Voice of “usen for Cafe Apres-midi” Crew
2024 Winter Selection(1月15日~2月25日)
橋本徹(SUBURBIA)を始めとする
「usen for Cafe Apres-midi」の選曲家17人が
それぞれのセレクトした音楽への思いを綴る
「Voice of “usen for Cafe Apres-midi” Crew」
詳しい放送内容はこちら
D-03 usen for Cafe Apres-midi
http://music.usen.com/channel/d03/
2024年スタート、今年もよろしくお願いいたします。年始から災害に見舞われ、世界各地で戦火も絶えず、哀しみに暮れてしまうことの多い時代、コロナ禍からの復興もめざす街並みと、そこに暮らす私たちの営み・心象風景を、少しでも素敵な音楽で彩ることができたらという希いと思いをこめて、メロウ&グルーヴィーで心地よい楽曲を中心に、今回は計28時間分を新たに選曲しました。
月〜日を通してのTwilight-timeの特集は、僕が選んだ2023年のベスト・トラック1,000曲(曲目リストはベスト・アルバム70作とともにこちらに掲載されています)をシャッフル・プレイ放送で。心の平穏・安寧を保ちながら、毎日を晴れやかな気分で明るく前向きにすごすための、フレンドリーな日常のBGMとしてお楽しみいただけたら嬉しいです。
その他の時間帯は、昨秋から今冬にかけてのニュー・アライヴァルを、いつものように惜しげもなく投入していますが、2023年の作品でありながら、昨年「usen for Cafe Apres-midi」で紹介できていなかった、この冬休みに知って愛聴するようになったアルバム(例えばNAFTAやNãnan, Luizga & Gustavito、ArarやRoom 308など)からもエントリーしていることを、特筆しておきましょう。セレクションでとりわけ活躍してくれた28作(いずれも3曲以上をセレクト)のジャケットを、アーティストABC順に掲載しておきますので、その中身の素晴らしさにも触れてみていただけたらと思います。
2024年は“香りと音楽”をテーマにした僕の新しいコンピ・シリーズもスタートしますし、『Free Soul』は30周年、カフェ・アプレミディは25周年を迎えるアニヴァーサリー・イヤーですが、初心を忘れることなく、素敵な「音楽のある風景」が訪れることを祈って、日々の選曲に励んでいきたいと思っていますので、新しい一年もぜひ「usen for Cafe Apres-midi」とおすごしください。
Amber Navran『Knock On The Orange Door』
Arar『Arar』
Beirut『Hadsel』
Ben Hughes『MANHA』
Bruce Brubaker『Eno Piano』
Helena Deland『Goodnight Summerland』
Jack Peñate『Wondrous Strange』
Jeff Bernat『Love, Jeffrey』
John Douglas『John Douglas』
Julia Logue『Welcome To Your Sunrise』
Juls『High Life Sessions』
Kelvin Momo『Kurhula』
Lexx『Home Away From Home』
Maisie May『2much2give』
Meduulla『Oblongata』
Minhwi Lee『Hometown To Come』
NAFTA『NAFTA II』
Nãnan, Luizga & Gustavito『O Destino do Clã』
Nkosi Zondo『Bophelo Batho Pele』
Park Bird『All To Bones』
River Tiber『Peace』
Room 308『All My Friends』
S. Carey & John Raymond『Shadowlands』
Sullivan Fortner『Solo Game』
Svaneborg Kardyb『At Home (An NPR Tiny Desk Concert)』
Terrace Martin『Ornamental』
Thando Zide『UMvulo』
Theo Bial『neo-bossa』
スウェーデンの4人組バンド、Dina Ögonのサウンドは、ラウンジ、ソウル、ソフト・ロック、ジャズ、ファンク、フォーク、サイケ、ボサノヴァなど、様々な音楽を消化しながら透明感を失わないミクスチャーなポップスといった感じで、けっこう好みだったりする。ファースト・アルバム『Dina Ögon』、セカンド・アルバム『Oas』に続く2月にリリースされるニュー・アルバムが待ち遠しいので、今回は先行シングル曲の「Det lacker」をピックアップした。北欧の雰囲気もあり冬の空気にも合うと思う。
Dina Ögon「Det lacker」
