好きがわからない彼女と、友情がわからないぼくの話
「好意はある。興味もある。でも、好きではない。」
去年の冬。
ぼくは好きな人に告白し、ふられた。
告白した日から遡ること数ヶ月前。
ぼくは彼女に一目惚れした。
可愛らしい笑顔、透き通った綺麗な声、超独特なセンス。
全てにおいて、好きだと思った。
彼女もまた、ぼくに好意を持ってくれていた。
日常的に話しかけてくれたり、LINE交換したいと言ってくれたり、本屋でぶらり買いものに付き合ってくれたり。
初めて電話したときは、なぜか会話をパソコンで「書き起こし」されていた。
そういう特異な関係性だったので、ぼくは勝手に相思相愛だと思っていた。
ある日、外で2人きりで話す機会があった。
ぼくはずっと前から「早く自分の気持ちを伝えたい」と思っていた。ので、焦って告白してしまった。
「ぼく、実は鶏子さんのことがずっと好きだったんです……一目惚れでした。」
確か、こういう出だしで告白したと思う。それから先は、勢いのままに思いを伝えた。
あなたの全てが好きである、と。
翌日、返答があった。
一日中寝ないで考えてくれた結論は……
「ごめんなさい!」
というものだった。
「友だちじゃダメですか?」
とも言われた。
しかし、ぼくは男女の友情は成立しないと言った。
いや、男同士でも、ぼくには友情が成立しない。
というか、「友情」というものが分からないのだ。
唯一ぼくが友だちだと思ってる人は、中学生の頃の同級生だけだ。それ以外に、友だちだと思える人はいなかった。
なので、ぼく的には「友だち」は無理だと伝えた。
彼女は、ぼくに対して好意はあると言った。興味もあると言った。
でも、「好き」ではないとのことだった。
というよりも、今までの人生で誰かを「好き」になったことがないと言われた。
フラれてから一時間以上、ぼくは引き下がらなかった。どうしても付き合ってほしいと粘った。
しかし、それらの独りよがりな思いは空振りし、ぼくはしぶしぶ家に帰った。
あれからもう10ヶ月が経った。
彼女とは未だにLINEしたり、たまに会ったりしている。ぼくは非常に女々しい性格なのだ。
だけど、ぼくの中にも変化があった。
『恋仲になりたいという願いは叶わなかったけど、一緒にいて楽しいな』と。
かつてのぼくだったら、フラれたらすぐに逃げる行動に出ていたが、今回はどうも「それ」ができない。
むしろ、今の関係性に心地よささえ感じている。
ぶっちゃけ、ぼくはまだ未練があるのだと思う。好きだという気持ちは、100%無くなったわけではない。
しかし、こうやって何気ない会話をする間柄も、これはこれで幸せだ。
あの日、あの時、告白をしていなければ。今とは違った未来があったのかもしれない。
でも、今の自分が不幸だとも思わない。
好きが分からない彼女と、友情が分からないぼくにとって。
今の関係性がベストなのかもしれない。
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