子どもの頃からの夢を叶えた生粋のエンジニアが薦める”興味を広げる”勉強法~エンジニア解体新書Vol.2
組み込み設計から完成品開発までこなすモノづくり企業ユー・エス・イー(USE Inc.)。ベテランエンジニアにインタビューし、エンジニアの魅力や、エンジニアとしての仕事の流儀、今の若手エンジニアへのメッセージをお届けします。
2回目は、技術部門を統括している斎藤執行役員のインタビューをお届けします。
プロフィール:斎藤正和
エンジニア歴:19年
USE歴:19年
小さな頃からの夢を叶えてエンジニアに
―斎藤さんは、新卒でUSE Inc.に入社された生粋のUSE Inc.社員ということですね。もともとエンジニア志望だったのでしょうか?
「はい、そうです。新卒入社して、今年で19年です。私はもともとエンジニア志望でしたね。小さな頃から、いろいろなものの分解や組み立てが大好きで、自分でも実際にモノを作りたいと思っていました。大学ではハード寄りのソフトウェアを勉強し、将来性を感じたために方向性を決めました。私が就職した頃は、携帯電話の機能性が一気に上がり、世間的にも組み込み開発というものの認知が広がってきた時期でした。」
―小さなころからの夢を叶えたということなんですね。
「そうですね。やりたいことを仕事にしているので、とてもラッキーだと思っています。仕事を始める前は、具体的に何をしているのか知らない部分もあったので、実際にやってみて『こんなことをやっているのか!』と驚いたこともありましたが、子どもの頃からイメージしていた仕事に就いていると思っています。」
19年間のエンジニア生活で印象に残っている三つの開発
―夢を叶えた、というのは、斎藤さんの仕事に対するモチベーションの1つになっていそうですね。入社以来、様々な開発に携わっていると思いますので、その中で印象に残っている開発を教えてください。
「良くも悪くもですが、印象に残っている開発は三つあります。
一つめは、2014年ころの集音機開発です。
私にとってはゼロから作り上げた開発なので、非常に印象に残っています。今はデバイスパートナーとなっているYAMAHAさんのチップを、USE Inc.として初めて使用しました。初めての事で社内にノウハウがなかったため、使い方を必死に勉強し、時には直接YAMAHAさんに教えてもらったりして完成させました。ここで得たチップに関するノウハウは、その後の開発にも生きていて、後々まで良い影響があったという意味でとても印象に残っています。
二つめは、2009年ころのiPhoneドック開発です。
DAB(※1、ヨーロッパのデジタルラジオの規格)に対応した製品で、中国のシンセン、日本のUSE Inc.で開発、検証はイギリスで行うという、3拠点を結んでのプロジェクトでした。イギリスとアジア(日本とシンセン)は時差で昼夜が逆転しているため、イギリスで行った検証の結果を受けて日本・シンセンで(イギリスでは夜中となる)日中に作業を行い、またイギリス側に伝えるというリズムで開発を行っていました。時間の効率は良かったのですが、イギリスと直接コミュニケーションを取りたい時は、どうしても日本の深夜になってしまうため、完成前の3週間はかなりハードに働いた記憶があります。ちょうど結婚した時期と重なっていて、ダブルで非常に忙しかったのを覚えています。」
(※1 DAB:音声信号をデジタルデータとして送信する方式のラジオ放送。ヨーロッパを中心に普及しているが、日本では放送していない。)
―入社5年で、海外との仕事も経験しているんですね。では、三つめを教えてください。
「三つめは、2011年ころのドライビングレコーダー開発です。
これは、USE Inc.歴が長い人は誰でも印象に残っているであろう【炎上前から炎上していた】ドラレコ開発です。当時14~15名が4チームに分かれて開発していたのですが、大勢での開発体制に慣れていなかったために、明確なリーダーがおらず、各チームでそれぞれに開発を行っていました。簡単な設計であれば、こういうスタイルでも割と大丈夫なんですが、複雑な設計だったために、全部を合わせた時に細かい帳尻が合わず不具合がかなり出てしまいました。スケジュールが非常にタイトで、みな目の前の課題解決に必死になってしまっていたのが原因で、倍では済まないくらいのリカバリー作業が必要になりました。今となっては思い出話ですが、仕事のやりかたを考え直す良い機会になりました。」
開発は完璧にできないけれど、完璧を目指すことが大事。その心は……。
―この開発はHPのインタビューの際にも、お話されていますよね。
斎藤さんは、USE Inc.でエンジニアとしてのキャリアを積んできて、今年から経営層に入ったと思います。今の斎藤さんが、若手エンジニアになにか伝えるとしたらどんなことを伝えたいですか?