2023年によく聴いていたものを振り返りながら選んだウィンター・セレクション。中でも昨年9月に46年もの時を経て初公開となったファラオ・サンダースの『Harvest Time Live 1977』は震えるほど素晴らしいもので、購入以来毎夜プレイしています。畝るベース、メロウに揺らめくローズ・ピアノ、そして深淵で朗々とブロウするファラオ。今回、一曲18分にも及ぶ長尺の「Harvest Time Live - Middelheim」は、深夜2時へと向かう選曲のラスト・ソングとしてあります。そこまでお付き合いいただければ嬉しいです。ぜひご一緒しましょう。
Pharoah Sanders『Harvest Time Live 1977』
Dinner-time 月曜日18:00~24:00
Cafe Apres-minuit 火曜日0:00~2:00
去年のベスト・セレクションにも選んだトルコの女性ピアニスト、Büşra Kayıkçıのアルバムを改めてピックアップ。「Farewell」の圧倒的な音像に引き込まれて取り憑かれたように繰り返し聴いた、個人的に2023年後半のベスト・トラックです。リスナーの皆さん、2024年も「usen for Cafe Apres-midi」チャンネル共々よろしくお願いいたします。
Büşra Kayıkçı『Places』
Luiz Murá『Solitude』
Makushin『Move Into The Luminous』
Aaron Taylor『HAVE A NICE DAY!』
Jack Page『Run Into The Night』
Belén Natalí『Jacarandá』
Claudia Isaki『More Flowers』
Felix Ames『JENA』
Amber Navran『Knock On The Orange Door』
V.A.『Puzzles Vol. 5』
Busty And The Bass『Forever Never Cares』
Myele Manzanza『Crisis & Opportunity, Vol.4 - Meditations』
Mbuso Khoza『Ifa Lomkhono』
Ben Lumsdaine『Murmuration Without End』
Ancient Infinity Orchestra『River Of Light』
Joshua Van Tassel『The Recently Beautiful』
Pausis『Pausis』
Golden Retriever『Kizuna Encounter』
Spencer Zahn『Statues II』
Tristan De Liege & NoKillShelter『Coumarin / Forma』
Norio『Daidara Bou』
sTia『home』
Miguel Atwood-Ferguson『Les Jardins Mystiques, Vol. 1』
野流『梵楽』
Dinner-time 火曜日18:00~24:00
Cafe Apres-minuit 水曜日0:00~2:00
ポジティヴな話題に欠く昨年末からの流れはあるものの、それはそれ。春の息吹を眼前に控えては、いつまでも後ろなんて振り向く時間なんてもったいない! ですよね?
電撃的な移籍をとげたドジャースの大谷選手をはじめ、どのような世界やジャンルにも、逆立ちしても太刀打ちのできない二刀流がいるものです。今回ご紹介する、ヴィンセント・リンもその一人に指折っても許されるでしょう。名前を書くと映画ファンは「え? まさか、あの香港スターのこと?」とおっしゃると思うのですが、残念ながら正解です。
彼は武術の達人でありながら映画界にも進出。若くして19本もの映画に出演する、れっきとしたアクターなのですが、忙しい日々を送りながらも音楽への憧れは断ち切ることができず、名門ボストン音楽院やイェール大学音楽学校などに学びピアニストとしての道をも手中に収めてしまうのです。
2011年にリリースされた本作は、彼のオリジナル曲と厳選されたスタンダード・カヴァーにより構成された瀟洒な内容ですが、特筆すべきは本業ミュージシャンをも圧倒する選曲センスとアレンジ能力。昨年末に本作を手元に寄せていらい使いつづけている「ジムノペディ・ワルツ」はその名のごとくエリック・サティ作曲の「ジムノペディ第1番」をワルツ・アレンジにした作品で、自身のピアノは黒子に徹しつつチリが誇る才色兼備のマルチ・プレイヤー、カミラ・メサのギターが花を添えた、まさに「ヘヴン・バウンド」な内容です。
映画人のなんちゃってヴォーカルやYouTubeごっこなんて、足元にも及ばないセンスの良さ。「真の二刀流は一流をも凌駕する」とは私以外だれも言っていませんが、彼ヴィンセント・リンだけは誰もが肯首するレジェンドだと思うのです。彼の豊かな生き方こそ、末法の世を生き抜くひとつの指標となりえるでしょう。
世の中は可能性に満ちているんだ。だから、後ろなんて振り向いている場合じゃない!
