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ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト


ハモニカを吹いて現れるブロンソン。日本映画みたいだと思った。

 マカロニ・ウェスタンの元祖、セルジオ・レオーネの「ウェスタン」を見る。原題は「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト」で、「ワンスア。ポン・ア・タイム・イン・アメリカ」、「ワンスア。ポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」の三部作の最初の作品。事情がよくわからなくて「ウェスタン」にしたのかも知れないけれど、タイトルは大事なんでもっと真面目に考えろといいたい。

  •  マカロニ・ウェスタンをヒットさせたレオーネとしては西部劇はこれまで、次は「ワンスア。ポン・ア・タイム・イン・アメリカ」をつくろうと思ったが、制作会社に「やっぱり、西部劇にしてくれ」と言われて、つくった西部劇だそうで、「じゃあ、オレのやりたいようにつくる」といった感じで、面白いことは面白いが、力が入り過ぎた感じで展開はひどくわかりづらい。

  •  例えば、タイトルの映像は、映画のトップシーンで、小さく見えているのは、主人公のハモニカと呼ばれている男で、手前にいる三人の男は、それぞれ有名な役者たちだが、当初、セルジオ・レオーネは、『続・夕陽のガンマン』にクリント・イーストウッド、リーヴァンクリーフ、イーライ・ウォラックを使おうと思ったが、イーストウッドの時間の調整がつかず、自分の好きな個性的な俳優を口説いたらしい。

  •  では、この三人はどういう役割かと言うと、ハモニカ(チャールズ・ブロンソン)に撃ち殺されるだけ。ハモニカは、この後、兄を殺したフランク(ヘンリー・フォンダ)を追い、最後に決闘を挑んで、見事に殺すことに成功するが、『荒野の決闘』のワイアット・アープを撃ち殺すのだから、その射撃の腕前を示す必要があるが、ストーリー展開としては、寡黙な態度で通しているので、腕前を披露する場面がない。それでトップシーンで、エピソード的に示すことにした……としか思えない。

  •  というわけで、深夜、寝る少し前にビデオに撮っておく価値があるかどうか確かめるような感じで見はじめたら、眠気も混じってきたので、翌日、見直せばいいのだが、なかなか話が見えてこないので、話が見えるまで……と思って見ているうちに、最後まで見てしまった。二時間をオーバーする大長編映画を、その倍の、四、五時間かけて最後まで見たことになる。というわけで、見終わったら、朝、六時半を過ぎていた。

  •  ストーリーはフランクという大悪人に兄を殺された少年が、復讐を果たすというもの。大悪人をアメリカの良心の象徴のヘンリー・フォンダが演じたことで話題を呼んだ。

  •  全体のストーリーは、というと、ハモニカに殺される三人の男が、殺されるためだけに出てきたことが、映画を見終わった後にわかる……ように、本編も、わかる人はわかる……と言った感じで展開するので、概略だけ、書いておくと、カリフォルニアの海まで鉄道を通すのが夢という鉄道会社の経営者、モートンが、新駅の建設地の所有権を持つ男が売却を拒んでいるので、殺し屋のフランクを雇って脅し取ろうとするが、フランクは想定外の極悪人で、幼い少年を含む一家、五人を皆殺しにするが、肝心の所有権は元娼婦のジル(クラウディラ・カルディナーレ)という女性と再婚していたので所有権もジルに移っていたことが判明する。モートンは「脅すだけでいいと言ったのに、殺すから面倒なことになった」とフランクにいうと、元娼婦の女なんか簡単だ、と言って、結婚を餌にジルに近づき、所有権をオークションで売ることを納得させる。オークションの会場にはフランクの子分が陣取って、監視する中、格安の二百ドルで落札した……と思いきや、ハモニカが「五千ドル!」と言って、五千ドルの賞金のついた男を連れて現れ、落札してしまう。

  •  一方、フランクに疑念を持っていたモートンは、金でフランクの部下を買収、フランクを殺そうとするが、気づいたハモニカが、フランクに知らせる。ジルが「あなたはフランクの命を狙っていたのに、なんで助けたのか?」と聞くと「他の奴には殺させない。俺が殺す」と言って、雇い主も、部下も失い、一人になったフランクに決闘を挑む。フランクが「お前は一体何者だ」と言うと、兄を肩の上に乗せた格好で、お前にハモニカを食わされた少年だ、と正体を明かし、見事に撃ち殺す。そこはフランクが一家五人を殺した場所で、今や、鉄道の開通を間近に控えた新しい駅となっていた……という話。

  •  ちなみにフランクほど徹底的に人間性を欠いた悪人を、映画とはいえ、見たことがないが、ヘンリー・フォンダ娘、ジェーン・フォンダとピーターフォンダは自殺した母親に対する贖罪の意志を示していると思って、涙なしに見ることはできなかったそうだ。

写真は本編中にしばしばボケた映像で登場、最後のハーモニカとの決闘の場面でクリアに示される極悪人のフランク。ハーモニカをかまされているのは、ハーモニカで、肩の上に乗っているのはお兄さん。最後、くたびれて膝を折り、肩の上の兄は縛り首となる。
新駅の建設で賑わっている場面で映画は終わる。

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