「そうですね。先ほどお話したような開発含め、様々な経験をしてきて思うことがあります。
一つは、自分で確認することです。
人が言ったことを鵜呑みにしないで、自分で納得できるまで調べる癖をつけておくことです。『〇〇さんが言ったから』のままにしておくと、いつまでたっても他人頼りで一向に自分のものにならないし、なにかあった時に自分で動けなくなってしまいます。わからないことを人に聞くことは大事ですが、その先一歩踏み込んで自分で確認して自分のものにするというところまでいって欲しいですね。」
―なるほど、確かにそうですね。教えてもらいっぱなしだと、時間が立つと忘れてしまうことも多そうです。
「二つめは、完璧を目指すことです。
完璧な開発をするのは難しいです。けれど、完璧を目指すことは誰にでもできるんですよね。時間との兼ね合いで、妥協することは実際の開発現場では多々ありますが、最初に完璧を定義しておけば、【より完璧に近い妥協】を選ぶこともできるのです。
そして、三つめは、なんでも良いから自分の好きなことを勉強するということです。好きで勉強すれば習得も早いし、自分なりの【できた】という感覚は、他の仕事で使えることも多いです。」
―技術系の『好き』を増やしていくのに、なにか良い方法はありますか?
「『トランジスタ技術』や『Interface 』(USE Inc.で定期購読している技術雑誌。リフレッシュエリアに置いてあり、誰でも自由に読むことができる)といった技術系の雑誌がオススメです。新人にも読むように勧めています。技術系の専門書は小難しいので、興味を持って読めば身になるけれど、興味を持つきっかけにするのは正直難しいです。その点雑誌は、特集などの専門的な記事と、いわゆる読み物として、新技術の紹介や技術者の裏話など気軽に読めるものも多いです。こういうところから、まずは開発に関する雑学やキーワードをインプットして興味を広げていくのが良いです。好きじゃないことは続けられない、好きだから続けていけると思っているので、自発的にできることを増やしていくイメージですね。」
10年後はどうなる? USE Inc.のモノづくり
―なるほど、本の前に雑誌を活用するんですね。それは新人教育もされていた斎藤さんならではの発想ですね。
では、最後にお聞きします。10年後 USE Inc.はどうなっていると思いますか?
「そうですね~、こういう話はHPのインタビューでも聞かれますが、答えるのが非常に難しいです。というのも、USE Inc.は時代に合わせたモノづくりをする企業で、10年後に必要とされるモノづくりを想像するのはとても困難です。だって、今から10年前に、今のスマホと連携するモノづくりって予想できなかったですよね。」
―確かにそうですね。時代を読みつつ、開発を行っていくものですものね。
「ただ、無線技術はこの先なくなることはない技術だと思っています。USE Inc.の強みでもあるBluetooth関連の開発は行っていると思いますし、介護や医療の現場で活用できるようになっているかもしれません。具体的なものは予想がつかないけれど、世の中の役に立つ何かを作っていることは確かだと思います。」
編集後記
淡々と粘り強く仕事をする斎藤さんのインタビューは、やはり淡々と進みました。大風呂敷を広げた話をするのではなく、見据えた未来に着々と進んでいくのは、子どもの頃からだったようですね。
USE Inc.の技術統括をしている斎藤さんの「世の中の役に立つ何かを作っていく」という言葉は、頼もしいなと感じました。
USE Inc.では、世の中の役に立つ、世の中をおもしろくするモノづくりに興味のあるエンジニアを積極的に採用しています。
新卒も中途も歓迎。未経験からでもエンジニアになれるチャンスがあります。
採用情報 | 株式会社ユー・エス・イー (use-inc.co.jp)
USE Inc. お問合せ先
https://www.use-inc.co.jp/contact/
インタビュー実施:2023年5月
Interview & Text 渡部美里