川越らぷそでい 第2話
前回までのあらすじ
越川虎之助(17)は少し特別な能力がある男子高校生。
ある日、嫌な予感がした為学校を遅刻して行く事にした。
嫌な予感は的中し、虎之助はトラブルに巻き込まれる。なんだかんだあり睡眠弾により眠らされた虎之助はどこかに連れ去られる。
虎之助が眼を覚ますとそこは川越妖魔特別対策本部という聞いた事もない場所。そこは妖魔を保護する施設も兼ねている不思議な場所だった。
そしてまた新たなトラブルが発生する予感‥
埼玉県川越市を舞台に繰り広げられる妖魔と男子高校生の物語。
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第2話
「本部長、た、大変です!」
絢音さんが慌てて部屋に入ってきた
「そんな慌ててどうしたんだ?」
「こ、これを見てください!あっ‥その前にヘッドフォンを‥」
「⁉︎‥まさか‥わ、わかった。」
信綱さんはすぐさまヘッドフォンをして絢音さんから映像を見せてもらう。
「こ、これは‥」
僕も見せてもらう事にした。
「ヤッホー、みんな初めましてー!みんなのアイドル、リリアだよ♡」
そこにはあの女子高生が映っていた。ただ、アイドルの衣装を着ている。配信生ライブをするみたいだ。しかもここは‥川越のクレアモール公園?
「これって、あの妖魔、サキュバスですよね‥?あ、アイドルになってますよ?」
「そ、そうだな‥これはまずい‥絢音くん、至急女性隊員を集めて現場に向かってくれ!」
「はい!」
絢音さんは急いで部屋を出て行った
何がなんだか分かっていない僕に気づいたのか、信綱さんが説明をはじめた。
「ゴホン、前も言ったと思うがこのサキュバスの妖力はオスという生物に効果があるんだ‥つまり、見た目が可愛いアイドルが配信で生ライブをする、しかも恐らくこんだけニュースになっているという事は放映権を持っている人間は虜にされているはず。‥つまりどうなるかわかるな?」
僕はハッとした‥
「日本中に配信されて学校の時と比べようのないほどの影響が出るって事ですか⁉︎」
「そうだ、学校の時は学校内に睡眠剤をばら撒けばよかったが今回はそうは行かない。日本中に被害が拡大するかもしれん。」
「男性全員が暴れ出したら大変な事になりますね‥」
「こんな行動をするサキュバスなんて見た事なかったが‥特異種かもしれないな。」
信綱さんはしばらく考え込んでいる‥
僕は信綱さんの気持ちがわかった。
「信綱さん、僕公園に行ってきます!こんな僕でも役に立つかもしれないから!」
「虎之助くん‥ありがとう‥」
「だけど‥答えは待ってください‥今は僕が出来る事をしたいだけですから」
「あぁ、虎之助くん本当にありがとう。わしは事情があってここから動けない‥だからこれを君に。」
そういうと白く輝く勾玉を僕に手渡した。
「これは‥?」
「これは彩玉(サイタマ)といって虎之助くんのイメージが形になるんだ。イメージが彩玉に届くように強くイメージするんだ。」
ネーミングに少し戸惑ったがそんな悠長な事はしていられない。
「あ、ありがとうございます!行ってきます!」
「頼んだぞ!虎之助くん!」
僕は部屋を飛び出していった。
10分後‥
「ど、どうやって外に出るんだ⁉︎」
僕は肝心な事を忘れていたようだ、ここまでは寝ていたから出口なんて分かるわけなかった‥
僕は呆然と立ち尽くしてしまった‥
その時走り寄ってくる足音が聞こえてきた。
「あんちゃーん!やっと、見つけたよ!」
一つ目小僧のたきちくんだ。
「た、たきちくん‥」
僕は知っている顔をみて安心した‥はは、相手妖怪なのに。
「やっぱり迷ったよね!おっちゃんが出口の事教えるの忘れたって言っておいらのとこにきたんだよ。おっちゃんも今走り回っていると思う。ここはね、この御守りがないと出られないし、入れないんだよね。」
そういうと、たきちは緑色の御守りを渡してくれた。
「この御守りの中にボタンが入っていて押すと出口に出られるんだ。入る時は喜多院の境内に入ってからボタン押してね!」
「えっ!ここって喜多院なの⁉︎」
「喜多院というか喜多院の地下ね。喜多院は聖なる力が強くて悪い物が入りづらいんだ。だけど喜多院の人は知らないから入る時は誰にも見られないようにね。」
「わ、わかった‥」
僕は理解するのを諦めて全てを受け入れる事にした。
「それじゃあ、頑張ってね!あんちゃん!」
「行ってきます!」
僕は力強くボタンを押した
数時間前‥
「ぜぇっっっったいに許さないんだから!」
サキュバス界の絶対的アイドルと呼ばれたアタシ、リリア様の魅力に打ち勝つオスがいたなんて‥アタシのプライドと名声が地に落ちてしまう‥!絶対に許さない、許さない、許さない!
