ウクライナの団結と戦後の分裂など(短いnote)

 ウクライナには、西部・中央・南東部で民族的な差異(とでも言うべきもの)があります。
 歴史的経緯から親ポーランド・親ヨーロッパの西部、ウクライナ・コサックのアイデンティティを継ぐ中央、ロシアとの繋がりが深くロシア語を母語とする人が多い南東部。

 ロシア侵攻を受け、ほぼ「総力戦体制」と形容できそうなウクライナですが、一つ仮定を持ち込みたいと思います。
 ウクライナ南東部は文化・経済的にロシアに近く、現地ではウクライナ語、ロシア語など複数の言語が話されるそうです。この地域の人々が、果たして強固な「ウクライナ人」というアイデンティティを持ちうるか、と。
 寧ろ、独仏国境地帯アルザス・ロレーヌ地方のように、土地や街、「故郷」への帰属意識が、民族的アイデンティティより強固なものであるという仮定です。

 そうだとすれば、ロシア語を母語とするウクライナ東部の住民がロシアとの戦闘に加わるのも頷けるのではないでしょうか。つまり、「ウクライナが攻撃されているから」ではなく、「自分の街が攻撃されているから」戦うのだ、という論理です。
 この仮定のもとで、ウクライナの3つの地域は団結し得ます。単純化すれば、

南東部:自分の街を奪還する
中央:自国の領土を回復する
西部:ヨーロッパの敵を打ち払う

ために戦っている、という構造かもしれません。

 ウクライナ政府は、国民の団結のもとで戦争を遂行できますが、この場合、戦争終結後のウクライナは深刻な政情不安定に陥ることが予想されます。 特に、開戦前の領土が奪還されずに停戦されたとき、前述の三者の立場にはズレが生じることになるでしょう。

 逆に言えば、ウクライナは領土を完全に回復するまで、戦争をやめることができないかもしれません。翻って、対戦国のロシアにはまだ余力があるように思われます。歴史的にも戦術的にも「面」での戦闘に優位なロシアは、NATOとの直接戦争も受け止められる可能性があります。
 つまり、ウクライナ戦争が両国のみの交渉によって停戦に向かうことはなく、長期化する恐れがある、ということです。

 一方、ロシアがウクライナから仮に撤退した場合、それは危険な前兆かもしれません。ロシアが譲歩すると、アメリカ(NATO)はウクライナに進出する「必要」があります。
 ウクライナがNATOに加盟すると、アメリカはウクライナに(慎重に)戦力を置かなければなくなります。このタイミングで、別所でアメリカの対応を迫る行動を取れば、アメリカに二正面を強いることができます。

 それが、台湾有事である可能性を挙げておきます。

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