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両刃カミソリの魅力

僕は生まれつき体毛が濃い方で、中学生に上がる頃にはすでにカミソリを買ってもらった。当時は自分で何をどう選ぶことなんてわからなかったから、父親が三枚刃のジレット(いわゆる洋物カミソリ)を買ってきてくれた覚えがある。もちろん体毛が濃いとはいえ中学生なので、1週間に一度剃るくらいで、しかも横滑り防止機能がついているカミソリだから適当にワシャワシャして結果、きちんと剃れていたから特に気にしていなかった。
それは段々ヒゲが濃くなるにつれてもたいして変わらず、大学院を修了するまで惰性でヒゲで剃ることは変わらなかった。

社会人になってからはもっぱら電気カミソリ(いわゆるシェーバーというやつ)を使って、フィリップスがお気に入りなのだが、社会人のヒゲソリというものはヒゲが目立ってなければいいくらいの認識だったので、本当に適当に過ごしていた。
躁うつ病になってしまい、それからしばらく一切の身だしなみができなくなった。そもそも風呂に入れない、洗髪も洗顔もできない。そんな中で、ヒゲを剃ることなんてもっとできない。
しばらくそういう時期を過ごして、だいぶ回復して、いまでは結婚するぐらいにはなったが、それでもその頃のクセが抜けず、風呂は適当、顔は毎日は洗わない、ヒゲなんて気が向いたら剃ればいい、くらいの認識になってしまった。

ところで僕の妻は二十代前半の頃はおしゃれや化粧に興味がない人間だったのだが、結婚したころからガラっと変わって日々スキンケアと化粧に没頭するようになった。傍目で見ながら「よろしいことですわ~」と他人事のように思っていたが、妻は僕にも「男性こそスキンケアが必要だと思うよ!」としきりに言うのだった。
確かに、僕は顔を毎日洗わないから、肌が脂ぎっていて、ヒゲも伸ばし放題だから不潔で、もともとそうだったのだが、この歳になってからさらに「ニキビが酷くなってきた」のだった。
ほんの少し脂っこい料理を食べたら次の日は必ずニキビができているし、伸ばし切ったアゴヒゲを剃ってみるとブツブツと真っ赤に腫れたニキビが顔を出すことは日常茶飯事だった。
もちろん良くない、不潔だ、なんとかしたい、と思う一方で、ずっと病気が重かった頃の生活を引きずってしまってどうにも頑張れなかった。

そんな中、動画サイトか何かで「最近は両刃カミソリが流行っている」というようなものを見た。両刃カミソリとは何かというと、

こういうような両刃カミソリを専用のホルダーに装着してヒゲを剃るという代物である。昭和の中期ごろはこれがもっぱらの主流で、現代で両刃カミソリを使用するのは懐古主義というかレトロというか、まぁ、実用性はないだろうなと、動画を見た当初の僕は思っていた。
ところが「実際に使ってみた」のような動画を閲覧すると、なんとも「楽しそう」なのである。女性もお出かけやデートでする化粧は楽しいかも知れないが、出社するから仕方なくやる化粧は楽しい訳ではないだろう。
男性も同じようなところがあり、出かける前やデートなどでヒゲを剃る時は少しワクワクするものだが、出社や付き合いで剃らなければならないときは本当にめんどうこの上ない。
しかし両刃カミソリは「剃る行為そのものが楽しそう」に思えたのだ。
はっきり言っていま主流の多枚刃で剃る方が安全だし、便利だという意味では電気カミソリには絶対に敵わない。ただ「楽しい」と、ヒゲを剃ることが一種の作業のようにしか思っていなかった僕には「楽しい」ことが本当に魅力的に思ったのだった。

さてそれでは両刃カミソリを通販サイトでも買って……と思ったが、そこはすんなりいかなかった。なぜなら両刃カミソリ自体もそれを装着するホルダー自体もたくさんあったからだ。
どれが良いのかさっぱりわからない。
多枚刃のカミソリはドラッグストアだとだいたい1000円~2000円で買うことができる。ジレット、シック、フェザー、貝印、だいたいこの辺りのメーカーが売り場にあって、ジレット辺りは少し高いので(モノは良いのだが)シックやフェザー辺りをなんとなく買うというのがいつもの僕だった。
両刃カミソリはザッと数えただけでも20社以上が製造販売しており、日本、アメリカ、ロシア、イタリア、スペインなどなどお国もたくさんだった。ホルダーの方はもっとたいへんで、1000円未満の日本製のものから、2万~3万円くらいするオールメタルな高級品までズラリと並んでいる。
どうすれば良いか、と悩んでいたのだが、そこはやはり動画サイトやブログなどに救われた。
「先ずはカミソリやホルダーより周辺機器を揃えろ」
という話で合った。

