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日本のモノづくりを支えてきたエンジニアが語る35年のエンジニア人生~エンジニア解体新書vol.3

組み込み設計から完成品開発までこなすモノづくり企業ユー・エス・イー(USE Inc.)。ベテランエンジニアにインタビューし、エンジニアの魅力や、エンジニアとしての仕事の流儀、今の若手エンジニアへのメッセージをお届けします。


3回目は、きれいになった大阪新オフィスで行った、社内でレジェンドと言われる入社25年のベテランエンジニアのインタビューをお届けします。

プロフィール:鳥井数仁
エンジニア歴:35年
USE歴:25年


今やレジェンドと言われるエンジニアがUSE Inc.に合流するまで

レジェンドと言われる由縁は社歴の長さだけではないはず。その理由に迫ります

―社内でベテランエンジニアの話になると、必ず鳥井さんの名前が最初に上がっておりました。鳥井さん、本日は様々なお話を聞けるのを楽しみにしております。

「それは光栄ですね、ありがとうございます。」

―ではまず、エンジニア歴、USE歴からお伺いできますでしょうか?

「エンジニア歴は35年ほど、USE歴は25年です。振り返ってみると長くなりましたね。前職では、山口会長が以前にいた企業と取引のあるソフト開発会社でエンジニアをしていました。会社は違っていても、同じ国内オーディオメーカーのソフト開発に携わっていて、その縁もあって入社することになりましたね。

USE Inc.の大阪支社の立ち上げメンバーとなり、その際に前職で一緒だったエンジニア数名に声をかけています。その時に入社したエンジニアは、今もUSE Inc.に在籍していて、同じようにベテランの領域になっています。」

―そうですか、会長やほかの方々との付き合いも非常に長いですね。USE Inc.の初期は国内オーディオメーカーの仕事が多かったと聞いておりますが、鳥井さんも同じメーカーの仕事に携わっていらしたんですね。

「そうです。前職もUSE Inc.でも関わっていた製品は似ていて、カセットテープ、CD、MD、ビデオCD(※1)など国内の音楽を鳴らすものの開発には一通り携わってきましたね。

※1 コンパクトディスクに動画や音声などを記録していたデジタルビデオ規格。

日本のモノづくりを支えたエンジニアの開発製品

総売り上げ1,000億本以上と言われるカセットテープの再生技術も、今や貴重なものに

―カセットテープやMDとは懐かしいですね。残念ながら今は見なくなってしまいましたが……。

「実はそうでもないのです。カセットテープは今も年配の方からの需要があって、数年前に新しいラジカセを発売するからとソフト開発をしました。昔カセットテープの再生機器を作っていたというエンジニアももういなくて、残念なことに仕様や技術が受け継がれていないので、今となっては作れる人が本当に少ないんですよ。メーカーとしても作れる人を探していて、私に白羽の矢がたったようです。」

―そうなんですか、カセットテープってまだ需要あるのですね。確かに、再生や巻き戻しとかわかりやすいですよね。

「そうそう、裏返して裏面再生とか、頭出し機能とかね。テープで聞きたいっていう需要がある限り、あの製品は売られていくのかなと思っています。」

―作れる人がいないってことは、貴重な製品のソフトを作られたということですよね。他にどんな製品に携わっていらしたのですか?

「オーディオ系は一通り携わっていた中で、カーオーディオも20代の頃に作っていましたね。ある製品などは、4名のエンジニアだけでパパっと作り上げて、そこからの派生品も多かった記憶もあります。あと、ブルーレイ(Blu-ray)も作りました。これは本当に苦戦した製品でしたね。文字通り泣きながら作っていましたよ。」

―なにか難しい技術を使っていたのですか?