絶対に服従させてやるわ!
‥こうなったら、この国で女王様になってアイツを下僕にしちゃうんだから!
まずは‥アイドル⭐︎リリアのライブから宣戦布告ね♡
まずは‥大物プロデューサーを仕留めてくるか‥
都内某大手事務所
ガチャ
「ん、誰だねチミは?ここは社長室だぞ。アポはとったのかね⁉︎」
社長だったか‥とりあえず普通に挨拶するかな‥
「あたし、アイドルのリリアです♡宜しくね⭐︎」
場が凍りつくのがわかった‥
「な、何を言っているんだチミは‥。んん、よく見ると可愛いのぉ‥そうじゃ、ワシと楽しむのはどうじゃ?」
めんどいな‥
「ん〜、いいけど〜。どうしよっかなぁ〜。それじゃあ、大物プロデューサーさんにぃ、合わせてくれたらぁ、遊んでもいいよぉ♡」
気持ちの悪い顔を浮かべながら社長は大きく頷いた。
それから、プロデューサーに会って川越のクレアモールにある小さな公園で配信生ライブをする事が決まった。
大きな会場でも出来るけど、川越でライブする事に意味があるからね‥
現在
公園内は大勢のオスどもがむらがっている。小さい公園だから20人ぐらいか‥万が一の為に警備員も魅了しておいた。
さぁ、お待ちかねのステージ!
「画面の前のみんなぁー!初めまして!川越ご当地アイドル、リリアだよぉ♡」
「リリアちゃーーーん!」
公園内が歓声で震えている
「きゃは、嬉しいなぁ‥グスン。嬉しくって泣いちった」
アタシは嘘の涙を流しながら舌をペロっとだした
「リ、リリアちゃーーーーん!超絶最高に可愛い!!」
「みんな、だいちゅきだよ♡」
「うぉぉぉぉぉ!!」
20人ほどしかいないにも関わらず、公園内は熱気と汗で霧がでたみたいになっている
「それじゃあ、みんな聴いてね。『川越ラプソディ』」
東松山駅付近
「へぇ、リリアだって。めちゃくちゃぶりっ子じゃん。変な曲だし、ねぇそう思わない、たかし?」
「‥‥‥」
「ねぇ、たかしってば!」
「リリア様‥」
「えっ、たかし⁉︎」
たかしは掴まれた腕を払いのけスッと立ち上がり、駅のホームへと消えて行った
「ちょっ、まってよ、たかし!!」
喜多院付近
ヒュン‥
「うっ‥」
目がくらむほどの眩しい太陽‥
どうやら外に出られたみたいだ‥
「ここは喜多院か‥ほんとに喜多院の地下にあるんだな‥」
喜多院は僕達、川越市民にとって大切な場所で聖なる場所。‥だけどまさか、あんな施設があるなんて思いもしなかったな。
‥おっと、ほうけてる場合じゃない、クレアモール公園に急がないと!
