Voice of “usen for Cafe Apres-midi” Crew
2021 Best Selection(12月26日~1月16日)
橋本徹(SUBURBIA)を始めとする
「usen for Cafe Apres-midi」の選曲家17人が
それぞれのセレクトした音楽への思いを綴る
「Voice of “usen for Cafe Apres-midi” Crew」
詳しい放送内容はこちら
D-03 usen for Cafe Apres-midi
http://music.usen.com/channel/d03/
橋本徹(「usen for Cafe Apres-midi」プロデューサー) Toru Hashimoto
ちょうど1年前、世界中が経験したことのない苦難・困難に見舞われた2020年、と書きましたが、2021年も秋まではその印象は変わらず。それでも年末が近づくにつれて、(日本では)少しずつながら希望の光が見えてきた、という感じでしょうか。そんな中で「生きているハンドメイド・チャンネル」という矜恃を胸に、「usen for Cafe Apres-midi」のためにセレクトしてきたタイムリーにしてタイムレスな名作群から、僕が担当する午前0時から8時までの時間帯は特に好きだった計735曲(曲目リストはこちらをご覧ください)を日替わりのシャッフル放送でお届けする“2021 Best Selection”。今年も決して忘れることのできない一年になりましたが、その日々を振り返りながら、人類にとって節目となった季節のサウンドトラック、その集大成として聴いていただけたら嬉しいです。
そして何より嬉しかったのは、20周年を迎えた「usen for Cafe Apres-midi」のアニヴァーサリー・コンピ『音楽のある風景~ソー・リマインディング・ミー』が、遂にクリスマス・イヴにリリースされたこと。詳しくはセレクター17名による収録曲紹介を兼ねたライナー・エッセイをご覧いただければと思いますが、選曲はもちろん、パッケージ・デザインも思わずギフトにしたくなるような素敵な感じに仕上がりましたので、ぜひ手に取ってお聴きいただけたら、これ以上の喜びはありません。
時代の流れもあって、曲単位で音楽に接することが増えていますが、僕はアルバム単位での愛聴作も数多くありましたので、そのベスト50作を自分が制作に携わったコンピレイション2作と共に、ジャケット付きでリストアップしておきます(アルバムとEPのボーダーラインが見分けづらい作品の場合は、7曲以下はEPと判断して選外としています)。No.1フェイヴァリットだったCleo Solの『Mother』を始め、ぜひともその素晴らしさにも触れていただけたら幸いです。不幸な時代でありながら、音楽的には引き続き恵まれていたと思う2021年に感謝と別れを告げて、素敵な音楽との新たな出会いを楽しみに、2022年を迎えましょう。
V.A.『音楽のある風景~ソー・リマインディング・ミー』
Nomak『Free Soul Nomak ~ Twilight Mellow Rendezvous』
Cleo Sol『Mother』
Mustafa『When Smoke Rises』
Nala Sinephro『Space 1.8』
Scott Orr『Oh Man』
TRESOR『Motion』
Sault『Nine』
Juls『Sounds Of My World』
Colin Meckes『Searching...』
Teeth Agency『Cherry Blossom Child』
The Vernon Spring『A Plane Over Woods』
Mndsgn『Rare Pleasure』
Kafari『Blanket Of Black』
Gretchen Parlato『Flor』
Clairo『Sling』
Neil Cowley『Hall Of Mirrors』
Arlo Parks『Collapsed In Sunbeams』
Carlos Niño & Friends『More Energy Fields, Current』
Msaki『Platinumb Heart Beating』
Pino Palladino & Blake Mills『Notes With Attachments』
Brendan Eder Ensemble『Cape Cod Cottage』
Step Tib『Cross The River』
Yasmin Williams『Urban Driftwood』
Alice Phoebe Lou『Glow』
serpentwithfeet『DEACON』
Figmore『Jumbo Street』
Little Simz『Sometimes I Might Be Introvert』
Catbug『Slapen Onder Een Hunebed』
Sampology『Regrowth』
vbnd『Scum Funk』
Bremer/McCoy『Natten』
Portico Quartet『Terrain』
Sam Gendel『Fresh Bread』
Dan Nicholls『Mattering And Meaning』
Adeline Hotel『The Cherries Are Speaking』
Noumuso『Freequency of da Sun』
Makaya McCraven『Deciphering The Message』
Kiefer『Between Days』
Angophora『Together』
Jaubi『Nafs at Peace』
Sam Gendel & Sam Wilkes『Music For Saxofone & Bass Guitar More Songs』
Armand Hammer & The Alchemist『Haram』
Christine Bougie『Firm Believer』
Lorde『Solar Power』
Mr. Jukes & Barney Artist『The Locket』
Keenan Meyer『The Alchemy Of Living』
José González『Local Valley』
Arooj Aftab『Vulture Prince』
Faye Webster『I Know I'm Funny haha』
Enji『Ursgal』
Dina Ögon『Dina Ögon』
富永珠梨 Juri Tominaga