上記のブラシを見たことがある人は、男性なら、多いだろう。あれは理容室(いわゆる床屋さん)でヒゲを剃る時に石鹸をワシャワシャやって泡を顔に塗りつけるものだ。
で、どうやら両刃カミソリでヒゲを剃る場合はこれが最も適切らしい。市販のシェービングフォームやジェルでも剃ることはできるそうだが、ブラシだと肌を整えて毛穴までキレイにしてくれる効果がある。粉・固形石鹸ならなんでも対応できるそうで(液体でも工夫すればできるかも知れない)特に固形石鹸を使えば長持ちするそうだからこれはマストだった。
最高級のブラシはアナグマ毛だそうだが、これはモノにもよるが平気で2万円以上するのでやめた。3000円くらいのブタ毛のこの商品を買い3回目くらいまでは獣臭が酷かったが、それ以降はとても柔らかく臭いもなく楽しく使えている。

後はアフターシェビングローションや男性用クリームである。
妻から化粧水などいくらでも使ってよいと言ってもらえたが、どうやら調べてみると基礎化粧品は同様に使っても問題ないようであったが、ヒゲ剃りに関しては男性は男性用を買った方が良いようであった。
というのも、たとえばヒゲ剃り後につける化粧水であるアフターシェビングローションなどは、カミソリの刃によって皮膚はそれなりにダメージを受けているから炎症を抑えたり、ばい菌の繁殖を抑える薬が添加されている訳だ。肌を潤わすだけなら女性用の化粧水でも構わないのだろうが、ヒゲを剃る=多少は肌を傷つけているという考えのもと、キチンとヒゲ剃り後用の化粧水を買わなければならない。
また肌の乾燥を防ぐためのクリームも欠かしてはならない。
色々迷ったが、値段とデザインと効能を鑑みて、画像にあるアフターシェビングローションと男性用クリームを買った。普段でも使えるとあるのであまり目立たないブランドだが、けっこう良い買い物をしたと思う。
使用感として肌が「さっぱりとみずみずしくなる」のである。いや、びっくりした。安い商品だがキチンとケアすればここまで変わるものかと驚いた。

さて、周辺機器を揃えたので実際に両刃カミソリとホルダーを買わなくてはならない。周辺機器の値段を抑えることができたので、それなりに高価なホルダーを買うこともできたが、ここはずっと悩んで「挫折しても嫌だしな~」という超消極的な理由から、パッと目についた中で最も安かったホルダーを買うことにした。

フェザーの公式サイトでは税抜き1000円とされているが、Amazonなどの通販サイトで買うと700円ちょっとで買うことができた。
これを選んだ理由は安かったから、が一番なのだが、その機構と対応する両刃カミソリにもある。
両刃カミソリは両端の長辺がカミソリになっているので取り扱いには十分に気を付かなければならない。刃物は触るだけでは切れない場合もあるが、カミソリは鋭すぎて少し圧迫しただけでも簡単に切れる。だからホルダーには剃る性能以上に両刃カミソリを安全に収納できるか、という点も問題だった。
高級な(1万円以上するような)ホルダーは、ホルダーを全部分解してネジで固定するタイプが多い。これだとカミソリに触れている時間が長く、そしてネジを固定する時点で「うっかり」が想像できてゾッとしてしまった。
しかし上記の商品は根元のダイアルをクルリを回すと、上がハッチのように開閉しスムーズにカミソリを収納することができる。これが僕の中で最も魅力的に映ったのだった。
他に使用できるカミソリの種類もある。
両刃カミソリは国際規格があるらしく、アメリカだろうがスペインだろうが、どこの国のどこのメーカーのカミソリを使ってもほとんど全てのホルダーに納まるらしい。
だからカミソリそのものを楽しむという愛好家もいるのだが、その愛好家が口々にして言うのは「フェザー(日本)のハイ・ステンレスが最も切れる」という。

