『女子は数学が苦手なのか?』、ただのリケジョが決意したこと。
初めまして。
数学系の女子大学院生です。紛うことなきリケジョですね。リケジョって響きがなんか鈍臭いけど。
リケジョという言葉以上にモヤッとするのが『女子は数学が苦手』。何かそういうことになっている節あるけど、本当なの?
このnote(とこれに続くいくつかの記事)が、『女子は数学が苦手、とは限らない』と感じてもらえるきっかけになれば嬉しいです。
『女子は数学が苦手』・・・には当てはまらなかった
私はこの言葉をいつ誰から教わったのか分からない。けれど誰もがなんとなく知っている概念ではないだろうか。
いやむしろ私は、数学と女子の間のこの暗黙の結びつきを、あまり感じることなく小中高の学校生活を終えられたタイプだ。
理由は単純で、小学生の頃から算数・数学だけは得意だったから。算数や数学の点数が悪くて「まあでも女の子は数学苦手だから仕方ないわよ。」と慰めるのがもし定番なのだとすれば、それとは私は無縁だった。
私の両親は中学受験のための塾に通わせてくれていた。そんなにハイレベルな塾ではなかったけれど、そこでは先生も友達も私の算数の出来をけっこう評価してくれた。
中学・高校と進み、「数学だんだん難しくなるよ〜」と度々先生に脅されたが、むしろ私にとって中学数学は算数よりもずっと楽しくて、高校数学は中学数学よりももっともっと楽しかった。私の数学の成績を評価してくれる人も増えて、高校の頃にはもう『数学が得意』は私の一部だった。
勉強できた自慢みたいに見えたらそれは事実と異なるので国語があまりに不出来だった話を少し。
国語の成績は、小中高しめて12年の学校生活の初めから終わりまでずっと、なかなかに酷かったのだ。例えば小学生の頃、塾で全員が算数の問題を解く時間に私だけ国語をやらされた。中2の模試では学年200人の中で下から5番目の点数を叩き出していた。ちなみに社会科も同様の惨事。
要するに私はただの典型的な理系だ、と言えば話が早い。
算数・数学のことでみんなが褒めてくれる、褒められるから好き、好きだからもっと得意になる、そしてもっと褒められたり期待されたりして、さらに楽しくなる。子どもじみたシンプルな感情に、長い間、強く、突き動かされた。
そしてなんだかもう当然のように数学系の学部を受験して大学に入学、勢い余って大学院まで進んで数学を勉強したわけだ。
要するに、『女子は(文系科目が得意で)数学が苦手』という枠組みに、私は明らかに当てはまらなかった。
本当に女子は数学が苦手か?は絶対に判断できない
『女子は数学が苦手なのか?』
自分自身が明らかな反例である以上、この命題については高校時代もそれ以降もどう理解すべきか悩んだ。現状の私の答えは『分かりようがない』だ。
というのも、数学と女子の問題はステレオタイプ脅威の最も有名な例の一つなのだ。ステレオタイプ脅威とは簡単にいうと、『女子は数学が苦手だ』のような否定的なステレオタイプが、実際のパフォーマンスを低下させること。
『女子は数学が苦手』はたいてい慰めの言葉として使われる、ある意味で優しい言葉なのかもしれない。でもこの言葉のせいで本当に女の子が数学苦手になっているなら悔しくないですか? 私はめちゃくちゃ悔しい。
女子が本当に数学が苦手なのか、それが分かる条件すら整っていない。今の時点で、女子が数学が苦手かどうかなんて分かりようがない、と言いたい。
このステレオタイプ脅威というやつを知ってから、私の夢は完全に決まった。
『女子は数学が苦手だ』という言葉を一度も聞いたことがない世代を迎えること
夢とか言うのは少し恥ずかしいけれど、『女子は数学が苦手だ』という言葉を一度も聞いたことがない世代を迎えること、それに貢献することが私の夢というか目標だ。
自分より上の世代の人たちの意見を変えることは難しいのかもしれない。けれどせめて同世代や、自分より若い世代の人に、具体的には例えば理系進学に興味がある女子高生に向けて、私たちにできることをしたい。いつか何世代か後の子どもたちが『女子が数学苦手?性別って関係あるの?』とぽかんとしていて欲しい。
『女子は数学が苦手だ』という言葉を一度も聞いたことがない世代を迎えるために私ができる小さな一歩目、それが私にとってのこのnoteの位置付けだ。
そんな未来が実現できて、それでもなお"平均的には"女性の方が数学のスコアが低いと証明されたって良いのだ。なぜなら、ささやかでも数学が好きだという気持ちがある女の子の"個人的な問題として”は、きっと『女子は数学が苦手』という言葉を聞いたことがあるかないかが大きな違いを生むはずだからだ。
改めて、このnoteの一番の目的は『女子は数学が苦手、とは限らない』と感じてもらえるきっかけになること。
そしてもう一つの目的が、数学科って女子学生にとってはこんなもんよと知ってもらうこと。数学系の女性のサンプル数はそう多くないだろうから、理系進学を考えている女子高生の参考になったら嬉しい。(同様に男子高校生の役に立てるところもあったら嬉しい。)
この2つの目的のために「数学科に行った女子」として大学生活の中で実際に起きたことや感じたことを、これに続くいくつかの記事に書き残していきたい。
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