「usen for Cafe Apres-midi」はおかげさまで、2021年に20周年を迎えることができました。リスナーの皆さま本当にありがとうございます。「街の音楽を美しくしたい」──その想いからスタートした「usen for Cafe Apres-midi」。いまあらためて、このチャンネルの選曲家でいられることを誇りに思うと同時に、橋本徹さんへの感謝と敬愛の気持ちでいっぱいです。2021 Best Selectionには、プライヴェイトでも何度も繰り返し聴き続けた、個人的にも思い入れのある作品を選びました。
2022年も皆さまの、日常にそっと寄り添う、心晴れやかになれる音楽とささやかなシアワセを、お届けできたらと思います。
Adrianne Lenker『Songs』
Ed Patrick「Minute Of Your Love」
Pozo Seco Singers『Shades Of Time』
Le Ren『Leftovers』
José González「El Invento」
Clairo『Sling』
Husky Gawenda「Stay Safe」
ノラオンナ『ララルー』
Sachal Vasandani & Romain Collin『Midnight Shelter』
Laufey『Typical Of Me』
Bobbie Gentry『Windows Of The World』
Cande y Paulo『Limite En Tu Amor』
Kings Of Convenience『Peace Or Love』
Jennah Barry『Holiday』
Cleo Sol『Mother』
Laufey & Adam Melchor「Love Flew Away」
山本勇樹 Yuuki Yamamoto
2021年も2020年同様、いやそれ以上に素晴らしい音楽に出会い、心と気持ちが癒された年でした。自分で探したり、友人に教えてもらったり、SNSで知ったり、偶然にラジオから流れてきたりと、その出会い方は様々ですが、よく考えてみると、5年前や10年前に比べれば、とても恵まれた環境にいるなと、つくづくそう思いながら音楽生活を過ごしております。そんな中、今回はこの一年間の選曲リストをあらためて聴き直し、特に思い入れの深い曲を選び60分にまとめてみました。ジャズ・ヴォーカル/アルゼンチン音楽/ロック/ソウル/シンガー・ソングライターというようにジャンルは様々ですが、なかなか良い感じにまとまったのでは、と思います。どの時間帯に流れるかは、今の時点ではわかりませんが、きっとほどよくリラックスしてお楽しみいただけると思います。また個人的には、他のセレクターの皆さんの選曲も楽しみにしています。
Clairo『Sling』
本多義明(「usen for Cafe Apres-midi」ディレクター) Yoshiaki Honda
2021年の自分の中の音楽トピックを思い出してみると、いわゆる和モノの中の70年代~80年代のCity Popばかり聴いていたことがひとつ。USENの他のチャンネルの選曲仕事に関連していたことがきっかけで、さらにもともと好きだったこともあり、もう夏はもちろん3月くらいから10月くらいまで通勤時間や帰宅時間、ちょっとした移動の際にも必ず聴いていた。おかげで以前よりちょっとは日本のCity Popに詳しくなった。
さて、そしてもうひとつの印象深いトピックと言えば、「usen for Cafe Apres-midi」の20周年。記念のコンピCD『音楽のある風景~ソー・リマインディング・ミー』を2021年内にリリースできたこともすごく嬉しいことだった。多くの関係者の皆さんに心から感謝したい。
そんな2021年の自分の音楽ライフを思い起こし、12月の師走の中、時間と心に余裕があるときを見計らって、選曲でよく使った曲や印象に残った曲をもう一度じっくり聴きなおしてBest Selectionとしてランナップした。その中で一枚とか一曲を選ぶのは難しいけれど、ソウルならDurand Jones & The IndicationsやGinger Root、ビートメイカーならFlamingosis、SSWならJohn Roseboro、ジャズならAnatole Muster、新世代ならConor Albert、大御所ならDavid Crosbyが好きだった。
2022年も自分が好きな音楽との出会いを期待しています。
Durand Jones & The Indications『Private Space』
Ginger Root『City Slicker』
Flamingosis『Daymaker』
John Roseboro feat. Lizzy & The Palm「La Nuit Des Temps」
Anatole Muster『Outlook』
Rosie Frater-Taylor『Bloom』
Conor Albert & Alice Auer『Smile』
David Crosby『For Free』
三谷昌平 Shohei Mitani
イタリア・ナポリ出身のシンガー・ソングライター、ジョー・バルビエリの「Promemoria」をオープニングに配した2021年のベスト・セレクション。コロナ禍で一年を通して自宅で過ごす時間が多かったですが、街の活気とは反比例して素晴らしい音楽に数多くめぐり会った年でもありました。特にブラジルのシウヴァとアニッタによるスカ・ナンバー「Facinho」、アメリカ・マサチューセツ出身クレイロの「Amoeba」、ソロ作も素晴らしかったクレオ・ソル参加のUK覆面ユニット、ソーによる「Bitter Street」、テイラー・アイグスティとベッカ・スティーヴンスがグレッチェン・パーラトを迎えたシングル「Play With Me」、20周年記念のコンピレイションにも収録させていただいたイギリスのロージー・フレイター・テイラーとコナー・アルバートとのコラボレイション曲「Be So Kind」(本セレクションではコナー・アルバート名義のヴァージョンをセレクト)、アメリカ・ボストンを拠点に活動するレイヴェイの「Street By Street」等は印象に残りました。2022年も「生きているハンドメイド・チャンネル」として、皆様の心に残るような音楽をお届けしていきたいと思います。新型コロナウイルスが早く終息することを願いつつ、2022年が皆様にとって幸多き年となりますようにお祈り申し上げます。
Joe Barbieri feat. Mauro Ottolini「Promemoria」
Silva『Cinco』
Clairo『Sling』
Sault『Nine』
Taylor Eigsti & Becca Stevens feat. Gretchen Parlato「Play With Me」
Conor Albert feat. Rosie Frater-Taylor「Be So Kind」
Laufey『Typical Of Me』
ヒロチカーノ hirochikano
