0から1になる
成人年齢が18歳に引き下げられた。
だから私は3年前から正真正銘の大人で、21歳の始まりは大人4年目の始まりとも言える。
3年目が4年目になることは何ともない。
問題は、一の位が0から1になること。
生活が、1にしたくなかった0で溢れ返ってしまった。上手く付き合っていかなくてはならない。1度知ってしまった不快さを、酷く現実味を帯びたまま予期できてしまうから動き出せなくなる。緩衝材代わりの好奇心がなくなってしまったから、極めて簡単に折れる。
満員電車の息苦しさも、深夜バイトの眠たさも、一限に向かう冬の朝の寒さも、知らずにいたかった。せめて1回きりで終わりにしたかった。
電車を1本見送るのは、お金がないのに夜勤をしないのは、意地でも一限をとらないのは、1回目に覚えた嫌な味が消えないから。こうやって、知ってしまった嫌なことから逃げ続けている。
21歳になる。これが1にしていい0なのかどうか、私には判別がつかない。抗いようのない成長に、大人の自分に慣れていくことに、寂しさを感じてしまう理由が分からない。
引き続き、生活に散らばっている無限の0を1に変えていく作業を重ねる。
もうそんな体力も僅かばかりしか残っていないけれど、好奇心の死なないうちにできる限りの初めてを重ねたい。食わず嫌いで1を知らないままは勿体ないと感じるから。
1になってしまった0を、少しでも好きになれるように生きていたい。
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