心からそう思います。そして彼の背中を追う一人になりましょう、あなたも私も。
Vincent Lyn『Heaven Bound』
Dinner-time 水曜日18:00~24:00
Cafe Apres-minuit 木曜日0:00~2:00
昨年末に六本木にオープンしたレコード・バー「MUSIUM」(店内のレコードは全てUSEN所蔵のもの)で、DJ MITSU THE BEATSからバトンを受けてDJをした。彼のプレイは端正でブレがない。特にローズ・ピアノの音色を操らせたら右に出る者はいないだろう。「スタイルを持つ」ことの大切さを再認識させられた。
さて、自分のスタイルとは? その答えを見つける2024年にしたい。
José James『Blackmagic』
Dinner-time 木曜日18:00~24:00
Cafe Apres-minuit 金曜日0:00~2:00
あけましておめでとうございます。
2024年もよろしくお願い申し上げます。
昨年は前年末から転倒で骨折、翌日に鹿を轢いてしまい車が大破などズタボロでしたが、自分の店「JOYOUS」に敬愛するジャパニーズ・ソウル・シンガーのレジェンドが御来店する奇跡のような嬉しいことがありました!
ただ年末年始に少々ヘヴィーな仕事量だったため、免疫力が落ちて正月明けにダウンして伏せっておりました。
一日も早く復帰したいものです。
さて、Jack Pageの新譜なんですが、2023年の2月に出てたんですね。
最近見つけて、すごく良くて聴いているんですが、アナログ盤でしっかり聴きたくなるようなアルバムの内容も抜群で。Pヴァインさん、いかがでしょうか?
なんて微かな期待をしつつ、2024年も皆様の充実したミュージック・ライフとご健康を願っております。
Jack Page『Run Into The Night』
まずは元日の能登半島地震により被災された皆様、並びにそのご家族の皆様に心よりお見舞い申し上げます。被災地の安全と一日も早い復興をお祈り申し上げます。
2024年最初となるウィンター・セレクションは、LAジャズ/ネオ・ソウル屈指の人気バンド、ムーンチャイルドの「Money」のアコースティック・ヴァージョンでスタート。この曲は彼らが過去にリリースした作品を再構築したEP『Reflections』に収録されているもので、本セレクションでは他に、ヒット曲「Cure」のアコースティック・ヴァージョンも収録させていただきました。彼らのここ数年の成長を物語る素晴らしい作品となっておりますので、興味のある方はぜひ聴いてみてください。
新年早々悲しいニュースからスタートした2024年ですが、本年も音楽が持つ可能性を信じて、微力ながら皆様の生活が少しでも彩り豊かなものになるよう心を込めて選曲してまいりますので、引き続きご愛顧賜りますようお願い申し上げます。
Moonchild『Reflections』
皆さま、あけましておめでとうございます。
今年も音楽を通じて素晴らし出逢いに期待しながら、あらゆる音楽の融合によるカフェ・ミュージックを追求していく所存です。
年間ベストを制作した後にもどんどんリリースはされていて、音楽を浴びる年末年始。
昨年の日本の楽曲で一番心に染みたのは、藤井風の「花」という作品。
シカゴの「Saturday In The Park」マナーな、あのピアノの音。
そんな彼の作品が頭から離れない中、Antonio Barretの奇跡的なピアノ・バレアリックなシングル「2 AM」。
永遠に聴いていたいシティ・ソウル。
そんな楽曲のおかげで無事、頭から楽曲は離れると、結局年間ベストに入れるか悩みに悩みすぎて鬱になってしまった昨年の私の個人的名盤、Depeche Modeのアルバム『Memento Mori』から「Ghosts Again」を収録。
何度聴いても泣きそうになる名曲。
そんな今となっては大御所ミュージシャンの偉大さを再確認しております。
忘れてはならない名曲と素晴らしい新曲を今年はブレンドしながら皆様にお楽しみいただけるように最善を尽くします。
今年もよろしくお願いします。
Antonio Barret「2 AM」
Depeche Mode『Memento Mori』
Dinner-time 金曜日22:00~24:00
Cafe Apres-minuit 土曜日0:00~2:00
イギリスはウエスト・ヨークシャーの都市、キャッスルフォード出身のシンガー・ソングライター、ホット・レフト・ポールが2023年にリリースしたアルバム『The Same Mistakes』から「Don't Care」を2024 Winter Selectionの1曲にセレクトしました。繊細で穏やかな歌声、柔らかなギターのフィンガーピッキングと、心に優しく寄り添う牧歌的なメロディー。北風に凍えた指先を、白い息を吐きながら温めているような、そんな北国のワン・シーンを想起させる、素朴な美しさを湛えた一曲です。