幾千ものクリックの中から、カフェで流れることを基準に街音の現在進行形を模索しながら、最終的には自分自身の心の琴線に触れた好きなトラックだけを集めて、曲の流れを考えながら、絶妙の間でつないでいく。そんな昔と変わらぬスタンスで続けてきた選曲作業も、今年で20年を迎えたことに感慨深い今日この頃です。続けることの大切さと、続けられることへの感謝を込めて、20年目の節目となるメモリアル・イヤーに相応しい濃厚で充実のベスト・オブ・ベスト選曲を、全曲解説付きで一挙放送します。
01. Wouter Hamel / Escapade
オープニングを飾るのは、“爽やかで素晴らしい日”をコンセプトにしたWouter Hamelの2021年最新作から、アプレミディ感あふれるポップ・ナンバーを。2022年が、この曲のように爽やかで素晴らしい年になることを期待して。
02. Benny Sings / Music
僕の人生に欠かせない唯一無二の価値「Music」。2021年はいろいろな意味で「Music」にとっての特別な一年だっただけに、そんな大切なキーワードをタイトルにしたこのミラクルなトラックを特別な想いを込めて選びました。
03. Paco Versailles / Ventura Highway
カフェ・アプレミディ御用達には永遠のアンセム「Ventura Highway」(オリジナルはAmerica)。2021年の現代に見事蘇ったフラメンコとクラブ・サウンドが融合したこの4つ打ちヴァージョンに揺られていると、過ぎ去ったクラブ・フロアでの日々への想いが溢れてきます。
04. Forrest / Sunlight
「Ventura Highway」の乾いたギターの音色つながりで選んだこの曲は、タイトル名とジャケットのイメージ通り、眩しい太陽の下での青春の1ページのように素敵な気持ちにさせてくれるギター・ポップです。
05. Arlo Parks / Just Go
2020年代の活躍から目が離せないだろうシンガー・ソングライター待望の新作「Just Go」。タイトルの通り、「何も考えず、自分の信じた道を突き進めばいいんだ」とポジティヴな気持ちにさせてくれるでしょう。
06. ADOY / Baby
ほどよい力の抜け具合とポップ・センスが、現代の街の風景にフィットするADOYの最新作より。文脈や知識に頼らずに音だけで選曲していると、結果的に今年は彼らのような韓国産の好トラックに数多く出会えた一年でした。
07. Poolside / Around The Sun
まるでアナログ名盤の中で見つけたかのような、古き佳き時代のウエスト・コースト感が漂うAORなディスコ・ロックを、現代に見事蘇らせてくれた本物嗜好のサウンド創りが見事な一曲。
08. Roosevelt / Shadows (Midnight Version)
昔の12インチ・ヴァージョンを想い出させてくれる長めのイントロとアウトロがナイスなディスコ・ビートへのオマージュに満ちた一曲。ひとまわりして、この手のディスコ・サウンドが新鮮な感覚で心に響く今日この頃です。
09. Clairo / Softly
その美声とサウンド・センスが大好きなClairoの今年のマイ・フェイヴァリット・ナンバーを。後半のロマンティック選曲への転換用のブレイク曲として選びました。
10. Sarah Kang & EyeLoveBrandon / Summer Is For Falling In Love
「夏は恋に落ちるためにある」と題されたタイトルの通り、胸キュンでハートウォーミングなサウンドが素晴らしい2021年のロマンティック大賞の大本命。Sarah Kangのニュートラルで耳心地のいい唄声が頭から離れない一年でした。
11. Ri-An / Confidence
どこか懐かしさを感じるラヴァーズ風の心地いいグルーヴ感の中で、抑制の効いたRi-Anのウィスパー・ヴォイスが重なるミラクルなキラー・チューン。いつもレコードバッグに忍ばせておきたいお気に入りの一曲です。
12. Easy Life / Daydreams
カフェ・アプレミディ・ファンならそのイントロのコーラスに誰もが一度は心を奪われたアレサ・フランクリンの名曲「Day Dreaming」のエッセンスを見事に現在進行形に昇華させてくれたミラクルなカヴァー・トラックを。
13. Sarah Kang & EyeLoveBrandon / Cozy
2021年の一番のお気に入りSarah Kangの唄声の流れから、ロマンティックが止まらない選曲の流れで、コロナでしばらく会えてない大切な友を想い出させてくれる、サビで「コージ」と連呼する彼女のナンバーをもうひとつ選びました。
14. Noa Sainz / qué bueno!
続いては、メキシコシティーの注目のR&BシンガーNoa Sainzのアーバン・ソウルなナンバーを。ラティーノならではのヴィブラートの効いたパワフルな美声と独特のビート感が魅力的です。
15. Hope Tala / Cherries
ジャマイカとアイルランドの血を感じるサウンド・センスとボッサのリズムが融合したお気に入りのナンバーを。ひとまわりして2022年はこの手の“bossa”なリズムが街に再びフィットしそうな予感。
16. Wouter Hamel feat. Lilian Hak / Lucky Streak
どこか90年代のカフェ・ミュージックのエッセンスを感じる懐かしくて微笑ましい男女の掛け合いにシアワセ感が満ちてくるハッピー・ソングを。
17. Anthony Lazaro & Marle Thomson / Like A Song
90年代後半、選曲を始めた当時のヘヴィー・ローテイションだったByron Stingilyの「Flying High」の“bossa”な感覚を、今の時代に再び想い出させてくれたAnthony Lazaroの「Like A Song」。ひたすら繰り返される8小節の“saudosismo”溢れる旋律と、Marle Thomsonの囁くような唄声が深く心に響く逸曲です。
18.Ryan Lerman feat. Larry Goldings & Aaron Sterling / Alone Again (Naturally)
ラストは、この曲のカヴァーがあること自体が珍しい名曲「Alone Again」の“Naturally”な好カヴァーを。「あぁこういうセッションの時間って最近持ててないよなぁ〜」と思わず溜め息が出るホーム・スタジオ一発録りの様子を収めたYouTubeの動画を、全ての音楽好きにお薦めします。
2022年は、こんな風に奏でる生の「Music」の喜びも、ぜひ仲間と感じたくなる今日この頃です。 Music Is My Life! & Have A Nice Year!
