タワー様と一緒②タワー様のお買い物
タワー様宛に荷物が届いた。
「タワー様、お荷物が届いてましたよ」
今日はタワー様の休日。部屋に荷物を届けるとタワー様は鍋2段重ねの状態で本を読みくつろいでいた。
荷物はダンボールにはカブトガニのマークが入っている。このマークは最近めざましく成長を遂げているネット通販サイトのものだ。
ダンボールはずっしりと重かった。
「重いのにありがとう」
タワー様が通販するというのが意外で、中身に興味をひかれてしまう。
「タワー様は何を買われたんですか?」
「あぁこれは…」
カザゴソと開けられた箱から出てきたのは、よくテレビでCMが流れているティファールのお鍋だった。
数日前にモグラ様が絡んできた事を思い出した。モグラ様がタワー様に絡むのはいつもの事で、今回のモグラ様はタワー様のお鍋がポンコツだと罵っておられた。
ありふれた光景だったのに、その後タワー様の反応が少し違っていたのだ。
「…ポンコツですかね」
そうおっしゃられて部屋に入ってしまった。
普段は気にされないのにどうされたんだろうと思った覚えがあった。
それが目の前の鍋に結びついた。
タワー様は嬉しそうに新しい鍋を並べている。
「タワー様、新しい鍋を試してみますか」
「試してみましょう」
鍋を重ねてみるが、取っ手もないため全く重ならず高さも出ない。
「戦闘には使えないですね」
僕はため息をついてしまうけれど四層の鍋の中にすっぽりと納まってしまったタワー様はなんだか嬉しそう。
「なんだか落ちつきますね」
取り外せる取っ手をいじる僕を見て
「重ねられるのでスペース取りませんよ」
自分の買い物を肯定されている。
買い物か、新しい鍋に少しはしゃいでいるタワー様をみて、重ねられるし、タワー様が喜ぶならまあいいか。
天井に近づきつつある古い鍋山に更に鍋を積み上げながら、僕は思った。