英語習得に重心を置いて。
もう驚きとヒントの連続。
「赤ちゃん」とタイトルに入ってるけど、小学校低学年くらいまでのお子さんがいる方にはヒントになりそう。

…周囲で話されている言語がわからない、という状況に放り込まれれば、子どもも強いストレスを感じます。周囲が何を言っているのかわからないということにも驚くでしょうが、いったん使えるようになり始めていた「私の言語」が、ここでは役に立たないという発見もさぞショッキングなモノでしょう。

赤ちゃんはことばをどう学ぶのか p178

「小さなうちに母語以外の言語にも触れさせておけば、子どもは”母語と同じように”その言語もラクに素早くネイティブ並みのレベルで身につけられるのではないかしら」
よく聞くそのような考えは、どうやら大人の都合よすぎる期待のようです。

赤ちゃんはことばをどう学ぶのか p194


ここが刺さる駐在家庭は、第4章だけでも読んでほしい。
もし英語環境に悩みがあるなら、答えはたぶん書いてないと思うけどヒントにはなるんじゃないかなって。



覚えたいキーワード

ガバガイ問題


気になりポイント

[?]は疑問、[✳︎]は感想

まえがきの駐在家庭に刺さりそうなこと…!英語維持、とかバイリンガル、とか気にしてる方には引き込まれそう!
個人的にはバイリンガル育児には懐疑的寄りなんだけど、息子が日英環境でどんなふうに言語を培っていくかは気になってるので、興味をそそられる内容。



【第1章】赤ちゃんは本当に「天才」なのか


よく聞くLとRが聞き分けられないハナシ、大人の日本人はむしろ聞き分けテストは好成績 p32

大人の言語習得は、言語間の違いから難しい面もあるけど、母語をモデルとして音、単語、文法面でも土台となるのだ。赤ちゃんはまだ言語が何なのかさえも知らない。 p33

発話しないからって、学んでないわけじゃない。赤ちゃんは聞き続けている。p40



【第2章】まず、聞く

赤ちゃんは胎内にいるときから母語(母親が話すことば)を好む。24週くらいから聴覚がはたらくらしい p47

赤ちゃんも言語のちがいはリズムで聞き分けられる p52

同じ音が必ずセットで聞こえてくる=このかたまりは単語である、とわかる。音を切り分けるヒントになる p54

8ヶ月ではもうこの方法で単語を見つけられるようになってる!でも人が変わるとわからなくなっちゃうんだって p56

自分の言語で区別しない音は、12ヶ月くらいで聞き分けられなくなる! p66

聞き分けのためにオーディオ、ビデオで外国語を聞かせても、聞き分け能力の低下は止められなかった!外国語を話すお姉さんに遊んでもらった場合だけ維持された。p68
[✳︎]これは衝撃!テレビとか英語なのは英語獲得にはあまり関係ないかも?


生身の人間とのコミュニケーションの中で必要性やリアリティが感じられなければ、聞こえてくる音を言語として聞かない。区別される音をまなばないのだ p71


バイリンガル環境の赤ちゃんは、母音聞き分けについてできる→できない→できるのU字型で発達していく!
それぞれの言語のインプット量を、聞き分けに必要なほど経験できないからじゃないかということらしい p78
[✳︎]これも驚き。一回聞き分けられなくなる時期を経るなんて、すごく考えて言語獲得していってるんだなぁ
うちはバイリンガル環境というほどじゃないけど、英語に触れる量は多いと思うから、こんな発達をしていってるのかも


だいたい12ヶ月くらいで必要な音、不必要な音を区別するようになる、喋りだす子が多いタイミングでもあるのは偶然ではないのだ p81
[?]日英環境だと必要な音多いから、話しだすのは遅くなるんじゃないかな、関係あるのかな



【第3章】「声」から「ことば」へ


[✳︎]3章すごい全ページドッグイヤーする勢い

「声」と「ことば」と「意味」が繋がってないところから赤ちゃんはスタートしてる


指差しも最初は指した方向のモノを意図してるなんてわからない。一歳半くらいになったら、指されたモノを見つけられるようになる
そして自分も見てほしいモノを指差しするようになる p100

「指差しを理解する」「初めてのモノと対峙して迷ったとき、近くの人の様子を伺う」「単語を話しはじめる」
これらが同時期に起こる。「他の人とモノやトピックを共有する」という大きな発達の流れの中にある p103

ガバガイ問題の説明はこの辺に書いてある p107


例えばりんごを指して「これは?」と聞かれたら、大人は「りんご」と答えるけど、本来は「まるい」でも「赤い」でも「果物」でもあり得る。

でも多くの人は「これは?」と聞かれたら、「りんご」と答える。「果物」(上位カテゴリ)でもなく「フジ」(下位カテゴリ)でもない。この中間レベルを「基本レベル」という p112
[✳︎]これは不思議。なんとなく生きてても、大人はこの基本レベルの感覚を身につけているのが。


