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『バッド・ジーニアス』を見ました

心臓が潰れそう、ドキドキして見てられない気持ちになるのはいつぶりだろう。主人公たちの額に流れる焦りの汗、マークシートを埋める鉛筆の音、計算するときのコツコツした音……。

最初はほんの「友達同士の助け合い」から始まったのに、いきなり資本が登場し、ビジネスになり、破綻する。

しかしまた、「ビジネス」は始まる。今度は自分だけじゃない……。

最初は「自分の頭で稼いだ金がそんなに悪いのか? 」と言っていたリンが下す最後の選択にはかっこよさを感じた。

天才のリン、頭の良さでなんでも得てきたし、多分選択に悩むことはなかった、でも、これからの人生はマークシートじゃない。自分の選択で色んな人が動いた場合、どこまで影響が?とか、「なんでも知ってるしできる」という人間のナチュラルに持つ見下し感と、事件のあとの悔恨が自然ですごくよかった。


リンのカンニングビジネスを壊滅させるきっかけを作ったバンクは、本当に貧困から脱したい人間だったのに、リンの選択の結果で1番窮地に立たされる。最後、リンに「堕ちるのが俺だけなんて許さない」と言ったのは凄みがあった。でも、リンは不正を告白しても「堕ちない」だろうと思った。一番誠実で、不器用で、本当に天才のバンクはあの街角で終えるのだろうか。悲しい。

リンに最初にカンニングを持ちかけたグレース。最初は本当に友情だった。親友だったけど、最後はリンを失うことになってしまう。グレース自体、「頭は悪いけど良い子なんだろうな」というのが伝わってくる。

グレースの彼氏、パット。人たらし。きっとビジネスでもうまくやるんだろうな。資金力がすごい。色々お金出せる。

天才のリンは自分のこと負け組っていうけど、ガチ負け組はバンクなんだよね。母親がブルーカラーで、家と店も一緒で、本当に奨学金が無いと学校に通えない。リンは奨学金なくても学校には行ける。余裕はなくても。カンニングをしたお金持ちはそのまま。

皆同じところにいるようで、全員立場が違って、そしてそれぞれ選んでいく。バンクを犠牲にしてカンニングした金持ち坊っちゃんたちは意気揚々と海外に行く。本当に行くべきバンクはおそらく一生行けない。グレースはリンという、カンニングがなくても仲良かった親友を失った。リンもそう。パットはこれから…失うのかな?

カンニング・クライム・ムービーじゃなくて、すごくスタイリッシュな青春映画にも観える、良い作品でした。音の良い箱で見るといいです。没入感ある。


新宿武蔵野館だと2/7までですが、その後は銀嶺ホールとか早稲田松竹とかでもやるみたいです。