新しい年が始まりました。今年一年も、「usen for Cafe Apres-midi」を聴いてくださる皆さまが、心晴れやかになれる音楽をお届けできたらと思います。2024年もどうぞよろしくお願いいたします。
Hot Left Pole『The Same Mistakes』
今年もどうぞよろしくお願いします。2024年も音楽に満たされて、そして世界の人々にとって新たな美しい世界が開かれて、平和な一年になるように、祈るように選曲していきます。
今回紹介したいのは、まず新鋭のサックス奏者Isaiah Collierのニュー・アルバムからの「Village Song」です。
前半はカリンバの音色が心地よいアンビエントなムードではじまり、中盤からJimetta RoseとIsaiah Collierのソウルフルな歌声と躍動感あふれるグルーヴに心躍るスピリチュアル・ジャズです。今回は選曲していませんが、アルバムの1曲目のスピリチュアル・ソウル「Eggun」では、彼が影響を受けた音楽、Sun Ra〜Pharoah Sanders〜J Dilla〜Fela Kuti〜Miles Davis〜Gil Scott-Heron〜Frankie Knuckles〜Marvin Gayeなどをリーディングしていて心に染みます。アルバムではまだちゃんと聴けていないので、LPが届くのが待ち遠しいです。
それとApolline SchöserとThomas Coqueletからなる新鋭KOUも印象に残りました。彼らのヴォーカル、アコースティック・ギター、ピアノ、管楽器、エレクトロニクス、サウンド・エフェクト等が交わるような音楽は、ポップさとアヴァンギャルドさが程よくミックスされていて、今の自分にフィットします。デビュー・アルバムから「Gartenschläfer」を選曲しています。
今年も様々な新鮮な音楽を織り交ぜて、季節にマッチする楽しめる選曲をめざしますので、どうぞご贔屓ください。
Isaiah Collier『Parallel Universe』
Mia Doi Todd「Island In The Storm」
KOU『KOU』
Marco Castello『Pezzi Della Sera』
christoph el' truento『Circle Of Friends』
Resavoir『Resavoir』
Astrid Sonne『Great Doubt』
Paul Grant feat. Chris Keys「Rivers」
sphontik「The Next Vacation」
Nina Camillo「Flor Da Pele」
Jamila Woods『Water Made Us』
Bruno Berle「Tirolirole」
2024年、新年の幕開けを飾る選曲にふさわしい1曲として紹介するのは、今最も注目したいネオ・ソウル系シンガー・ソングライターの一人、Lizzie Berchieの最新曲「We Found Love」。ミニー・リパートンへのオマージュを色濃く感じるエヴァーグリーンなキラー・アレンジと、そのサウンドに心地よく溶け合う抑制の効いたソウル・ヴォーカルが絶品です。今年もこの曲に代表されるような世界中の現在進行形のGood Musicの中から、アプレミディ選曲の本質を探求してまいりますので、引き続き「usen for Cafe Apres-midi」をご愛聴よろしくお願い申し上げます。
Lizzie Berchie「We Found Love」
冬の口笛。切ないメロディーが冬の澄んだ空気の中に静かに響く。LAの口笛の名手Molly Lewisが2月にリリースするデビュー・フル・アルバム『On The Lips』からの先行シングル「Lounge Lizard」。その口笛にはフランソワ・ド・ルーベの音楽のような哀愁が漂い、ノスタルジックな映画のひとコマのように気だるいテナー・サックスが響く。
Molly Lewis『On The Lips』
2024年が始まりました。中学生のとき、スタンリー・キューブリックの『2001年宇宙の旅』を観て感動し、2000年イコール未来だという想いがあった昭和生まれの自分ですが、2000年代に入ってから早くも四半世紀近くが経とうとしているんですね……。そしてAI技術の向上で世の中は驚くような進化を続けておりますが、『2001年宇宙の旅』のHAL9000や『ターミネーター』のスカイネットのようにその技術が自我を持って悪の心を持ってしまわないか、要らぬ心配をしてしまう妄想老人なのでした。
