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センチメンタルジャーニー読書「河童」(芥川龍之介)

「中古典のすすめ」(斎藤美奈子)に刺激されて,センチメンタルジャーニー読書を再開しました.
まずは,芥川龍之介の「河童」を読んでみました.

これを始めてよんだのは,高校3年生の時ですから,50年以上前になります.
文化祭で,河童研究を発表しました.
しかし,今回読み直してみるとほとんど忘れていました.

上高地にある穴から地下の河童の世界に転がり落ちて,そこで過ごした男が語るお話です.
そこには人間の世界と同じ規模の世界がひろがっています.
人間世界と逆の価値観に支配されているパラレルワールドです.

今回読んで,興味深かったところは8(章)です.
河童世界の実業家と話しています.
河童界でも日々技術革新がなされ,失業者が続出するのですが,ストライキすら起きない理由がびっくりです.

『(解雇された)織工をみんな殺してしまって,肉を食料に使うのです.・・・今月はちょうど六万四千七百六十九匹の織工が解雇されましたから,それだけ肉の値段も下がったわけですよ.』
『織工は黙って殺されるのですか?』
『それは騒いでもしかたはありません.織工屠殺法があるのですから.』
・・・・・
『餓死したり自殺したりする手数を国家的に省略してやるのですね.』

これに似た映画がありました.
1973年,チャールトン・ヘストン主演の「ソイレント・グリーン」です.
未来社会では,安楽死させられた人間が加工されて食料になるという筋でした.
その未来社会って,ナント2022年!!!

「中古典のすすめ」の基準にしたがって,判定を下してみます.
「河童」は,1927年に発表された小説ですから,すでに古典になっています.
従って,古典度=☆☆☆です.

「使える度」はどうでしょう?
今の世界を眺めてみると,この河童の世界に似たところがあるかもしれない.
独断と偏見で,☆☆☆
一度,読んでみてください.

ちなみに,牛久は河童の故郷といわれています.
小川芋銭の描く河童は,『沼の中に棲息して餌に不自由なく,丸々と肥えふとったユーモアな気分にうたれるところが多い.』(永見徳太郎)だそうです.

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