ドン!
後ろから誰かと当たり転んでしまった。
「いたたた‥ちょっと何するんですか⁉︎」
「リリア様‥リリア様‥」
まるでゾンビのように生気がない男性が倒れた僕を見向きもせずに歩き去っていく。
「ま、まさか‥」
僕は振り返ると沢山の男性がゾロゾロと列をなして歩いてくる。みんな、魅了されてしまったのか‥
「は、早く行かないと!」
絢音が現地にたどり着いた時には公園の周辺は男性であふれかえっている。
幸い平日という事もあり小さな子どもはいない。
だが、運悪い事に老夫婦が巻き込まれている
「おじいさん、おじいさん!何してるんですか⁉︎早く離れましょうよ!」
「リリア様‥リリア様‥」
おばあさんは旦那さんを連れて行こうとするが完全に魅了されておりどうする事も出来なくなっている。
「おばあさん!ここは私達に任せて避難してください!おじいさんに少し寝ててもらいますね。」
パスン
睡眠剤を投入しておじいさんは眠りに落ちた
「あ、あなた方は‥?」
「警察官と思ってもらえれば‥みんな2人を安全な場所へ!その後、各自睡眠弾の準備を!」
絢音は住民の避難、沈静化を部下に任せてリリア討伐に向かった。
人混みを掻き分けステージ上に辿り着く。
「あれれぇ、この前のおばさんじゃん?なぁに?アタシの歌を聴きに来たの?」
リリアはまた挑発するかのような態度をとる
「‥おばさんじゃない!今すぐこのライブをやめなさい!」
「いやだよぉ、みんな楽しんでるのに邪魔しないで♡」
リリアは小型ナイフを突き刺してきた
だが絢音は軽やかに避ける
「あなたの動きは前回でもう見切ったわ!諦めなさい!」
リリアはニコニコしている
「ふぅん、なかなか優秀なんだね、おばさん。」
「だから、おばさんじゃない!29歳だってば!」
絢音は塩弾を放つ
パン!パン!パン!!
「ふぃー、ほんとに半日で腕上げたわね、あんたもまさか‥んな、わけないか」
リリアはナイフを素早く突き刺してくる。
絢音は警棒を駆使しながらさばいていく。
「あー、もう!うざい!あんたなんかどうでもいいの!みんなこの女連れて行って!」
パチン
リリアが指を鳴らすと警備員が絢音に襲いかかる。絢音は懸命に警備員達を交わしていく。
「くっ!一般市民には手を出せないの分かって‥卑怯ね!」
リリアはニコニコしている。
「卑怯?当たり前じゃない、アタシ妖魔よ?」
「みんなぁ、飽きちゃったから人間のメス、この付近から追い出して!」
「うぉぉぉ!」
さっきまで生気のない男性達が絢音ら隊員に襲いかかる‥隊員達は睡眠弾で応戦したが次から次へと男性が現れなすすべなく追い出された。
最後まで抵抗したが絢音も捕まってしまった
「さぁて、どうしようかなぁ‥殺しちゃおっかなぁ。あっ、そうだ。ねぇ、アイツ呼んでくれたら助けてあげる」
「あ、アイツってだれよ‥」
「とぼけんなって!アイツよ、アイツ!アタシの妖力が効かなかったやつ!」
「し、知らないわよ!」
「ふぅん‥、じゃあ、まぁいいや。現れるまでライブは続けるから。アンタは死ね!」
リリアがナイフを突き刺す瞬間‥
何かが空から降ってきた
「ちょおっっっと、待ったぁー!」
ドスン‥!!