Wouter Hamel「Escapade」
Benny Sings『Music』
Paco Versailles『Dancemenco』
Forrest『Effortless』
Arlo Parks『Collapsed In Sunbeams』
ADOY「Baby」
Poolside & Amo Amo「Around The Sun」
Roosevelt『Midnight Versions, Pt.2』
Clairo『Immunity』
Sarah Kang & EyeLoveBrandon「Summer Is For Falling In Love」
Ri-An「Confidence」
Easy Life「Daydreams」
Sarah Kang & EyeLoveBrandon「Cozy」
Noa Sainz「qué bueno!」
Hope Tala『Girl Eats Sun』
Wouter Hamel feat. Lilian Hak「Lucky Streak」
Anthony Lazaro & Marle Thomson「Like A Song」
Ryan Lerman『Friends』
高橋孝治 Koji Takahashi
今年もあっという間に1年が過ぎていきましたが、ここ日本では感染者数が激減してコロナが落ち着いている状況が続いています。オミクロン株なんてものが新たに生まれてしまいましたが、いよいよ飲み薬も承認されるようなので、どうか2022年は全世界で今の日本のような状況になれば良いですね。
さて、2021年のベスト・セレクションですが、今年も希望者は昨年同様2種類のセレクションを作って日替わりで放送ができるとのことなので、喜んで2種類のベスト・セレクションを作ってみました。
コロナ禍になって以降、年間ベストとクリスマス・セレクションを除いた通常放送では、ニュー・リリースの作品のみを使用し、毎回内容を変えたセレクションにチャレンジしようと心に決めて選曲を行い、その結果2021年も使用した作品だけでもざっと450曲くらいの出会いがありました。それ故にベスト・セレクションを選ぶのに1時間では到底足らないと思っていたので、日替わりで構成の違うベスト・セレクションが披露できるのは自分にとっては嬉しい話ですね(笑)。それに付け加えて、クリスマス・セレクションのときもそうでしたが、冒頭に書いたように今、日本ではコロナの状況が落ち着いていて、心が晴れやかな気分で作成できたので、ハッピー感満載なセレクションに仕上がったと思います。
まず1つ目のセレクションは、このベスト・セレクションが終わった後に放送される、2022年最初の放送用の選曲時に出会った、カリフォルニア出身のアーティスト、TVガールがJordana Nyeとコラボして10月にリリースした最新アルバム『Summer's Over』に収録の「Jump The Turnstile」をイントロ後の冒頭に配してスタート。これはリリースほやほやの新しい作品ですが、ベスト・セレクションの中でも一番のお気に入りナンバーで、80年代後半から90年代にかけて流行したグラウンド・ビートのテイストが色濃く出ており、自分の中ではエヴァーグリーンに輝き続けるベティ・ブーの1992年作「Let Me Take You There」を彷彿させて、聴いていると自然に笑顔がこぼれます。
そしてフランス人とアメリカ人からなるデュオ、フリーダム・フライの「One Big Happy Family」や、ミシガン州出身のConnor WrightとKendall Wrightによるインディー・ポップ・デュオのCal In Red「Zebra」、東京で結成されカリフォルニアを拠点に活動するハニー・ホイップの「Pineapple Cloud」など、どれもが笑顔こぼれるハッピーなナンバーで、リスナーの皆様も同じような気分になってもらえれば幸いです。1つ目のセレクションのラストに配した作品は、ニューヨークはブルックリンを拠点とするインディー・ロック・バンドのライトニング・バグが7月にリリースした最新アルバム『A Color Of The Sky』収録の「The Right Thing Is Hard To Do」です。このたおやかで透明感のあるオードリー嬢の歌声と、それを包むコクトー・トゥインズの影響を大きく感じる広大な空間に広がるサウンドに心が癒されると思います。
2つ目のセレクションもテーマは「ハッピー」ですが、こちらはダンス・ナンバーをセレクションの核に置いて構成してみました。まずはこちらもコクトー・トゥインズの影響が色濃く出ているロサンゼルス出身の女性アーティスト、キャロライン・ラヴグロウの2022年1月にリリース予定のニュー・アルバム『Strawberry』より先行シングルとして発表された「Happy Happy」を冒頭に配してスタート。この作品はロビン・ガスリーと共演していたハリエット・ピルビームのソロ・プロジェクトであるハッチ―が2018年にリリースした名曲「Bad Guy」にテイストが似ていますね。続くスウェーデン出身のアーティスト、Augustineの「Backseat」も似たテイストの作品ですが、こちらはギターのカッティング音が心地よく響きます。そして香港で活動するサクラの「Call It Divine」などダンス色の強い作品をセレクトしているのが2つ目のセレクションの特徴ですが、他にはオランダはアムステルダムを拠点に活動するアーティストNadine Appeldoornの音楽プロジェクトMazey Hazeのデビュー・シングル「Sad Lonely Groove」や、オーストラリアはシドニー出身の男女2人組デュオ、Micraの跳ねるベース・ラインが気持ちよい「Undercover Lover」、ニューヨーク出身のMindchatterの「Here I Go Again」、オーストラリアのインディー・ロック・バンド、ジャングル・ジャイアンツの「Something Got Between Us」、City Pop大好き少年キャメロン・ルー率いるジンジャー・ルーツの「Loretta」、こちらもニューヨーク出身のアーティスト、JW Francisの「Tighten Up」似のコミカルな要素もある「Holy Mountain」などをセレクト。カナダはモントリオール出身の女性アーティスト、MUNYAの作品は「Perfect Day」をピックアップしましたが、11月にリリースされたばかりのニュー・アルバム『Voyage To Mars』は全曲素晴らしいですね。中盤にセレクトしたニューヨーク出身のドリーム・ポップ・デュオ、Toledoの「It's Alive!」もメロウでドリーミーな楽曲でとてもお気に入りな作品です。
