見出し画像

ビスコンティの『山猫』を見る

 BSNHKのプレミアムで録画しておいたビスコンティの『山猫』を見る。ビスコンティは『地獄に落ちた勇者ども』を見たのが初めてで、『山猫』が日本で上映されたのは、その後だと思ったが、作られたのはずっと前で、フ上映時間が配給を担ったハリウッドが「長過ぎる」として、シドニーポラックの監修で短くしたが、BSプレミアムで放映したのは退色したフィルムを修正した完全なオリジナル版ということで、確かに長い(笑)。

 ストーリーはシチリアの公爵ファブリッツィオ(バート・ランカスター)が、イタリアが秩序が激しく入れ替わってろうとしている時代に対する、有力貴族の感慨を描いたもの……ということになると思うけれど、見どころとは豪華な貴族の生活と、公爵の甥のタンクレディという美青年(アラン・ドロン)の美青年ぶりを楽しむ映画だと思う。もちろん、ファブリッツィオの語る言葉は、シナリオで練りに練ったと思われる深遠な内容だけど、深遠すぎて……。

 ちなみにアンナ・カリーナは評判の美女として登場し、タンクレディの妻になるけど……あまり印象に残らない。

スクリーンショット 2021-11-09 13.42.03

 前半の主人公はタンクレディで、タンクレディはイタリア統一戦争で、それを推進しようとする赤シャツ隊に入隊する。もちろん、死ぬ可能性だってあるわけだが、タンクレディはそんなことは微塵も考えずに、舞い踊るように叔父のファブリッツィオの屋敷を駆け下りて、馬車に飛び乗る。その時、タンクレディを祝福するかのように、巨大なドーベルマンが彼の袖を噛む。ポスターの右下のイラストが、その場面だ。ビスコンティの代表作の一つは『若者のすべて』というタイトルの映画だったと思うけど、見ていない。でも、なんとなくその内容が偲ばれるような場面だ。要するに若々しくて、無鉄砲で……という青年が好きなんだ。もちろん、中には死んでしまう若者もいるわけで、タンクレディが参加した戦闘で命を落とした美青年の顔にハンカチをかぶせるシーンがあるけれど、ある意味、あれが前半のクライマックスだったと考えていいと思う、というかそう考えることにした。

スクリーンショット 2021-11-09 13.05.32

スクリーンショット 2021-11-09 13.02.30

 後半は、大勢の貴族が集まる豪華なパーティーを背景に、公爵ファブリッツィオの未来に対する漠然とした不安感に苛まれる、憂鬱な日々を描いている。ファブリッツィオは新しい政府の貴族院議員になるよう、要請されるが「シチリアは変化を望まない。眠りたがっている」と言ってそれを断る。そして、豪華な貴族の屋敷とは対照的な、貧民街の路地を歩くファブリッツィオの姿が写り、ジ・エンドになる。イタリア、フランスの合作映画だが、最後のクレジットは英語だったような気がする。ファブリッツィオを演じたバート・ランカスターのイタリア語は吹き替えだそうだし、そんなこともあり得るのではないかと。画像は、パーティを抜け出して、瀕死の老人を取り囲み、嘆いている様子を描いた絵画を見ているファブリッツィオと、対照的な豪華なパーテイー。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?