バファローズ・ブルーウェーブ合併の総括4

注、チームを表すときはバファローズ、ブルーウェーブ。バファローズの親会社を書くときは近鉄、ブルーウェーブの親会社を書くときはオリックスと書き分けています。これはチームと親会社をしっかり分けるという意図でそうしています。ここでのバファローズは今のオリックス・バファローズは指しません。

 可能な限りソースを明記していますが、明記していないものは当時の雑誌や新聞で読んだものです。ソースが不十分と思われたら、ご容赦願います。 

 2002年のモントリオール・エクスポスはオーナーが撤退し、MLB機構預かりとして2004年にワシントンに移転するまで面倒を見たそうです。これを他人事扱いした時点でバファローズの命運は決まったと言っていいでしょう。なぜ「日本にもエクスポスが出るかもしれない、そのときはNPB預かりとして、一年面倒を見よう。その間に身売り先を探したり、親会社なき市民球団への移行、最悪球団合併を考えた方がいい」ということにならなかったんでしょうか?

 NPB機構はオールスターや日本シリーズぐらいしか収入がないと聞きます。「それではチームを預かるなんてできない」と収益を増やすことを考えなかったのか?と疑問に思います。選手会も「最悪の場合を考えて、保険を持ちたい」とNPB機構に収益増加を訴えるとかしなかったのでしょうか?今思えば、選手が「プロ野球は興行なのだから、お客さんが入らなかった終わり」というエンタメの原理がわかっていなかったというのが、選手会最大の落ち度でしょう。

 合併が表面化した7/10に選手会は「ネーミングライツを導入して、一年合併を待ってはどうか」と提案しますが、近鉄にとっては「そんなのとっくにやったし、やり直したとして買収先が手を挙げるとは思えない、もし手を挙げたとしたら、なぜ身売りに動いた2004年シーズン前に手を挙げなかった?と不信感しかないから、安心してバファローズを託すことはできない。そもそも合併の話は動いているから、株主、社内の理解を得て、合併後のチーム運営の策定に動いているオリックスに失礼」という考えしかなかったと思われます。

 思えば、球団売却というのは選手に事後報告なんですよね。僕が知る限り、球団売却の前に選手に説明をするなんて聞いたことがありません。だから、選手がいくら「合併前に説明して欲しかった」と言ってもムリというものでしょう。ただ「このままでは球団売却の可能性があるから、お客さんを呼ぶためにも選手もファンサービスを精一杯して欲しい」と選手に説明するぐらいはした方がよかったとは思います。

 その後選手会はストを打ちますが、もう合併の話は進んでいるので覆すのは難しかったでしょう。MLBのストはサラリーキャップ制の導入など、選手の待遇面についてなので、球団売却を主題としてストを打ったことはありません。これは「選手は経営面には立ち入ることはできないから、球団売却においてはなにもできない」ということでしょう。当時NPBのストを取材したアメリカのメディアはあったそうですが、「これはなんのためのストなのだ?」と理解できなかったでしょうね。

 ここまで合併の総括記事を書くためにいろいろ調べましたが、「バファローズを救う方法はなかった」という結論にしかなりませんでした。だって、お客さんが入らないコンテンツを救うなんて、ムリじゃないですか。ただ、当時は実数発表ではなかったので、「パリーグはお客さんが少ない」ということは知っていても、具体的にどれぐらい少ないかは誰も知ることができなかったというのが死角でした。もしお客さんが少ないことをファンが知っていたら、「これじゃバファローズは詰む」とファンが友達や家族を連れてくることができるから、お客さんは増えて「このバファローズには投資価値がある」と買収に手を挙げる企業があったと思うんですよね。選手やファンに危機を訴えることができなかったのは、バファローズの落ち度でしょう。

 当時うっすらと感じていた、「球団合併は近鉄とオリックス、NPB機構が悪、選手やファンは善という考えはおかしいのでは?」という考えが、記事を書く中で実証されたと思います。選手やファンも悪かったのです

 次回は合併後の2005年以降、プロ野球はどうなったのか?を書こうかなと思います。もうしばらくお付き合いください


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