物凄い音と共にリリアと絢音の間に落ちたソレは虎之助だった。
「と、虎之助くん⁉︎」
「いたたた、すいません、絢音さん、お待たせしました‥」
「虎之助くんどうしてここに⁉︎それに空から降ってきたけど‥」
僕は彩玉を見せた。
「これのおかげです!詳しい話は後にしますね!」
そういうと虎之助は彩玉を強く握った。
すると彩玉から鳥が出てきた‥ハト?
「ポン助、警備員さんをおとなしくさせて!」
「あいよー」
クルッポー!
変な声とともにハトらしき者の口から豆鉄砲が飛び出し警備員を気絶させた。
「あ、ありがとう‥」
「トン助は絢音さんと一緒に男性を止めていて!僕がリリアを止めるまで!」
「わ、分かったわ!」
「任せろポ!」
1人と一羽はステージの外へと出て行った。
リリアはずっとブツブツ言っている
「許さない、許さない、許さない!」
急に立ち上がりナイフで切り付けてきた。だが、虎之助は平然とかわす。
「僕は誰とも戦うのは嫌だ‥だけど、だけど大好きな川越が壊されるのはもっと嫌だ!」
リリアはさらに殺気を虎之助に向ける
「アンタさえ‥アンタさえいなければアタシはもっと強くなれる‥アンタさえ、アンタさえいなければ!」
今にもリリアが飛びかかって来そうだ。
武器のイメージを‥武器‥武器‥長くて使いやすい物‥
虎之助は強く彩玉を握る‥
ポンッ
「へ?」
出てきたのは‥菓子屋横丁で有名な日本一長いふ菓子だ‥
「キャハハ、なんだそれ⁉︎バカにして‥!」
リリアはナイフを突き出す
僕は思わずふ菓子でガードをした!
ガチン!
リリアのナイフが弾け飛んだ!
「な、何よ、それ!全然見た目と違うじゃない!」
「‥‥」
そうか‥そうだよな‥
「お前にはわからないよ、たんなる『ふ菓子』でも町の人が心を込めて丁寧に作った物!簡単に折れる訳がない!だけど‥だからこそふ菓子では攻撃したくない‥」
僕はもう一度彩玉に祈りを込めた。また同じふ菓子が出てきた。
「リリア、これを食べろ。安心して本物だよ」
「な、何を言っている⁉︎」
「いいから‥!」
僕はリリアにふ菓子を無理矢理食べさせた。
「‥な、何これ‥美味しい‥」
「これが川越の味だよ。それに川越はまだまだ美味しい物が沢山ある。リリアはそれを壊そうとしたんだ‥」
「‥‥違うわよ‥壊そうとしたのは‥アンタだけ‥でも、もう‥なんだか馬鹿らしくなってきたな‥」
リリアは何故か泣きそうになっている‥
「リリア‥ライブ辞めてくれるか?」
リリアはうなずいた。
「みんな‥ごめんね、ライブはこれで終わり‥さよなら、バイバイ‥」
リリアは消えていき、男性達は我に返った‥
ざわざわざわ‥
「なんで、俺ここに‥?」
「たかし!やっと会えた!もうバカ!バカ!バカ!」
「‥?ご、ごめんな‥」
ざわざわ‥
「おじいさん!」
「ば、ばぁさんや‥なんかの夢を見ていたかのようじゃった‥」
「‥おじいさん、無事で何よりです‥」
「絢音隊長!民間人の安否確認完了いたしまた!」
「ありがとう、了解した!」
絢音さんは安堵のため息を漏らした
「虎之助くん、ありがとう。」
「いえ、皆さんのフォローのおかげです!」
「そうだぞ、調子に乗るなポ!」
「そうだな、ポン助もありがとう。」
「とりあえず、本部に戻りましょうか‥」
みんなが街が無事でよかった‥
あ、あれ‥め、目の前がグラグラする‥
ドサッ‥
「と、虎之助くん⁉︎」
「救護班を呼んで!虎之助くん大丈夫⁉︎」
僕はOKポーズをしながら意識を失った‥
第3話へ続く
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