子どもに話しかけるとき、大人は助詞を抜かすことがある。
でも驚くことに15ヶ月くらいの赤ちゃんは、短い助詞は聞き取れるだけでなく省略しても良いことを知ってるし、助詞があればそれを手がかりにして、名詞とそれ以外の単語を区別している。
[✳︎]この事実やばすぎる。しかもここは実験ベースで書かれててとってもおもしろく読みやすい。 p128



【第4章】子どもはあっという間に外国語を覚えるという誤解について


母語が英語でない人の英語力と渡米時の年齢の関係。平均10年間住んでる人では、だいたい7歳くらいに渡米した人はネイティブ並みらしい p136

差がつくポイントは p137
・冠詞
・名詞の単数形、複数形
・動詞の活用
[✳︎]わたしが間違うポイント上位3つ…!

保育園生がいきなり言語が使えない園に入ったときの苦労がひしひしと感じられる。p140
[✳︎]最初は辛いだろうな。他の園児たちの助けも借りて、少しずつ習得していく様子はもはや泣ける

会話に参加することの難しさって大人の英語でもあるよね、トピックがわかるとこからハードルなんだもん p148

「子どもはすぐ現地語を覚える」は現地語が母語ではない親の思い込みの可能性あるな、現地の子と遊べてる場面をみてるだけだとね p152

研究結果では、ネイティブ並みの応答ができるのは、小学校までの子どもだと、3〜7年かかる。幅があるのは個人差があるから p153

なんか早く始めれば習得スピードが速いってわけでもないらしい p156

[✳︎]新しい環境になじむのは得意か、言語を学びたい動機が強いか、ということのほうが、始める時期の早さより関連しそうだな p158

[✳︎]p165はそれなすぎる。小さいときに第二言語に触れて、その後の母語の発達は?

海外滞在が長いほど、日本語力の偏差値(単語の知識、文章理解力)は下がっていく p166

特に10歳以上で移住した子どもは、けっこう良く日本語力が維持できる。小さい子は覚えるのも早ければ忘れるのも早い(実際は別にそんな早く覚えれるわけじゃない)p167

小さい頃から第二言語環境に入れられることになるなら、サポートがめっちゃ必要だなって話。
母語が出来上がってきてたり、英語の知識があれはそれを土台にとりあえずコミュニケーションを取ろうとはできるわけで。
子どもは覚えが早いから。でほったらかしにしちゃいかんなと。息子はどうなるかな。家でももう少し英語しないと、プリスクールとか通いだしたら辛いのかもな。
p171


【最終章】必要だから、学ぶ


小学校中学年以降は、母語の力が高いほど、新しく身につけた現地語の能力も高いらしい。p182
[✳︎]やっぱ英語力というより、まず思考力なんだろうね。言語学習においては。


…子ども自身が「2つの言語とも必要だ」と感じれば、子どもはバイリンガルに育つし、そう感じてくれなければ育たない、ということです。ただし、バイリンガルとはどのようなことか、またバイリンガルに育つとはどういうことなのか、については、まだまだ皆が期待しすぎている面があるように思います。

赤ちゃんはことばをどう学ぶのか p184


バイリンガル環境で育った大人のバイリンガルも、モノリンガルと同じ音の聞き分け方にはならない。 p186

「言語の維持」たとえばそも日本語の語彙が増えれば、その分英語の語彙も増やさないといけない。そんな努力のモチベーションは生活の中にあんまないよね。大変すぎる。 p190

子ども時代経験し、その後使わなくなった言語の影響は残るのか。いろんな結果の研究があるけど、ほーんのちょっと(発音が少し良いくらい)残るかも。あまり期待しない方がいいね。 p193


あー良いあとがきだー!書いてくださってありがとうございました!



読後感想

母語が日本語の子どもの英語習得への期待、駐在家庭だとどうしてもしちゃうよね。

でもやっぱり「複雑なことを思考できるほどの、母語の力」が、外国語習得には必要というのが強調されていたように思う。
自分の実感や考えにも合う主張だったから、「ほんまそれな」と思いながら読んでた。
バイリンガル環境って、子どもにとって間違いなく負荷だけど、悪いことばかりではないと思うから、この本も参考にしながら息子と言語との付き合い方を見守っていきたい。

まじで第4章だけでも(できればあとがきも)駐在家庭は読んでほしい。
バイリンガル育児本じゃないし、簡単に明快に答えが書いてあるわけじゃない。
でも生活や子どもと対峙するときのヒントにはなるだろうなって思う。

ほんと駐在の子どもみんなめっちゃがんばってるよ。



今日はここまで。

うしさん




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