さて2024年冬の一発目のセレクション、まずは爽やかなネオアコ感あふれるワシントン州シアトルで活動するBeach Vacationのニュー・アルバム『Coping Habits』から「Up Late」をピックアップしてスタート。続く2023年のベスト・セレクション入りを果たしたPearly Dropsの「Haunted」を挟み、イギリスのケント州出身の女性アーティスト、PinkPantheressのドリーム・ポップとドラムンベースが融合した最高の1曲「Capable Of Love」や、イリノイ州シカゴの男性アーティストHuron Johnの「Caldera」、マサチューセッツ州ボストンの男性アーティスト、Alan KiteがHaley Paigeという女性アーティストをゲスト・ヴォーカルに迎えた「Camera」など、多幸感あふれる素敵なダンス・ナンバーが続きます。ディナータイム前半には他に、ロサンゼルスで活動する女性1人男性2人からなるCannonsの「Can You Feel My Heart」や、ニューヨークの男性アーティスト、A Beacon Schoolのニュー・アルバム『Yo Yo』収録曲「Middle Of Winter」、オレゴン州ポートランド出身の男女デュオ・ユニット、Pure Bathing Cultureのニュー・アルバム『Chalice』収録曲「The Lovers」など、幻想的なまさにドリーム・ポップといった趣きの素敵な作品もセレクトしています。
ディナータイム後半は、ロサンゼルスの女性アーティスト、Lexi Vegaの音楽プロジェクトMini Treesの最新作「Push And Pull」を冒頭に配置し、同じくロサンゼルスの女性アーティストHoliday Sidewinderの「Escape & Retreat」、ロンドンのR&BシンガーGeorge Rileyのニュー・アルバム『Un/limited Love』収録曲「Elixir」、シカゴで活動する5人組バンドDivino NiñoがロサンゼルスのバンドInner Waveとコラボした「Nos Soltamos Chiliado」、2023年のベスト・セレクション入りを果たしたMunanの「Comes In Two」やValley Palace の「Time With You」などをセレクト。清楚でアコースティックな調べが美しいカナダはモントリオール出身の女性アーティスト、Helena Delandの「Drawbridge」もかなりお気に入りの作品なんですが、この作品を初めて聴いたときに何かの作品に似ていると思い10分くらい考え込んでしまいました。そしてハッと思い出したのですが、この作品は1969年公開のアメリカ映画で第42回アカデミー賞作品賞を獲得した『真夜中のカーボーイ』のエンディング・ソングであるJohn Barry & Toots Thielemansの「Finale」(または「Midnight Cowboy」)によく似ていますね。
ミッドナイトからの選曲は、2023年のベスト・セレクションの中の個人的ベスト・ソングとなった「Your Darling」の作者、Fleur Electra の「Never Learn」からスタート。ヴェネズエラ生まれでスペインで活動する女性アーティスト、 Maddie Moonの「Rosse」はストロベリー・スウィッチブレイドを彷彿させるキュートなバブルガム・ドリーム・ポップ。シンセサイザー・ミュージックの聖地、イギリスはシェフィールドで活動するThe KaleidoscopesがShuttleというアーティストとコラボして発表した「Kung Fu」は、シェフィールドの良質なDNAを受け継ぐ最高な1曲。大好きな女性アーティスト、MUNYAは今回ニュー・オーダーの名曲カヴァー『Bizarre Love Triangle』をセレクト。様々なアーティストに取り上げられる名曲ですが、このヴァージョンも素晴らしいですね。他にはロサンゼルスを拠点に活動するChris HackmanとXuan Nguyenの男女デュオ、Veronicavonのニュー・シングル「Heartbreak Feels Good In A Place Like This」や、ドイツはミュンヘンの男性アーティスト、Phantom Youthの「Life Waits For Nothing」などもお気に入りのナンバーです。
ミッドナイト後半、まずはニューヨークはブルックリンの4人組バンド、Hotline TNTのTeenage Fanclubを彷彿とさせる「Stump」をセレクト。それに続くのはオランダの首都アムステルダム出身の男性アーティスト、Robin Causeのちょっとけだるいローファイ・ポップ・ソング「Since You Left Me」。イラン系アイルランド人で今はニューヨークを拠点に活動する男性アーティスト、Glassioがロサンゼルスで活動する女性シンガーBeauty Queenをゲストに迎えて制作した「A Friend Like You」は、中毒性のあるナンバーで頭の中でメロディーとリズムが何度もリピートしてしまいます。オーストラリアはメルボルン出身の男女デュオ、Grazerの「Mainline」や、ロサンゼルスの男性アーティスト、Lomeliの「Favorite Memory」は良質のインディー・ソング。