土作りのスペシャリスト潮田武彦(農業コンサルタント)

土作りのスペシャリスト潮田武彦(農業コンサルタント)

最近の記事

題名:高値を引き寄せる農業の本質と土作りの重要性

第1章:農業相場の波を知る 農業における相場はまさに波のようなものです。高値が続いた後には安値が訪れ、安値が続けばやがて高値が訪れる。この波を理解することは農業経営において非常に重要です。特に、天候不順が高値をもたらすケースは少なくありません。収穫量が落ち、供給が減ることで価格が上がるのです。しかし、ここで重要なのは、高値にうまく乗れる農家とそうでない農家の違いです。 高値を活かせる農家は、日頃からしっかりと土作りをしている農家です。豊かな土壌があれば、悪天候や不順な気候条

    • 多年張りビニールのリスクと考慮すべき点

      第1章: 多年張りビニールに潜む病害虫リスク多年張りのビニールハウスには、コスト削減というメリットがありますが、その一方で、病害虫のリスクが大きくなります。ビニール表面に付着するほこりは、病害虫が集まりやすい環境を作り、特に長期間使用しているとその影響は顕著になります。ほこりによって太陽光の透過性も低下し、作物の光合成が阻害されるため、生育に影響を及ぼす可能性が高まります。 ビニールが汚れたり劣化したりすると、内部の環境が不安定になり、温度や湿度の管理が困難になる場合があ

      • 神は細部に宿る農業技術 - 秀品率95%を目指す均一性と非効率の効率

        第1章: 均一性と秀品率95%を目指す農業の美しさ農業において、均一な作物の生産は、見た目の美しさだけでなく、品質の高さを保証する重要な要素です。秀品率95%を達成するためには、すべての作物が同じ形状、サイズ、品質を持つことが求められます。この均一性は、市場での高評価を得るだけでなく、作業効率の向上や収益性の最大化にもつながります。 全ての作物が整然とした姿を持つことで、作物の成長状態や異常を素早く発見できるようになります。例えば、ある一部に病気や栄養不足が発生した場合で

        • 環境制御は農業の未来か?それとも幻想か?

          第1章: 環境制御ハウスの導入と現実近年、農業における効率化の追求が進む中で、環境制御型ハウスの導入が注目されています。温度、湿度、光量、CO2濃度などを管理し、作物が最適な環境で成長できるように調整するこの技術は、理論上は農作物の品質向上や収量の増加を目指しています。しかし、現実はそれほど単純ではありません。多くの農業者がこのシステムを導入しながらも、理想通りに作物を管理できず、その効果を実感できていないのです。 この背景には、技術と現実との間に大きなギャップが存在して

          雑草管理が決め手!露地栽培におけるネギ栽培の成功と失敗の分岐点

          ネギ栽培において失敗の原因を挙げるとすれば、最も大きな要因は間違いなく「雑草の管理」です。私自身も長い農業経験を経て、雑草管理がネギの栽培にどれほど重要かを再確認する機会がありました。特に露地栽培では、雑草管理の重要性が顕著に現れます。今回は、雑草管理を中心に、露地栽培と施設栽培の違いや、その技術的な側面について掘り下げていきたいと思います。 露地栽培の技術的難易度の高さ露地栽培は施設栽培に比べて初期投資が少なく、コストが低いというメリットがあります。しかし、その一方で、

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          2024年台風10号と異常気象がもたらす日本農業への影響

          はじめに2024年の夏、日本は過去に例を見ない異常気象に見舞われた。その象徴とも言えるのが、台風10号である。この台風は迷走を続け、記録的な遅さで進行し、日本各地に大きな被害をもたらした。台風がもたらす暴風や豪雨は、全国各地で水害や土砂災害を引き起こし、農業分野にも深刻な影響を及ぼした。今年の夏の異常気象は台風10号にとどまらず、異常な高温や豪雨が日本全体を覆い、農作物の生産に多大な打撃を与えた。 台風10号の特徴と被害台風10号は、その進路が複雑で速度も極端に遅く、これ

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          令和の米騒動について考える:日本の米市場の変遷と現状

          日本の米市場は、バブル崩壊を境に大きく変化してきました。政府による買い上げ制度が機能していた時代から、自主流通米制度へと移行したことで、米の価格は大きな波を経験し、現在に至るまでその影響を受け続けています。そして昨今、「令和の米騒動」と呼ばれる事態が生じています。この騒動の背景を探ることで、現代の日本の農業、特に米市場の課題や展望を考察します。 バブル崩壊前の米市場:政府管理の時代 バブル経済の崩壊前、日本の米市場は政府による強力な管理の下にありました。茨城県では、1俵(

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          新規就農者が注意すべきこと:農業のブームと情報の見極め、よい農業界の繋がりを作る大切さ

          農業においては、時折、特定の資材や技術が「ブーム」として急速に広がることがあります。これらのブームは、過去にも繰り返し起こってきましたが、その多くは一時的な流行に過ぎず、最終的には効果が期待に及ばず収束することが少なくありません。新規就農者は、このようなブームに流されることなく、冷静に情報を見極める姿勢が求められます。 ブームのサイクルとその危険性 農業のブームは、約15~20年ごとに形を変えて現れることがあります。かつて流行した資材や技術が、新たな名前や異なる形で再登場

