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小山智也選手、2023年と2024年の展望

弊社がスポンサー契約を結ぶ小山智也選手が2023年のシーズンを終えて、沖縄で個人合宿をしています。そこに役員吉川と、広報渡部で足を運び、お話を伺ってきました。

プロフィール:小山智也選手
大阪府松原市出身
1998年7月18日生まれ 身長173cm体重70kg
2023年はUCIコンチネンタルチーム・Global 6 Cycling所属
2024年よりUCIコンチネンタルチーム・Team Vorarlbergに移籍



2023年のシーズンを終えて

トレーニング同行へ出発。この日は1時間ほどのライド予定。

―小山さん本日は冬のトレーニング中に貴重なお時間いただきありがとうございます。よろしくお願いいたします。

「よろしくお願いいたします。実際にトレーニングしているところを見て頂く機会は少ないので、見て頂けて嬉しかったです。」

―本日はたくさんお聞きしたいことがあります。まず、2023年のシーズンを終えていかがでしょうか?

今期よりニュージーランド籍のGlobal 6 Cyclingに移籍しました。まず2月にチームキャンプに合流した際に、自分の準備不足を感じました。シーズンが始まってからも、レベルの高いレースに参加していたこともありますが、正直なところ前半は満足な走りができませんでした。5月の『Tour of Japan 2023』で落車、続いて参加した『Tour de Malaposka』(ポーランド)でも落車と、夏までは準備不足と体のダメージが続いて良い結果を残せず残念でしたね……。」

―日本で聞いていても、ヒヤヒヤすることが多かったです。

「それでも9月の『Tour of Britain』(イギリス)では、最後のスプリント集団の中でゴ-ルするなど自分としても良い走りができて少し回復していきました。この直後からビクター選手(※1)が練習を見てくれるようになって、トレーニングを根本的に立て直すようになりました。彼のおかげで何のためにどのトレーニングを、どのタイミングでやるかをかなり理解することができるようになったんです。その成果もあって、10月『Tour of Istanbul』(トルコ)ではヨーロッパで初めてTOP10入りを果たすことができて、コンディションもだいぶ上向きになってきました。ヨーロッパにいるとシーズンは10月中旬には終了してしまうので、この良い波を続けていきたいのと、年始に準備不足を感じたこともあって、この冬は早めにトレーニングを開始したというわけです。」
※1 UCIプロチームのTotal Energies所属、スペイン出身のロードレース選手。Victor De La Parte

一ヶ月に及ぶ沖縄合宿の仕上がり

VC FUKUOKA所属、横塚浩平選手とのトレーニング。高校時代からの付き合いだそう。

―そういうことだったのですね、去年とずいぶんスケジュールが違うなと思っていました。沖縄合宿も終盤に近いですが、仕上がり具合はいかがですか?

「体調も、練習内容、練習環境としても非常に良いですね、とても満足できています。前半は1人でひたすら黙々と走っていました。つい先日、横塚選手(※2)や相原選手(※3)が合流してくれて、長めのトレーニングをしたりみんなで苦しむことができました。

合宿の場合、練習環境と住環境も重要なのですが、名護は両方兼ね備えています。まず、信号が少ないのでノンストップで走ることができます。昨日も6時間トレーニングをしてきたんですが、休憩場所で30分程度休んだ以外はほぼ止まっていないですね。東京だと本当に信号が多いので、家を出て30秒で信号にひっかかりますし、そもそも信号がない場所に行くのに時間がかかったりします。

あとは、こちらは温暖なので半袖でトレーニングできるのも良いですね。その方が動きやすいし、自分の体を自由に使うことができます。」
※2 VC FUKUOKA所属、横塚浩平選手
※3 稲城FIETSクラスアクト所属、相原晴一朗選手。当初はトレーニングに参加予定だったが、合宿直前で骨折しスタッフとして参加することになった

ひたすら続く海岸線をノンストップで走る選手。なんて気持ちよさそうなトレーニング!

―服装の違いによるトレーニングへの影響は大きいですか?

「全然違いますね。寒いとどうしても着込む必要も出てきますし、そうなるとダボついたり動きづらくなります。よりレースと近い条件で常に練習しておきたいのですよね

今回の合宿にはスタッフがいるので、着替えや飲み物など必要なものは車に積んでもらえるし、心行くまでトレーニングができています。

―なるほど、サポート体制も図らずとも整っているのですね。先ほど、合宿の際には住環境も大事とおっしゃっていましたが……。

「長期滞在の場合は、生活用品とかも必要なので、適度に買い物などができる環境が必要なんですが、名護は本当にちょうど良い環境です。便利な生活環境は名護に整っていますし、北に行けば信号もなく良いトレーニング環境があります。休日にリフレッシュしたい時には那覇方面に足を延ばすこともできるので、トレーニングと住環境が両立できる場所だなと来てみて実感しています

ただ難点は登り坂が少ないので、今の時期のトレーニング内容としては十分な環境ですが、長時間踏み続けるようなトレーニングの時期には適さないと思っています。」

―『今の時期のトレーニング』というと、時期によってトレーニング内容が変わるという事ですか?

