牛乳ショック!解決策は?できることとは?

1月23日のNHKの番組「クローズアップ現代」を見て、ようやく消費者の方々へ酪農危機が周知されてきました。

番組放送後、SNS等で反響をみていたところ
・余っているならバターにすればいいじゃない
・国産の飼料に変えられないの?
・私たちにできることはないの?
といった意見がパッと見た感じ多いなと感じました。

バターにすれば牛乳は余らない?

バターを作るためには、牛乳の脂肪分(乳脂肪)を分離します。牛乳中の乳脂肪分は約4%です。そこからバターを作るわけです。1リットルの牛乳から、バターは約40gしかできないんです。
乳脂肪分をぬいた牛乳は、脱脂乳。ここからさらに水分を抜いて乾燥させると脱脂粉乳になります。牛乳からバターを作る時、同時にバターよりも大量の脱脂粉乳が出来上がります。この脱脂粉乳の在庫が過去最高に積み上がったことも、今回の牛乳ショックを生み出している要因です。
脱脂粉乳の在庫問題が解決しなければ、バターにすることも難しいんですよね。作れば作るほど脱脂粉乳が積みあがってしまいます。

14万トンの生乳廃棄の一方で、生乳換算で13.7万トンの乳製品が海外から輸入されていることにも番組には触れていましたが、出来上がったバターを輸入すれば脱脂粉乳は出てきません。

輸入を今すぐ止めて、国内の牛乳でもっとバターを作ればいいじゃない!というのは、脱脂粉乳の問題で難しいといえるでしょう。

国産の飼料にすれば万事解決?

牛乳ショックの大きな要因として、飼料代高騰が挙げられています。
飼料の輸入割合が大きいトウモロコシなどの穀物が、ロシアウクライナ戦争の影響や円安で上がっています。
じゃあ輸入じゃなく、日本で作ればいいじゃない、という意見が出るのも納得ですし、そうしていくべきだと私も感じています。

牛ってね。めっちゃ食べるんです。。。1頭が1日に50㎏ほどの餌を食べます。草の量も、トウモロコシの量もかなり多い。
栽培に大型の農業機械を使うため、狭い土地だと生産効率が非常に悪いのです。労力もかかりますしね。これまでは、飼料を輸入した方が圧倒的に安価でしたし、土地を持たない酪農家も、輸入飼料のおかげで成り立ってこられました。餌を作るのに必要不可欠な大型トラクターは1台数千万。機械そのものも高ければ、修理代もとっても高い。畑を持つ酪農家は大きな投資をして機械を買い、労力をかけて餌を作っています。個々の酪農家が機械を導入し、それぞれが餌を作るのはコスト的にも、労力的にもかなり大変。
「どこで」「誰が」餌をつくるかはとても大きな課題です。

これからの酪農に必要なことは?

飼料の国産化はマストでしょう。
とはいえ、広い土地もない。労力もない。

対策として、稲作農家との協力が挙げられます。
今、米が余っていて、価格もどんどん安くなっていってしまい、稲作農家も厳しい状況です。それなら、田んぼで飼料を作ってもらえばよいのではないでしょうか。
牛たちも米を食べますし、裏作で牧草も育てられます。牧場で出た堆肥を田んぼでの飼料づくりに役立てられれば、糞尿処理の問題もクリアできます。

稲作農家さん達に餌を作ってもらい、酪農家がその餌を買い取ることで労力問題は解決できます。
田んぼが小さすぎると大型機械は入れないので、区画整備をして田を大きく、所有者をまとめたりすることも必要ですね。

稲作農家さんが離農をすると、その農地は耕作放棄地になってしまったり、転用して家などを建てたりするようになります。
一度そうなってしまうと、いざ、人の食糧が不足した時に、農業が営めなくなってしまいます。田んぼで牛の飼料生産をしながら農地を農地として活用して、いざ、人の米が不足した時にはまたお米を育てられる、農地を守ることにもつながります。

それと、粕類の利用です。
食品工場では、大量の粕類が産業廃棄物になっています。
例えば、醤油を絞ったあとの大豆粕。ビールを絞った後の麦の粕。日本酒を絞った後の酒粕。
カット野菜工場からでるキャベツの外皮や芯。
運搬できて流通すれば、みーんな牛たちが食べてくれます。
食品残渣の減少にもなります。

国産チーズを食べよう!

実は、飲用の牛乳は消費が年々落ち込んでしまっています。ヨーグルトなどの乳製品も同様です。
しかし、チーズだけは、消費量がどんどん伸びてきています。残念なことに、消費しているチーズの国産割合は1割にも満たないんです。
日本人がよく食べる「プロセスチーズ」の原料のほとんどは海外のチーズなんです。国産チーズより安価に、大量に手に入るんですよね。
ここに活路があるような気がしています。

消費者の皆様が、牛乳だけではなく乳製品でも日本産の牛乳を使用したもの、を求めることで、みなさまの需要を満たすべく大手乳業メーカーも国産牛乳からチーズを作って販売するようになり、各地のスーパーでも取り扱いを始めるでしょう。
チーズも、ホエイが大量に余るものなので、実現には様々な課題がありますが、伸びているチーズ消費の国産割合が増えれば、牛乳廃棄には大きく貢献する気がしてなりません。

また、チーズ工房が牧場の近くにでき、チーズ職人が地域の牧場の牛乳を買いチーズを作ることは、地域活性化につながりますし、牧場が直接牛乳を販売できる一つの方法になります。