そして最後は毎年この時期に書いている私的年間ベストな出来事について書いてみようと思います。2021年もコロナ禍故のステイホームで映画ばかり観ていましたが、ある特別な人との出会いがあり、その人のご厚意で貴重な映画をたくさん観ることができました。例えば先日もオークション・サイトに出品され、15万円という高値で落札されていた字幕付きVHSテープの幻級映画である『ローレライ伝説の謎』や、同じく字幕付きVHSテープの幻級映画の『ナイト・オブ・ソーサー』など。その人との信頼関係を保つため、ネットでいろいろと書くことはやめようと思いますが、本当に貴重な映画をたくさん観ることができました。その他の映画の話では、以前このコメント欄でも書きましたが、1984年のアメリカのドキュメンタリー映画『子供たちをよろしく』がめでたくアメリカでDVD・ブルーレイ化され、高画質で再見できたことが嬉しかったですね。大好きになった吹き替え映画の話題では、ずっと観たかった1978年制作のアメリカのサスペンス・ホラー映画の『マジック』の吹き替え版が、1989年に放送された貴重なTV吹き替え音声を収録してDVD・ブルーレイがリリースされたので、念願かなって鑑賞できました。この映画で主演したアンソニー・ホプキンスの演技はただ一言「凄い」ですよ。そして嬉しいニュースがこの年末に入ってきました。ジョン・カサヴェテス監督の『ラヴ・ストリームス』がついにブルーレイ化され、2022年にリリースされるそうです。2013年にDVD化はされていましたが、やっとのことでブルーレイ化されるとのことで、ファンにはたまらないニュースですね。実はこの話題は、12月24日にリリースされた「usen for Cafe Apres-midi」20周年コンピCD 『音楽のある風景~ソー・リマインディング・ミー』の自分の選曲と繋がるものなので、よかったらそちらのライナー・エッセイも読んでみてください。
と、いろいろ書きましたが、何といっても2021年のベスト・オブ・ベストな出来事は、(12月中頃の状況で)日本でコロナの感染者が激減している状態が続いていることです。ホント、これに勝てるものはありませんよね(笑)。
どうかこのままコロナが終わってくれますように……。
Jordana & TV Girl『Summer's Over』
Freedom Fry「One Big Happy Family」
Cal In Red「Zebra」
Honeywhip「Pineapple Cloud」
Besphrenz「Ordinary」
MUNYA『Voyage To Mars』
Dim Sum「Kids Don't Care」
Ider「Cbb To B Sad」
Sweet Trip『A Tiny House, In Secret Speeches, Polar Equals』
Maye「Yours」
Slenderbodies & Crooked Colours「Superpowerful」
Yen Strange「Donnie Darko」
Kraak & Smaak & Tim Ayre「Overdrive」
Eyeclimber「Doomed」
Lightning Bug『Color Of The Sky』
Sleep Surgeon『Neon』
Caroline Loveglow『Strawberry』
Augstine「Backseat」
Sakura「Call It Divine」
Mazey Haze「Sad Lonely Groove」
Micra「Undercover Lover」
Doohickey Cubicle「Milano Sport」
Toledo「Jockeys Of Love」
Layzi「Shoes」
Sonia Gadhia「Be Mine」
Mindchatter「Here I Go Again」
The Jungle Giants『Love Signs』
Ginger Root「Loretta」
Tops「Waiting」
JW Francis「Holy Mountain」
Ed Mount「It Might Be Something」
Juno Disco「You’re So Hung Up On My Colours」
武田誠 Makoto Takeda
今回このコメントを書くにあたって、2021年を振り返ろうと思いDay Oneを開いてみたのですが、当然ながら仕事以外、ほとんど家の周辺でばかりすごしていたんだなあって、あらためて気づかされました。映画館では『竜とそばかすの姫』と『ドライブ・マイ・カー』、美術館にいたっては「GENKYOU 横尾忠則」展を観にいっただけ(どれも足を運んでよかったと思えるものでしたが……)。その分、部屋には読みかけの本ばかりがうずたかく積みあがっています。かといって静かで穏やかな生活をおくっていたかというとそれとも違い、どこか不安と焦燥感に包まれた、地面から身体が数センチか浮き上がったような幾日かを送ってきた気がします。そんな一年を通し紡いできた「usen for Cafe Apres-midi」の選曲の中からお送りする2021 Best Selection。今回も僕が手がける1時間は、例年どおり担当している火曜の午後の、その四季の移ろいを彩ってきた2021年リリースの楽曲から選りすぐったもの(ちなみにMariano Gallardo Pahlenは2021年にフィジカル化された2020年作 、Moonsは2020年12月リリースです)。そして、そんな中から今年の一枚を選ぶとすれば、2021年の心のサウンドトラックとでも呼びたいBrendan Eder Ensembleの『Cape Cod Cottage』でしょうか。5月にオンライン配信された蓮沼執太フィルによる「浜離宮アンビエント」でも感じた、“音楽を奏でることのできる自由”みたいな開かれた喜びのような感覚が思い返される、素敵な短編小説を読んでいるみたいな作品でした。また日本のアーティストであれば、ワールドスタンダードの『エデン』も。それはなんだか学生時代に神保町で古レコードや古本を漁ったり、飯田橋や高田馬場のミニシアターで映画を観ていたときに感じた、2021年と同じどこか得体の知れない不安と焦燥感に駆られながらも、決して悪くなかった日々を思い返させてくれる、美しい甘い翳りを帯びた響きに心癒されたアルバムでした。
それでは、新しい年にむけて、みなさまの健康を心からお祈りします──。
Mariano Gallardo Pahlen『Los Sueños de los Otros』
