グローバル人材が活躍中 ベトナム出身のエンジニアにインタビュー
組み込み設計から完成品開発までこなすモノづくり企業ユー・エス・イー(USE Inc.)。エンジニアにインタビューし、エンジニアの魅力や、エンジニアとしての仕事の流儀、今後の展望などをお届けします。
中国・台湾に取引先を数多く持ち、中国深セン・香港にも支社を展開するUSE Inc.。社内でもグローバルな人材が活躍しています。今チャイナプラスワンとして、注目度が高まっているベトナム出身エンジニアのインタビューをお届けします。
写真左)Trinh Thanh Do (ティン・タン・ドー)
USE歴7年
エンジニア歴10年
写真右)Tran Duc Tien(チャン・ズック・ティエン)
USE歴1年
エンジニア歴4年
日本とは異なるベトナムのエンジニア事情
―Doさん、Tienさん、本日はよろしくお願いいたします。
Trinh Thanh Do 「よろしくお願いいたします。」
Tran Duc Tien「よろしくお願いいたします。」
―まず、USE歴とエンジニア歴から教えていただけますか?
Do「私はUSE歴7年で、エンジニア歴は10年。エンジニアとしてのキャリアをスタートさせたのは、ベトナムのスタートアップ企業からです。英語を使用するソフトウェア会社で、主にオーストラリア、ヨーロッパ、アメリカの市場を対象としていました。USE Inc.は日本で2社目です。」
Tien「私はUSE歴1年で、エンジニア歴4年です。同じく日本で2社目ですね。」
―お二人とも、もともとエンジニア志望ですか?
Do「そうです、大学でプログラミングを学んでエンジニアになりました。ベトナムでは理系大学で専門知識を学んで、その実績を基にエンジニアになる人がほとんどです。私も大学在学中に作った同一価格のECサイト(100円均一のショッピングサイトのようなもの)をポートフォリオとして就活をして、WEBエンジニアとして採用されました。
Tien「私も同じで、ハノイ工科大学(※1)で組み込みを専攻していました。卒論としてマイコンを使った駐車場のシステムと対応アプリを作り、それがきっかけで就職しました。」
※1 ベトナムトップの国立理系大学。Hanoi University of Science and Technology
―なるほど、お二人とも学生の頃から既にエンジニアとしてのスタートを切っているのですね。ベトナムでは小学生のうちからコンピューター教育を開始すると聞いています。
Do「そうです、小学生(10、11歳くらい)のうちには勉強を開始しますね。それより前に親やメンターなどから教えてもらうことも多いですし、数学・英語・プログラミングの勉強開始時期はどんどん早くなっています。
日本だと文系出身のエンジニア(USE Inc.社内だと、長島、小野里が文系出身エンジニア)も多いですよね。日本では、企業が採用後の教育にかける時間も費用もあるから未経験の文系人材もエンジニア職に就くことができるんだと思います。ベトナムでは理系大学の3年生からIT企業でのインターンシップを開始させ、卒業までは勉強と仕事を両立させて卒業後もその会社で引き続き研鑽を積むという人が多いです。理系の大学を卒業してもエンジニアにならない人もいますがそれはとても少数で、エンジニア自体が若い人にとても人気のある職業ですね。」
若きエンジニアの目に映る日本の魅力、ベトナムとの違い
―エンジニア志望者がなかなか増えず、人手不足が問題にもなっている日本とは全く状況が違うのですね。海外で働くにあたり、日本を選んだのはなぜですか?
Do「もともと海外で働くことに挑戦したいと思っていました。距離が近く文化的にも安心できるアジア圏で考えていて、国家としてベトナムと関係の良い日本を選びました。
ベトナムでは英語は大学卒業の必須項目なので誰でもある程度話すことができます。プラスαの外国語を学ぶ人もとても多いです。少し前にはフランス語が流行っていたり最近は日本語を学ぶ人も多くなっています。大学以外でも語学を勉強できるところがどんどん増えていて、ベトナムで日本語を教える先生は引く手あまたです。私はベトナムにいる間に4ヶ月ほど日本語学校で学んでいました。」
Tien「私の大学には技術的な成長を求めて日本で働くことを選んだ先生や先輩方も多く、私も彼らのように日本で技術を磨き、成長していきたいと考えていました。小さい頃から日本のアニメ(『ONE PIECE』や『進撃の巨人』など)を見ていたので親しみを持っていたこともありますね。日本語の勉強は大学4年から始めています。
まだ入社して1年程度ですが、応募のきっかけはDoさんがSNSで発信したUSE Inc.の求人情報です。ベトナムではバイク製品の組み込み開発をしていましたし、BluetoothやBLEにも興味を持って勉強していたので、経験面・自分の興味面からUSE Inc.はピッタリの会社だと思いました。」
―Tienさんは本当にUSE Inc.にピッタリの人材ですね。実際に日本の企業で働いてみていかがですか?