フランスのレーベルNice GuysからリリースされたAbby ColeとMatheus Nascimentoの音楽ユニット、Lowneの「Greyout」や、日本人女性カズ・マキノとイタリア生まれの双子のパーチェ兄弟からなる3人組バンドBlonde Redheadの「Kiss Her Kiss Her」、ロサンゼルスで活動する4人組バンド、Small Forwardの新作「Take Care」など、今回のセレクションの終盤はメロウな楽曲を立て続けにピックアップして、ラストにブルックリンの女性アーティストAnna Beckermanの音楽プロジェクト、Daneshevskayaのメロウでクラシックな響きも併せ持つ「Bougainvillea」をセレクトして締めてみました。
さて、2024年一発目の映画にまつわるお話ですが、昨年末からジーン・セバーグに関連する作品をいろいろと研究していました。まずは2000年にアップリンクから発売された『ジーン・セバーグの日記』と『ジーン・セバーグ:アメリカンアクトレス』というふたつのドキュメンタリー映画がカップリングされた『ジーン・セバーグ・コンプリート』を観なおし、彼女の出演作の中でもフェイヴァリットのひとつである1964年作で、『ハスラー』のロバート・ロッセン監督の遺作となった名作『リリス』を高画質の海外盤ブルーレイを購入して再鑑賞。さらに極めつけは、友人からいただいた彼女の2人目の夫であり、フランスの小説家、外交官、そして映画監督のロマン・ガリーの1971年作『殺し!』を鑑賞しました。この作品は日本ではソフト化されていないと思っていたのですが、なんと『バトルキラー』というタイトルで国内盤VHSソフトがリリースされていたのですね。さらに驚いたのが、このサウンドトラックにはサバービア・ファンには『黄金の七人』『ある夕食のテーブル』『ジェラシー』などでお馴染みのコーラス・グループ、イ・カントーリ・モデルニ・ディ・アレッサンドローニの主要メンバーであるエッダ・デッロルソが参加しており、彼女がコーラスを務める「To Jean」という作品がとても素晴らしく、映画同様に感動しました。
Beach Vacation『Coping Habits』
PinkPantheress『Heaven Knows』
Huron John「Caldera」
Alan Kite feat. Haley Paige「Camera」
A Beacon School『Yo Yo』
Pure Bathing Culture『Chalice』
Mini Trees「Push And Pull」
Holiday Sidewinder「Escape & Retreat」
George Riley『Un/limited Love』
Divino Niño feat. Inner Wave & Pablo Sotelo「NOS SOLTAMOS chiliado」
Valley Palace「Time With You」
Helena Deland『Goodnight Summerland』
Fleur Electra「Never Learn」
Maddie Moon「Rosse」
The Kaleidoscopes feat. Shuttle「Kung Fu」
veronicavon「Heartbreak Feels Good In A Place Like This」
Phantom Youth『Slide Back』
Hotline TNT『Cartwheel』
Robin Cause「Since You Left Me」
Glassio feat. Beauty Queen「A Friend Like You」
Grazer「MainLine」
Lomeli「Favorite Memory」
Blonde Redhead『Sit Down For Dinner』
Daneshevskaya『Long Is The Tunnel』
Dinner-time 日曜日22:00~24:00
Cafe Apres-minuit 月曜日0:00~2:00
本年もどうぞよろしくお願いいたします。新年早々、国内では悲しいニュースがいくつも飛び込んできました。元日の能登半島地震において被災された方々に心よりお見舞い申し上げるとともに、一日も早い復興を心からお祈りいたします。「usen for Cafe Apres-midi」をお聴きの皆さんの心が安らいだり、気持ちが穏やかになれるような選曲ができればという思いは、今年も変わりません。今回のセレクションに関しては、冬の寒さを和らげてくれるような、ハートウォーミングな楽曲を選んでみました。ランチタイムからティータイムにかけては、心が弾むような軽やかな女性ヴォーカル曲を中心に、ジャズやソウル、フォークを織り交ぜて、後半は夕暮れ前を意識しながら、ゆったりと身を任せたくなるようなメロウなシンガー・ソングライターなどを並べてみました。その中でも一押しなのが、スペインのカタルーニャより届いたルシア・フメロとホラシオ・フメロの父娘デュオによる「Camino」です。親子ならではの親密な空気感に包まれた、きらめくように美しいカタルーニャ・ジャズといった趣で、聴くたびに心の奥底が慰撫されるような気持ちになります。静かだけど優しい力を感じさせてくれる名演だと思います。