Brendan Eder Ensemble『Cape Cod Cottage』
Cleo Sol『Mother』
Sault『Nine』
Marina Allen『Candlepower』
Astronauts, etc.「Nature」
Madlib『Sound Ancestors』
Shannon Lay『Geist』
Flanafi with Ape School『Haven't Heard That Voice In Days』
Kalbells『Max Heart』
Cots『Disturbing Body』
Kings Of Convenience『Peace Or Love』
Arooj Aftab『Vulture Prince』
Moons『Blood On Canvas』
José González『Local Valley』
Clairo『Sling』
FAT MASA
2021年もたくさんいい新譜との出会いがありました。
中でもブラジル音楽〜MPBをよく聴きました。
もともとブラジリアン・ソウル〜AORは好んで聴いてましたが、まだまだいい曲あります。
欲を言えば、昔の楽曲をデジタル・リリースする際、リマスターをしてもらえると嬉しいです(マスター・テープがない等で、レコードからマスター起こしをしてる場合は仕方ないとして)。この問題はブラジルものに限らず、なんですが……。
さて今回取り上げたイヴェッチ・サンガロですが、本国ではシンガー・ソングライター以外にも俳優や司会までこなしてるスーパースターのようで、さしずめブラジル版ジェニファー・ロペスのような存在ということも知らず、文句なしに楽曲が素晴らしいです。
DJする際に必ずかけたくなるので、ぜひ7インチ・リリースを願います。B面は2015年リリースのチン・マイアのトリビュート盤『Viva Tim Maia』より「Réu Confesso」のカヴァーを収録していただければ幸いです。
ちなみに2021年ベスト・ライヴはオリジナル・ラヴです。
今年30周年を記念して『風の歌を聴け』『Rainbow Race』リリース時のベース小松秀行、ドラム佐野康夫が加わった最強のパフォーマンスに圧倒された、1995年に観たオリジナル・ラヴ以来26年ぶりの最高の組み合わせに終始、胸も目頭も熱くなりっぱなしでした。
感染予防のため、声出しはNG、手拍子・拍手でしかレスポンスできない状況は歯痒くも、素晴らしいミュージシャンの演奏を肌で感じられる感動を味わえたことに、ただひたすら感謝であります。
オリジナル・ラヴを学生の頃に好きになったおかげで、それをきっかけにブラジル〜ラテン音楽が好きになりました。
2022年はもっとたくさんイヴェントやライヴが楽しめるように願っております。
引き続きよろしくお願い致します。
Ivete Sangalo「Dura Na Queda」
渡辺裕介 Yusuke Watanabe
毎年1年を振り返らせてくれるこのとき。
毎年素晴らしいミュージシャン・音源に出逢えて幸せを感じます。
いつもなら今年リリース音源で選曲するのですが、手元に届くのが遅く、そこまでまだ曲の魅力が身体に染みてない状態だったり。
結局時代を越えた2021年ベスト・セレクションになりましたが、この時代に違和感のない音源であることは言うまでもありません。
リストだけ見るとフリー・ソウル愛の塊でしかないですが。とりあえずアリス・クラークのカヴァーからじっくりどうぞ。
と何もなかったようにポジティヴになれたのはふたつ。
ひとつは、ブルーノ・マーズとアンダーソン・パークの「Skate」のおかげであります。それまで曇っていた空が一気に青空になり、皆が外で踊りだす、そんな爽快な、メジャー/マイナー関係ない街中で四六時中流れていてほしい、そんな思いにさせくれた全ジャンルの頂点といっていい名曲に出逢えたことです。
そしてもうひとつは、dublab.jp suburbia radioの存在です。橋本さんが選曲だけじゃなくて、MC/DJでわかりやすく説明してくれるプログラム。まさに学生時代にFMにかじりついていたあの頃の感覚。しばらくお会いできていないですが、橋本さんの強弱のある解説でそんな壁を越えて、楽しんでいる以上にエネルギーをもらっております。いつも橋本さんの作品の解説を熟読している皆様。このインターネット・ラジオを聴けば、より深く、そしてこの「usen for Cafe Apres-midi」をより一層楽しむことができますよ。
と2021を振り返りつつ、進化し続ける音楽と忘れてはならない音楽と共に2022年を迎える所存です。
では2022もよろしくお願いします。
Toru Hashimoto / dublab.jp suburbia radio
Silk Sonic『An Evening With Silk Sonic』
Le Flex『Pay Close Attention』
Lake Street Dive『Obviously』
waltzanova
このコメントが掲載されるのはクリスマスの翌日、12月26日です。その前々日のクリスマス・イヴは「usen for Cafe Apres-midi」チャンネル20周年を記念したコンピレイションCD『音楽のある風景〜ソー・リマインディング・ミー』のリリース日ということで、もう手に入れていらっしゃる熱心なリスナーの方もいるのではないでしょうか。僕も一曲を選ばせていただいているので、noteの特設記事のコメントをぜひ読んでみてください。
今回、改めて思ったのですが、セレクターの方々の名前を見ると、多くの人が本名でやってらっしゃるんですね。僕は「waltzanova」という名前で選曲やライナーの仕事をしているんですが、この名義で活動していてよかったなと思うことが多々あります。それは本名名義に比べて、意識の上での差異化を図れるというのが一番大きな理由です。レイモンド・チャンドラーが作り出した魅力的な私立探偵、フィリップ・マーロウについて村上春樹が書いていたような「仮説としての自我」を立ち上げるということですね。それによって選曲がより表情豊かになるとともに、それを俯瞰で眺めているもうひとりの僕を発見できるのがとても面白いです。
僕自身もセレクターではありますが、2015年までは一人のファンだったので、そちら寄りでひとことコメントさせてください。チャンネル20周年おめでとうございます! アニヴァーサリーを心から嬉しく思うとともに、これからもチャンネルが継続し、素敵な音楽が紡がれていってほしいなと願っています。