私たちにできること

ズバリ!牛乳をたくさん消費していただくこと。
乳製品は国産牛乳から作られているものを選んでいただくこと。
値上げがあったとしても、変わらず消費していただくこと。
もしも、みなさんが酪農危機のニュースを見て、自分たちにも何かできないの?と思うことがあるようでしたら、まずは日々のお買い物で意識していただきたいのです。
根本的な解決は、国の支援がないと今は難しいでしょう。酪農家の9割が赤字、離農が加速する中、政府は何やってるんだ!という意見もたくさん出ていて、国民からそのような意見が出るのは酪農家として大変ありがたいことです。
今、牛乳が余っているのもまた事実(まあこれも国の方針で増産だったのですがね、、)
消費動向が変われば国も動かざるをえないでしょう。

もし本当に牛乳が誰からも求められなくなるのなら、酪農をやめるしかない。
求められているのに、不可抗力で牛乳が余っていて、減らしたらいずれ足りなくなることがわかりきっている今の状況で、もたずに辞めていかなければいけない状況が悔しすぎます。
持たせるために、牛の早期淘汰で補助金をもらう苦渋の選択しかできないのは、悔しい。

一酪農牧場として

正直、各農家でどうにかできるレベルをとっくに超えてます。

高秀牧場では、平成8年から自給飼料生産に力を入れ始め、餌を極力国産でまかなおうとずっと取り組んでいます。稲作農家と連携して地域で牛の餌を作っているし、粕類もかなり積極的に使ってる。廃棄する野菜をあげてみたり、地域の干し芋工場から出る廃棄の干し芋をあげたりもしています。

それでも、わずかに使う輸入飼料価格の高騰や、光熱費、燃料の高騰による経営のダメージは非常に大きいです。

チーズも作っているけれど、片田舎の小さなチーズ工房のチーズは市場流通にのせられるほど作れるものでもなく。

もどかしい日々。

高秀牧場では、現在、地域で餌づくりの土地を確保し、餌をたくさん作って地域の酪農畜産農家に供給する方法を模索しています。
今、個々の牧場が生き残ることではなく、産業としてどうやって衰退しないかを考えないと、本当に日本の酪農は滅亡してしまう。

六次化のノウハウを他の牧場さんに教えたり、各牧場が設備をもたなくても、委託製造でオリジナル製品を作れないかとも考えています。

そして、何よりも、消費者の皆様に選んでもらえるように、牛を大切に飼い、美味しさと品質を追求すること。
指定団体が全量買い取りしてくれることに甘んじず、万が一廃棄を命じられても自分たちで売っていく覚悟を持ち、選んでいただけるものを生産し続けること。ここだけはぶれずに続けていきたいと思います。

日本から酪農が消えたらどうなる?

牛乳が余ってるのって求められてないからでしょ。
そもそも牛乳って必要なの?
輸入すればいいじゃん。
SNSではこんな意見も実は少なくないです。

日本から酪農が消えたら。。。
給食で毎日牛乳を飲んでくれる子供たち。牛乳が給食からなくなれば、成長期に1日に必要な栄養素を低価格で効率よく摂取することが難しくなります。

日本では飲用牛乳は国産100%を誇っています。冷蔵で、賞味期限が短い牛乳は輸入も難しいですから、日本から酪農がなくなれば、常温保存可能なロングライフ牛乳が主流になるでしょう。味がかなり違います。いつも新鮮な牛乳を飲めている日本人は、「おいしくない」と思うのではないでしょうか。もちろん、生クリームなども新鮮度が違うとあじわいは全く異なります。日本国内で作っている洋菓子なども味が変わってくることは容易に予想できますね。

そもそも、ずっと輸入に頼ってきた日本の食糧。そのために起こっている物価高騰。高いだけで済んでるだけまだマシです。
戦争が、長期にわたって続いたり、隣国を巻き込んだり、、、
飢饉や大災害が起こったり、そんな理由で、食べ物は簡単に手に入らなくなります。
牛に食べさせる餌を作るなら人が食べるものを作った方がいいのでは?とも言われますが、たくさんの野菜、果物、お米を作るのには肥料が必要です。肥料は今もどんどん値上がりしています。
そんな時に役に立つのは動物の糞から作る堆肥。牛は体が大きく糞がたくさん出るので堆肥もたくさん作れます。
酪農がなくなれば、肥料も不足し、その他の食糧生産量も落ちてしまって、食べ物は人々にいきわたりません。

一次産業を守ること

食糧自給は、国防です。腹が減っては戦ができぬ。昔からある諺ですよね。
ミサイル買うより食糧確保の方が大事なのではないでしょうか。
生産規模、流通の仕組み、その他もろもろの事情で輸入食品の方が安くなってしまっていて、安さを求めてきた私たちの日ごろの消費行動の結果が今の牛乳ショックや物価高騰ではないかと思います。
もちろん、安さに頼らざるを得ない、上がらない賃金や税・社会保障負担による生活困窮は、政治の責任も大きいことでしょう。
(投票率の低さを見ると、せっかくの民主主義なのに政治に参加していない人のなんたる多いことか、、、とも思っていたり)

無理のない程度でいいので、みんなが国産品を手に取る意識を持つことで、日本の未来が変わると信じています。
未来の日本でも、牛乳、乳製品が食生活を豊かにしてくれることを強く願っています。

※個人的感情と主観もたくさん書いてしまいました。関係団体のみなさまにおきまして、事実誤認を見つけた場合はご連絡くださいませ、、、。




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