Tien「ベトナムと日本では、ワークライフバランスが違うなと思いました。ベトナムだと、会社の福利厚生として週末ごとにBBQやキャンプなど様々なイベントがあるのが一般的です。ベトナム人が全体的に若い(※2)のもありますし、会社としてもチームワークの強化や、イベントの模様をSNSなどで公開して会社のアピールに利用するといった目的もあります。ベトナムのIT企業には若くて活気に満ちたスタートアップが多く、仕事と遊びのどちらも同じくらい重視しながら働いている人が多いイメージです。日本は仕事の比重が高く真面目に働く人も多いし、仕事に集中できる環境だと思います。」
※2 国家の平均年齢が31歳、エンジニアの平均年齢はさらに若く20代後半。
―毎週末会社主催のイベントがあるのは驚きですね。文化が違う中でも、日本の会社にはすぐ慣れましたか?
Do「はい、それは大丈夫でした。文化的なマナーの違いはあってもエンジニアとして採用された以上、一番大事なのはやはり専門性や技術力です。自分の技術力に自信を持っていれば、環境にはすぐに慣れることはできますね。Tienさんも技術力があるので入社直後から開発業務を行っていますし、日本では自分のやるべきこととやりたいことに集中できていると思います。」
―お二人はアプリ開発部に所属していますが、今アプリ開発を選んでいるのはなにか理由はありますか?
Do「私が最初に就職した時はWEBエンジニアだったので、エンジニアとしての幅を広げるためにアプリ開発に挑戦することにしました。組み込み開発にも興味はあるのですが、知識や実績のあるWEB開発と言語やアルゴリズム的に近いアプリ開発を選びました。自分のエンジニアとしてのキャリアを考える上で、興味がある分野に取り組むことはもちろん大事ですが、それ以上に積み重ねた知識や実績を活かしていくことも大事だと思っています。
アプリは生活必需品であるスマホで使うので身近だし、自分が作ったものをたくさんの人に使ってもらえるのがかっこいい! という気持ちもあります。」
Tien「私は大学で組み込み開発を専攻して、ベトナムではIoT(Internet of Things・モノのインターネット)の最下層で動作するドライバーを開発する組み込みエンジニアとして働いていました。今はユーザー体験により関心を持つようになったこともあってアプリ開発を行っています。組み込みシステムも、ソフトウェアに加えてハードウェアや電子基板など幅広い知識を求められるので、すごく難しいし面白いです。今は自分の技術の幅を広げる時期と考えていますね。」
挑戦中の二人が考えるUSE Inc.とは
―なるほど、挑戦も含めたアプリ開発業務ということなんですね。そんなお二人の目に、USE Inc.はどんな会社に映っていますか?