「切れすぎて怖いくらい」という愛好家さえいるので、どうせ両刃カミソリを使用するなら一番切れるものを、と思ったのだ。
上記のホルダーを買えば「ハイ・ステンレス」が2枚オマケでついてくる。それだったらこの商品を買うのが一番得だという訳だ。

さて、揃えるものは揃えたし、実際に剃ってみるのである。

剃る前と剃った後の画像を添付しようかとも思ったのだが、30代のおじさんの肌を見て誰がおもしろいとも思えないのでそこは掲載しない。
使用感だけを語ろう。
一回目の使用は、とにかく「怖くて」あまり剃ることができなかった。あれだけバリバリに濃くて固い僕のヒゲが「ジョ!」という音と共に真っ新な肌色の平原になったのである。「こ、恐ぇええええええ!」と思った。
それからおっかなびっくりに二回目、三回目、とヒゲ剃りを重ねていき、五回か六回目には首から鼻下までキレイに剃り上げることができるようになった。技術というか慣れは必要で、雑念が入ると少し血をにじませてしまうこともあるが今ではよっぽどでないかぎり出血させることはない。
とにかく「深剃り」が半端ではない。多枚刃ではどんなに力をいれて剃ってもそれなりに青ヒゲが残ったものだが、この両刃カミソリは剃る力加減さえ間違えずにスッと引っ張れば「ジョ!ジョ!」という小気味いい音と共に根深い毛は駆逐されていく。
剃った直後に石鹸を落とすため顔を洗うと、びっくりするくらいツルツルになっているのがわかる。おそらく古い角質をゴッソリ剃っているのだ。これなら女性でもごく軽くなでる程度の使用であれば、ピーリングとかいうのだろうが、それができるかも知れない。決して男性のヒゲ剃りのみに使用が限定されるかと言えば、そうでもないと思えた。

副産物としてニキビが治った。
当初はニキビがたくさんあったので気にせずに剃っていたのだが、ニキビもキレイに剃ってしまうのである。しかしカミソリが鋭すぎて痛みを感じず、あとから「ダラーッと」血がしたたり落ちてきてはじめてニキビまで剃ってしまったのかと気づく。
しかしその後にアフターシェビングローションなどをつけると地獄で「ギャ!」と叫びたくなるほど痛いし、そもそも皮膚を削っている訳だから良いはずはなく、これはどうしたものかと悩んでいた。
そこで「あぁ、ちゃんと洗顔してニキビをケアしよう」と思い立った。
これまで洗顔は気分が乗った時にしかしなかったが、キチンと毎日顔を洗い、妻から勧められた化粧水をつけ、脂物などは控えるようにして生活していたら、ニキビがなくなった。
それとヒゲ剃りを同時並行して行うので、不潔なヒゲが発生していない訳だからニキビができにくくもなった。
両刃カミソリはどう考えても一般的なカミソリや電気カミソリに比べて準備や手間がかかるが「肌をケアしよう」という気持ちにさせてくれるので、玄人向けに見えるが、もしかすると「肌ケア初心者にこそ」向いている商品かも知れない。

僕が買ったホルダーは1000円もしなかったが、中程度の商品で5000円弱、高いものだと1万円以上するので、もしかしたらプレゼントにも勧められるかも知れない。これは男女限らず、仮に脱毛している女性も月に1度くらいは肌を剃ってもいいかも知れない(剃らない方がいいっていう研究結果があったらごめんね)。
また、お金の話で申し訳ないが、たとえばAmazonでジレット(多枚刃の有名メーカー)の替え刃を買うとしたら高いものだと単価500円はするんだけど、フェザーの両刃カミソリ(ハイ・ステンレス)は単価40円とかなんですよ。10分の1以下なんですね。
で、両刃カミソリはメーカーがどう発表しているのかは知らないんですが、毎日ヒゲを剃るとしても2週間くらいは持って、じゃあジレットの替え刃はどれくらい持ちますかって話なんですね。
両刃カミソリはコストパフォーマンスもめちゃくちゃ高いってことで、お話を終わらせていただきます。みんな、両刃カミソリはいいぜ!

以下、プレゼントだったらコレいいんじゃねぇの?ってやつ。

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