          新規就農者が注意すべきこと:農業のブームと情報の見極め、よい農業界の繋がりを作る大切さ

          「正しい農業の基礎力の重要性:成功の鍵は基本にあり」

          序章: 日本の農業界には、さまざまな農法、理論、栽培技術が存在します。新しい農法や理論が次々と登場し、農業者たちはその技術を取り入れることに躍起になっています。しかし、そのような技術革新が進む一方で、実際には農業の基本を正しく理解し実践できている農業者は、全体の1%にも満たないのが現状です。ここで問題となるのは、基本をしっかりと押さえずに新しい技術に頼ることが、農業の成功を遠ざけているのではないかということです。本稿では、正しい農業の基礎力の重要性について考察し、なぜそれが

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          農業で成功するための「味覚」と「土作り」の重要性

          第1章:味覚と農業の深い関係 農業において「味」が果たす役割は、消費者の満足度だけではなく、生産者の成功にも直結しています。多くの農家は、「味なんてどうでもいい」と考えがちですが、実際にはその姿勢が収益性に大きな影響を及ぼします。美味しい農産物を作ることは、消費者のリピーターを増やし、市場での評価を高めることに繋がります。それが高価格での販売を可能にし、結果的に農家の利益率を上げるのです。 この関係性を数式で表すと、以下のように考えることができます。 [ \text{利

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          農業経営における最重要課題:赤字経営を回避するために

          農業経営において最も重要なことは、経営がマイナスにならないこと、つまり赤字経営を避けることです。この基本を守ることが、持続可能な経営の第一歩です。農業法人の場合、個人の所得と生活費が切り離されるため、経営を厳格に監視する目が養われます。個人の消費と経営を分けることができる一方で、個人経営の場合は生活費との区別がつきにくく、知らず知らずのうちに経営が悪化するリスクがあります。したがって、法人化していない個人経営の時こそ、しっかりと経営を学ぶことが不可欠です。 融資と支払いに対

          農業経営における最重要課題:赤字経営を回避するために

          日本における農産物の安全性と栽培方法の多様性

          序章: 日本の農産物は全て安全である日本において流通している農産物は、全て「慣行栽培」に基づいて生産されています。慣行栽培とは、農薬や肥料の使用が法的に規定された資材に基づいて行われる栽培方法であり、その安全性は厳格な実験と法規制により保証されています。消費者は、日本の農産物が安心・安全であることを信頼して購入できるのです。 第1章: 有機栽培と慣行栽培の関係性有機栽培は一般的に「化学肥料や農薬を使用しない」農法として認識されていますが、日本ではこの有機栽培も慣行栽培の一

          日本における農産物の安全性と栽培方法の多様性

          題名: 自然の力と農業の鉄則

          第1章: 異例の夏と初めての経験 今年の夏は、私の農業人生において非常に特異な経験をしています。30年間、さまざまな天候や自然の変化に対応してきましたが、今年ほど予測がつかない気候に悩まされている年はありません。特に、雨の問題はこれまでに経験したことがないものでした。過去には、2ヶ月間も雨が降らず、作付けができなかったこともありますが、逆に雨が降りすぎて作付けが進まないという事態に直面するのは、今回が初めてです。 第2章: 自然の前での無力さとその学び 通常、梅雨の時期

          自然栽培の限界とその超越~潮田が見出した農業の極み~

          第一章: 自然栽培の本質と限界 自然栽培とは、植物性の堆肥のみを使用し、自然の力に任せて作物を育てる栽培方法である。この手法の根底には、植物は本来、肥料を必要とせず、自然の環境下で育つべきだという考え方がある。しかし、私はこの自然栽培の実践を通じて、その限界に直面することになった。特に、日本においては、土壌のミネラル不足が大きな問題となる。 日本の土壌は、諸外国と比較してミネラルが少ないことで知られている。そのため、日本で育つ作物にとっては、十分な栄養を自然から得ることが

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          余力とチャンス:持続可能な農業経営のためのバランス目次

          はじめに:余力を持つことの重要性 余力を確保するための経営戦略 チャンスを掴むための準備と柔軟性 無理のない作業計画と効率化のポイント 農業経営における健康と持続可能性 結論:余力がもたらす成功の可能性 3.1 はじめに:余力を持つことの重要性 農業経営において、私は「余力を持つこと」の重要性を何度も強調してきました。農作業に全ての力を注ぎ込むのではなく、全体の8割を作業に充て、残りの2割を経営や販売戦略に使うことで、余力を持つことが必要だと考えています。この余

          余力とチャンス:持続可能な農業経営のためのバランス目次

          管理会計の重要性とその活用:持続可能な

          目次 はじめに:管理会計とは何か なぜ農業経営に管理会計が必要なのか 基本的な管理会計の概念とその導入方法 管理会計を活用した経営改善の具体例 リスク管理と資金計画の重要性 結論:管理会計を経営の羅針盤に 2.1 はじめに:管理会計とは何か 農業経営において、私は「管理会計」の導入とその活用を強く推奨しています。管理会計とは、経営者が意思決定を行うために必要な財務情報を提供し、それを基に戦略的な経営を行うための手法です。経営の現状を正確に把握し、将来の計画を立