さて、ちょっと長い導入のあと、いよいよ2021 Best Selectionの話です。今年は女性アーティストの作品が豊作でしたね。僕は普段聴いている音楽は男性アーティストの割合が多めになるのですが、「今年の一枚」をイメージしたときにパッと浮かんだ何枚かはすべて女性アーティストのアルバムでした。その中でもクレオ・ソル『Mother』、アーロ・パークス『Collapsed In Sunbeams』と迷いましたが、アトランタを拠点として活動している23歳の女性シンガー・ソングライター、フェイ・ウェブスターの『I Know I’m Funny haha』をベストワンに選出したいと思います。キュートなジャケットやブルーのカラー・ヴァイナル、おまけのシールとプロダクトとしても可愛らしかったのもポイントです。もちろん、彼女のアルバムを選んだのは、その音楽性の素晴らしさによることは言うまでもありません。
一聴するとペダル・スティールが多めにフィーチャーされた浮遊感のあるインディー・フォーク〜ベッドルーム・ポップという趣きですが、その奥にはほんのりとソウル~ヒップホップ的なフィーリングが流れていて、そこが彼女のアルバムを繰り返し聴いた理由だと思います。考えてみると、やはり大好きなマイケル・セイヤーと共通するレイドバック感があることにも今気づきました。
昨年からのコロナ禍という時代状況の中、どうしても個人が内省的になる時間は多かったと思います。1970年代初頭、キャロル・キング『Tapestry』やジョニ・ミッチェル『Blue』、マーヴィン・ゲイ『What’s Goin’ On』やロバータ・フラック『Quiet Fire』をはじめとするシンガー・ソングライター〜ニュー・ソウルのレコードが人々の傷ついた心を癒しましたが、先ほど挙げた2020年代のアーティストの作品群も将来、同じように聴き継がれていくのかもしれないと思ったりします。
春の訪れの季節に届けられたグレッチェン・パーラト11年ぶりの新作『Flor』もかなりの愛聴盤でした。そこに収められていたデヴィッド・ボウイの「No Plan」が、なぜか最近の僕の心境にぴったりなんですよね。この曲は彼が最後にリリースした遺言のような曲。世界や周囲への異和と戸惑いとともに、自身について確信をもって語るこの曲が、今の僕にはすごくぴったりと来ます。コロナ禍以降、まるで世界線が違ってしまったような不安に囚われながら、「でもこれしかない」というような思い。それは確信というよりは自分の周りにある何かにしがみついているような感覚なのかもしれませんが、この不確かな世界で生きていくんだ(生きていかなければならない)ということだけは感じますし、世界同様にこれからの自分自身もまた不定形に変化していくのでしょう。
改めて21年目の「usen for Cafe Apres-midi」チャンネルもよろしくお願いします! 素敵な年末年始をお過ごしください。
Faye Webster『I Know I’m Funny haha』
中村智昭 Tomoaki Nakamura
このアルバムを、リリースされた12月4日の夜に渋谷Bar Musicでかけていたら、お客様のテーブルから「あ、Nujabesだ」という声が聞こえてきた。それは間違ってもいるし、正しくもある。Nujabesが紡いだ12のメロディーを、haruka nakamuraが新たな解釈で演奏する──Nujabesの遺品であるフルートが使用されているという事実以上に当然胸を打つのは、haruka nakamuraの中にある在りし日の記憶と共に、音楽が祈るように奏でられているということだ。没後10年の節目にレーベルHydeout Productionsからの依頼で実現したこの作品は、2010年の2月26日に突如止まってしまった時を進めるものとして、また、残された者たちへのマイルストーンとして、正統に聴き継がれてゆくことになるだろう。そして2021年の終わりにこのアルバムが届けられたことは、ある種の音楽ファンにとっては救いのようなものなのかもしれない。僕には、パンデミックがもたらした長いトンネルの先にある、微かな、そして穏やかな光のようにも思えた。新たな年はより日常が戻り、あなたに、素晴らしい音楽体験が溢れますように。
haruka nakamura『Nujabes PRAY Reflections』
吉本宏 Hiroshi Yoshimoto
Please take it easy on me... と歌いだされる早春の季節の名残を感じさせるeverestの「Sleep Song」から始まった2021年。今年も上半期と下半期と2本に分けて楽曲を選び、それぞれから作品をピックアップ。
この初夏に印象に残ったのはスイスのStep Tibの「Lake」からニュージーランドのMild Orangeの「Getting Warmer」につながるまろやかなエレクトリック・ギターの音色。その清々しい音色とともに2021年の夏が記憶された。上半期は、ロンドンのNOXZの「Flap To This」やロサンゼルスのPinceyの「No Fun」など、サウンド・クリエイターが生み出す弾むビートが心地よく、極めつけは同じくロサンゼルスのJohn Carroll Kirbyがバンド編成で吹き込んだアルバム『Septet』だった。そのサウンドは70年代後半のメロウなクロスオーヴァー・フュージョンという趣で、Chico Hamiltonの1979年のアルバム『Nomad』の「Denise」をサンプリングしたスウェ-デンのTooliの「You」などとも共鳴するセンスを感じる。2017年のデビュー作から毎作かならず選曲に加えているJohn Carroll Kirbyのこれまでの作品群を振り返るにつけ、彼の音楽の志向は常にピュアで自らの関心の上に立っていることをあらためて感じさせられた。
下半期はメロウな女性アーティストの歌が数多く耳に留まり、アメリカではヒューストンのPeytonのモーリス・ラヴェルの「水の戯れ」のフレーズを忍ばせた「Haters」やデトロイトのNaomi Jayの「I Wonder」の伸びやかなヴォーカル、ニューヨークのYaya Beyのまどろむような「Made This On The Spot」などの良作が印象に残った。さらにロンドンに目を移せばAmariaをフィーチャーしたK, Le Maestroの「Out Late」、母になってさらに深みが増したCleo Solの「Promises」、flyt の「Come Back」などが霧のロンドンの夜のとばりに滲むように優しく揺れた。特に秋にリリースされた、Arlo Parksとも共演したシンガーMadeleineのデビューEP『Colour Me』のメロウな歌声がたゆたう4曲はどれも夜の選曲によく合った。