「そうです。自転車競技って、マラソンと短距離走が組み合わせたような競技なんですよ。5時間乗った後(マラソン)に、ゴールスプリント(短距離走)をする感じなので、両方のトレーニングが必要なんです。

車で併走しているからこそ撮れる写真。無駄な肉が一切ないのがわかります。

シーズン終了直後の今の時期は、まず長時間乗り続けるマラソンの部分の体力をつけていきます。100%以上の力を出すことはないけれど、3~6時間ひたすら長時間じっくりと走り込みます。ここでシーズンを走りぬくベースの体力を付けて行くのと同時に、体重も減らして自分の体を最適化していきます。年があけると次は短距離走の練習ですね。30秒全力ダッシュ、30秒休むのを10回繰り返すというような短時間高強度のトレーニングが増えていきます。その短時間高強度トレーニングの伸びしろも、長時間乗り込む練習のベースによって変わってくるんです。ベースが整っていなければ、いくら高強度のトレーニングをしても積み上げていくことができないのです。

それにシーズンが始まってしまうと、本当に練習ってできないんですよ。レースとレースの合間は、リカバリーや調整をする時間になるので、この時期に長時間乗り込んで、年明けの時期に短時間高強度のトレーニングを積み重ねて、レースができる状態に自分をもっていく必要があるんです。

年明けの短時間高強度のトレーニングをする環境は、残念ながら日本にはないのでタイかアリカンテ(地中海に面するスペイン南東部の都市)辺りにいこうと考えています。アリカンテは世界のプロチームの合宿地として有名です。」

来期より25年の歴史を持つ名門チームに移籍

このユニフォーム姿も12月31日で見納め。来期からはTeam Vorarlbergへ移籍。

―来期からはチーム移籍の発表がありましたね。

「はい、オーストリア籍のTeam Vorarlberg(※4)に移籍することになりました。今のGlobal 6 Cyclingと同じUCIコンチネンタルですが、25年の歴史があります。ここに移籍できることになったのも、ビクター選手のおかげなんです。自分では何度アプローチしてもなしのつぶてだったのですが、以前所属していたビクター選手が連絡を取ってくれて話が進みました。」
※4 オーストリア籍のUCIコンチネンタルチーム。読み方はフォアラアールベルグ

―そうだったんですね、ビクター選手は2023年のキーパーソンですね。

「本当にそうです。彼の奥様には栄養面を見てもらっていますし、新しい家もビクター選手の紹介で引っ越すことになりましたし、いくら感謝してもしきれません

こんな風にいろいろな出会いによって、自分の今の選手生活は支えられていると思っています。高校生の時から自転車を始めて、タイ合宿に行って出会ったキーパーソンや今も一緒に練習している横塚選手との出会い、日本での人脈を広げるきっかけになった練習会の参加など、どの出会いがなくても今の自分の環境はありえなかったと感じています。自分自身も運が良い方だと思いますが、それ以上に出会ってきた方々が本当に良い方で応援していただいています。」

―来期のTeam Vorarlbergでの展望はありますか?

「基本的にGlobal 6 Cyclingよりも強い選手が所属しているチームなので、スプリントの場面以外ではチームメイトをアシストする役回りになると思っています。まずはチームの中で『小山がいると、レースがスムーズに運ぶ』という信頼を勝ち取ることを優先したいと思っています。ロードレースは個人戦でありチーム戦でもあるので、チームの雰囲気作りに貢献できる人は重宝されるんです。まずは、そこを抑えてレースに参加していくつもりです。

加えて、その先を見据えて個人としてリザルトも求めていきたいですね。できる限りヨーロッパで選手を続けていきたいと思っているので、その次に繋げていくには、やはり目に見える結果が必要ですし。」

―お話をきいていると、ヨーロッパへの気持ちが以前より強くなっているように感じます。

この日の食事が合宿中で一番おいしかったと、後日YouTubeで話していました。

「それはありますね。オフシーズンで日本に戻った時も、久々だったので日本にいたくなるのかなと思っていましたが、むしろ逆ですぐにヨーロッパに戻りたくなりました。

最初アンドラに住み始めた時は、プロの自転車選手になるために最適な環境として選びましたが、今はこの先もずっとアンドラに住み続けるためにも自転車選手を続けていきたいという想いも生まれました。アンドラに住んでいること自体がとても楽しいんです。アンドラに住むようになって迅速かつ大きな決断ができるようになりましたし、人脈含めて人生の幅が広がっているという実感があります。日本に戻ってくると、窮屈ななにかに押し込められている感じがしてしまいます。自転車選手を辞めたとしても、アンドラに住み続けたいと思うようになりましたね。」

―アンドラに住むようになって、考えも変わってきたんですね。

「そうです。今25歳なので、あと精一杯自転車に取り組むことができたとしてもあと15年くらいです。今はなにの迷いもなく、自分の時間は全て自転車に捧げたいと思っています

自転車選手としての目標を実現するために、自分のできることを全てやるという考えは来年も変わりありません。できる限り環境を整え、トレーニングや筋トレ、栄養面からの体作りもしっかり行い、来年は飛躍の年にしたいと思っています。そのためにもシーズン前のこの合宿を本当に重要なトレーニングとして位置付けています。名護まで視察にきてくださり、ありがとうございました。」

―貴重なトレーニング中にお時間ありがとうございました。来期の活躍も楽しみにしております。

横塚浩平選手、相原晴一朗選手もインタビューに同席してくださいました。

小山智也選手
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編集後記

左から広報渡部、小山選手、弊社役員吉川

最初にお話をお伺いした時から、1ミリもぶれることなく自分の道を突き進んでいる小山選手。今年はヨーロッパで初のTOP10入り、来期は名門チームに移籍。これからの展開もますます目が離せません。

トレーニングの後にお話をお伺い、その日は夕食をご一緒しました。3名の自転車選手と、しゃぶしゃぶ。沖縄ならではのお野菜や、あぐー豚。野菜も肉も、飛ぶようになくなり楽しいひと時でした。

海外で選手生活を続ける小山選手、日本のリーグで結果を出す横塚選手、今回はスタッフ参加となった相原選手。皆さんがそれぞれの居場所で力を発揮できることを願っております。


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インタビュー実施:2023年12月11日
沖縄県 COFFEE SENTIにて
Interview & Text:渡部美里

小山選手のインタビューはこちらにも☟


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