Do「まず第一に技術力が高いですよね、技術力のあるエンジニアさんが多いです。先輩エンジニアから本当にたくさんのことを学ばせてもらっています。それから、営業部がなくても長年の人間関係や会社間の関係から途切れず仕事が続いていて、かつ業績が安定しているのがすごいと思っています。」
Tien「私は技術を勉強する環境が整っているなと感じます。組み込みもアプリも、普段の開発業務の中で勉強の機会がたくさんありますし、能力で人を区別しないので自分が希望すれば挑戦できるというのがとても良いですね。最新技術を学びながらそれを活かして担当プロジェクトに取り組めて、困った時には先輩に教えてもらうこともできるという環境です。」
Do「他にはこの春にABW(※3)でオフィス内が一新されて、自由席になったのが嬉しいです。
一日の中でも席を移動して気持ちも考えもリフレッシュすることができますし、普段話さない人と近くの席に座ることでちょっとした会話が生まれたりもします。壁がなくなって開放的でクリエイティブな空間になったのもとても気に入っています。また新設の集中ブースもすごく新鮮で、業務に没頭したい時に利用しています。」
※3 その時々の業務内容により最適なエリアを選び、自由に席を移動しながら働くことができるABW(Activity Based Working)が3月末よりUSE Inc.蒲田事務所で導入された。オフィス内に4つのエリア(一般的な用途のアクティブエリア、複数人でデスクを囲んで話をしながら作業ができるミーティングエリア、周囲から遮断され作業に没頭できる集中ブースのある高集中エリア、電子基板や電源などの機材を使った作業を行うラボエリア)が用意されている。
Tien「席を選べるのは良いですよね。仕事中はパソコンに向かいっぱなしになってしまうのですが、席を変えることで毎日が新鮮に感じられ、仕事への意欲も高まります。私は今、製品と連動するアプリ開発をしていて大きなモニターや関連して使用する機材を広げるスペースが必要なので使える席は限られていますが、自然が好きなので目の前に植物がある席をよく使っています。」
海外で活躍するエンジニア、その展望は……?
―仕事効率を上げることやコミュニケーションの活性化を目的で一新したので、エンジニアさん目線で好評なのは嬉しいですね。お二人の今後の展望を聞かせていただけますか?
Do「私は現在、複数のプロジェクトを同時に管理し、顧客にデリバリーする製品(ソフトウェア)の品質保証にも携わっています。技術的な専門知識を深めるだけでなく、管理スキルの向上やチームワークを発揮できるチーム作りにも取り組んでいますね。
9年間日本で仕事をして技術力だけでなく、日本語や日本のマナーも学んできました。その経験を自分の最大の強みとして、いずれは自分でもベトナムと日本を技術でつなぐような会社を立ち上げたいとも思っていて、企業財務に関しても学んでいます。」
Tien「私は、直近2、3年は自分の技術力を高めることに集中するつもりです。ゆくゆくは日本とベトナムの技術ビジネスの懸け橋になりたいと思っているので、まずはエンジニアとしての経験を積み技術力を磨きます。そして、日本語でのコミュニケーション力も高めていきたいです。日本企業のベトナム進出はどんどん増えていくでしょうし、日本語でコミュニケーションが取れて、さらに技術のことがわかる人は重宝されるようになると思います。」
―お話を聞いていると、お二人ともビジネス志向が強いように聞こえますが、ベトナムではこういった考えを持った方は多いですか?
Do「どちらかと言えば少数派ですね。人とあまりコミュニケーションを取らずに、ひらすら開発業務に打ち込みたいエンジニアの方が多いと思います。USE Inc.社内のベトナム出身先輩エンジニアはそういう志向の方です。私たちの周囲には起業している人も多いし、ビジネス志向が強い方だと思います。
でも、大事なことは自分の目標を持つこと、それを叶える力が自分にはあると信じること、そのために日々努力を重ねていくことだと思っています。」
―そうですね、そんなお二人と縁を結べたUSE Inc.はとてもラッキーですね。お忙しい中、本日はありがとうございました。
編集後記
日本でも組み込み開発経験のある若い技術者はとても稀です。そんな中、Tienさんの経歴を聞いて非常に驚きました。経歴、興味共にUSE Inc.にピッタリです。日本国外にこんなご縁があったとは……。
USE Inc.としてもオフショア開発は今後重要度が増してくると思いますし、USE Inc.社内のことも、日本の文化も、さらにはベトナムのことも熟知しているお二人がいてくれたらとても安心です。エンジニアとして明確な目標を持っているお二人が自分の夢を叶えていく舞台としてUSE Inc.と縁を結んでくれたことはとても嬉しいなと感じました。
USE Inc.では現在、中国籍、ベトナム国籍、ミャンマー国籍のエンジニアが活躍中です。国籍問わず本人の希望次第で、活躍の場をご用意できます。
インタビュー実施:2024年4月
社内ABWで新しくなった本社オフィスにて
Interview & Text 渡部美里
USE Inc. お問合せ先
https://www.use-inc.co.jp/contact/
USE Inc. 採用情報
\国籍問わず、エンジニアとして活躍できる環境があります/
https://www.use-inc.co.jp/recruit/
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