追記:12月にリリースされたharuka nakamuraがNujabesに祈りを捧げたアルバム『Nujabes PRAY Reflections』は、resonance musicでアルバムを共同制作したharuka nakamuraと田辺玄のユニットorbeを経て生まれてきたサウンドに満ちあふれていてうれしくなった。オープニングのharuka nakamuraが弾くJoachim Kuhnの「Housewife's Song」のピアノのフレーズからNujabesを含めいろいろな思いが交錯し、まさに2021年の“Reflections”としてまばゆい締めくくりとなった。
Step Tib『Cross The River』
Madeleine『Colour Me』
中上修作 Shusaku Nakagami
2021年も感染症という未曾有の危機に右往左往した年でありましたが、そんな状況でも人間は慣れていくもの。なんかフツーの生活の一部になってきた(マスクが身体化してきた)ような気がする。いつしか感染症は収束するし(次世代型の変異株がどんちゃん騒ぎを起こさないかぎりは)、また気軽に旅行もできるだろうけど、人の顔、街の空気がずっしりと重く感じられるのは、感染症が引っ掻いた爪痕が、あんがい精神面にふかく作用しているからかもしれない。
2021年はあえて短調の曲や少し苦味を感じさせる曲を多めにブレンドしつつ、それでも「ハッと」した軽みを大事に選曲しました。あとは世界的なトレンドであり(←当社比)ここ数年追求しているプログレッシヴ・ジャズ(←個人の命名)、たとえばヒエロニムス・トリオやレミー・ル・ブーフなどを街のBGMに仕立ててもらえたのは痛快ごとでした。
隣人にやさしく、自分も大切に。みんなが自発的に幸せをめざすことができる、2022年もそんなBGMセレクターでありたいとつよく願います。
Gian Slater & Hieronymus Trio『Where The Rest Of The World Begins』
高木慶太 Keita Takagi
積極的にコレクションしているわけではないけれども、琴線に触れるものに出逢ってしまうと無条件降伏してしまうのがデュエット・ソング。2021年もけっこうな数の共演もとい共艶に耳と心を溶かされた。中でも初めて聴いたときのインパクトが未だに同心円状に広がり続けているBLOW & Anna Majidsonの「Shake The Disease - A COLORS SHOW」が白眉。迷うことなくベスト・セレクションに選んだ。
BLOW & Anna Majidson「Shake The Disease - A COLORS SHOW」
小林恭 Takashi Kobayashi
2021年は17人の選曲家仲間が選び抜いた現代の名曲が連なる「usen for Cafe Apres-midi」の20周年を祝うアニヴァーサリー・コンピ『音楽のある風景~ソー・リマインディング・ミー』が12/24にリリースされました。今回はその中で僕が選んだ曲でもあり、今年のベスト・セレクションにも選んだAntonio Loureiroの「Saudade」をライナー・エッセイからの文章を加えながら紹介します。
郷愁、憧憬、思慕、切なさなどの意味合いをもつポルトガル語のSaudade(サウダージ)というタイトルは、家族や信頼する仲間たちと集い、守られ、無邪気に楽しい日々を過ごしたビフォー・コロナ時代の郷愁を感じたり、ニュー・ノーマルな世界に移行したあとに昔を懐かしむような感情を思い起こさせます。それと同時に軽快なサウンドは、先の見えない重苦しい今の空気感を一掃してくれるような、不思議な爽快さと力強さを感じさせ、その美しさに惹かれます。
2021年も音楽に満たされる一年になりました。そして2022年も音楽に満たされて世界の人々にとって新たな美しい世界が開かれて、良い一年になりますように。
Antonio Loureiro「Saudade」
添田和幸 Kazuyuki Soeta
2020年に引き続き2時間(1時間×2)枠をいただきましたが、全く足りず、あれやこれやと思案しながら削って削ってなんとか完成したベスト・セレクション。CDの購入はグッと減りましたが、アナログ盤にデータとよく買った実り多き一年でした。2021年はチャンネル20周年という節目を迎え、気持ちを新たに2022年も素敵な音楽をリスナーの皆さんにお届けできればと思っています。
Green-House『Music For Living Spaces』
222『Song For Joni』
Mia Doi Todd『Music Life』
Danny Scott Lane『Cape』
Feng Suave『So Much For Gardening』
Jack Page『The Days』
Ferran Palau『Parc』
Common Saints『Starchild』
Silk Sonic『An Evening With Silk Sonic』
Aaron Frazer『Introducing...』
Cleo Sol『Mother』
Scott Orr『Oh Man』
The Vernon Spring『A Plane Over Woods』
Remis Rančys『Pavėjui』
Puma Blue『In Praise Of Shadows』
Silas Short『Drawing』
Fabiano do Nascimento『YKYTU』
Arooj Aftab『Vulture Prince』
Enji『Ursgal』
Rita Payés & Elisabeth Roma『Como La Piel』
Kings Of Convenience『Peace Or Love』
David Walters feat. Vincent Segal, Ballaké Sissoko & Roger Raspail『Nocturne』
Shin Sasakubo『Chichibu』
Dan Nicholls『Mattering And Meaning』
Nala Sinephro『Space 1.8』
Gabriels『Love And Hate In A Different Time』
James Blake『Friends That Break Your Heart』
Dos Santos『City Of Mirrors』
Beverly Glenn-Copeland『Keyboard Fantasies Reimagined』
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