Lucía Fumero & Horacio Fumero『Los Fumeros』
Lunch-time~Tea-time 月曜日12:00~16:00
この2024 Winter Selectionの締め切りに追われていた昨年11月末頃には、すでに今年の豊作へとつながる予感を垣間聴くような素敵な新曲があらわれだし、それらの楽曲が今回の選曲で、冬の澄み渡った空の青のように清々しい彩りを与えてくれました。
中でも、Mockyらしいヴィンテージ・サウンド感をまとった、なんだか私家版の宗教系ソフト・ロック風趣きを醸しだしているダスティー・スプリングフィールドの名曲「Just A Little Lovin’」のカヴァーは、“choir album”と呼ばれているらしい十数名によるヴォーカル・アンサンブルを従えた彼の次のプロジェクトによる先行公開曲になるみたいで、期待がふくらみます。
今年も、意外性、そして偶然性を大切に──と特別意識しなくとも、“ハンドメイド・チャンネル”として自然で風通しのいい選曲が手がけられたらと思っています。
Gabriel da Rosa「Cafuné」
Bruno Berle「Tirolirole」
Mocky「Just A Little Lovin'」
Yaeji「easy breezy」
Tamas Wells『To Drink Up The Sea』
High Llamas『Hey Panda』
Fabiano Do Nascimento『Mundo Solo』
Jonah Yano「concentrate」
Lunch-time~Tea-time 火曜日12:00~16:00
今回のオープニング曲はビル・エヴァンスの「Elegia」です。クラシック曲を題材にした『With Symphony Orchestra』というやや異色のアルバムからのセレクトなのですが、エレピを取り入れた『From Left To Right』が新定番としての評価を確立しているのに対し、このアルバムはいまいち評価が定まっていない感じがあります。僕の周囲でも好きという人は多いのですが……。このレコードは名匠クラウス・オガーマンのオーケストレイションを楽しむアルバムと割り切ってしまえば、だいぶ聴こえ方も変わってくるはずです。そして「Elegia」はそのストリングスの美しさが際立つ一曲。『With Symphony Orchestra』は一説によれば坂本龍一さんも愛されていたということなので、その影を感じてもらえると嬉しいです。
また、今回はアンビエント的な落ち着いた曲を前半で多めに使っているのも特徴です。今まではあまり選曲に取り入れていなかったのですが、今年の目標としてちょっとチャレンジしました。年の変わったばかりの時期の冷たい空気などもイメージしてみました。あとは例年になりますが、ヴァレンタインの時期にかかるので、そのあたりの曲も交えて。季節の定番商品みたいになっているところもありますが、やはり大切ですよね。
そうそう、ジョニ・ミッチェルの『Archives -Vol.3: The Asylum Years (1972-1975)』にも触れておかなくては。僕はSpotifyを主に使っているので、Apple Musicをあまりチェックしていないんですが、こちらでは10月にリリースされていたんですね。全然チェックしてませんでした……。今回は『For The Roses』『Court And Spark』『The Hissing Of Summer Lawns』と、みんなが大好きなジョニのアルバムがリリースされた時期にフォーカスされています。特にデモ音源群は完成形と比較したときになかなか感慨深いですね。今回選んだデモならではのラフさが魅力な「Help Me」や、12分にも及ぶ「Piano Suite」と題されたメドレー集を聴くと、当初は弾き語り+α的なサウンド構想だったのかもしれない……などといろいろ考えさせられます。ジェイムス・テイラーやニール・ヤングとのセッションなど、ワクワクするような音源もたっぷり。カーネギー・ホールでのライヴなど、彼女の素顔やキャラクターが垣間見える瞬間も多いので、ぜひ聴いてみてください(ちなみに僕は5CD版を買いました)。
Bill Evans Trio『With Symphony Orchestra』
Brian Eno『Sisters』
haruka nakamura『青い森Ⅱ−蔦屋書店の音楽−』
Joni Mitchell『Archives -Vol.3: The Asylum Years (1972-1975)』