「技術というよりも、メーカーさんの関わり方ですね。関わりの深かった国内オーディオメーカーをはじめ、一緒に仕様を作りましょうというスタンスのメーカーさんとの仕事が多かったのだけど、このブルーレイのメーカーさんに関しては仕様もなく丸投げ状態で、厳しいレビューだけがあるというスタイル。それまでとの差もあり、大変な開発でした。

あとは、そうですね……『テレナビ』とか知っていますか? 持ち運びができるサイズのブラウン管の付いた製品で、車の中でTV視聴や動画鑑賞ができてカーナビ機能もついているというものです。今みたいに小型で高性能なスマホとかカーナビとかもない時代でしたからね。製品としては長く続かなかったけれど、1台目は中吊り広告もど~んと出して力を入れていたようです。あとよく知っているものだと、国内文具メーカーのラベルライターも開発しましたね。」

―これ、最近も新しいものが発売されていますよね。

「そうですね、僕が作ったのは初期モデルで本当にゼロから作り上げたんですよ。熱での転写、割り込みや漢字変換などソフトの細かい部分をやっていましたね。もちろん一人でやっていたわけではないから、自分が苦手なものは得意な人に頼んで……というチームワークで作り上げていきました。」

必ず答えはある、と言い切るエンジニアイズム

歴35年のエンジニアが一番大事にしているものは、意外にもシンプル

―なるほど。そうですか。鳥井さんが長年エンジニアをされている中で様々な新しい技術に触れてきたと思うのですが、ご自分の技術をどうアップデートされていったのでしょうか?

「私がエンジニアをしている最中にアセンブラ(アセンブリ言語)(※2)からC言語(※3)へという大きな変換がありましたが、特に勉強したというよりは、使いながら慣れていきましたね。自分が知らなくても、誰か得意な人がいれば、その人を仕事に巻き込んでやってもらうとか、一緒にやりながら先生になってもらって覚えていくとか。『勉強して覚える』というよりも、業務の中で触れてどんどん吸収していくスタイルですね。

誰がどんな技術が得意かというのも、人に興味を持ってコミュニケーションしていると、どこからか伝わってくるものなんですよ。得意なものを頼むわけだから、相手もちゃんと協力してくれますし。コロナもあって、そういう気軽なコミュニケーションが取りづらくなってしまったのが残念ですよね。」

※2 CPUが直接理解できるマシン語(機械語)を、対応した英単語や記号といった形で表現する。

※3 アセンブリ言語より人間にとって理解しやすい形での記述に対応し、組み込みソフトウェア開発では長く使われている。
※USE Technical lab.内の用語解説の記事も参考に
機械語、アセンブラ、C言語……組み込み設計で使われるプログラミング言語 USE Inc.を知るための用語解説~ Vol.4 

―そうですね、人との距離が少し空いてしまいましたよね。そういう背景も、あえて社内の一人ひとりにスポットを当てて、エンジニアイズムを伝えるというこのnoteの取り組みにも繋がっています。鳥井さんがエンジニアとして一番大事にしてきたことは何でしょうか?

大事にしてきたのは、一言で云うと諦めないこと。例えば不具合が出たとしても、ソフトだから解決すべき不具合のある部分もその中に全部書いてあるんですよ。あきらめなければ必ず答えはある。時間切れで後ろ髪引かれながら終了することがあるのも事実ですが、『諦めない。必ず答えはある。』と考えていると、その経験がきちんと次に活かせるんですよね。」

時代によって変化する製品や技術、働き方

仕事を取り巻く環境が変化している中で、レジェンドが今思うこと

―今、改めてご自分のエンジニア人生を振り返ってみてどうですか?

エンジニアとして、本当に面白い時代に生まれたなと思っていますよ。昔は各メーカーが競い合って、世の中にないもの、世界初のものを作りたいと力を入れていましたからね。私たちエンジニアがプラモデルを作るように楽しみながら開発したものを、メーカーがお金をかけて製品にしてくれるわけでしょう? エンジニアとしてはやはり面白いですよね。それに、今のように働き方に対する規制もなかったから、徹夜もあったし、今でいうブラックな働き方も散々してきたけれど、それはやっぱり楽しかったから。これまで数えきれないほど開発してきたというのに、CDプレイヤーも買ったことなくて、つい最近買いました。」

―というと…?

「仕事が忙しくて、家でゆっくり音楽を聴く時間なんてなかったということです。聴きたいものがあれば製品のテスト用のCDとして仕事中に聴いていましたね。今は時代の流れもあって働き方自体が昔とは変わってきているし、エンジニアに求められるものも変わってきていますよね。その中でもUSE Inc.は『オーディオ→ケータイ→iPhone→e-Bike』と時代の波に上手に乗って、新しい技術を取り入れながら開発をしてきているなと思っています。私も今e-Bikeのモーターで携わっているものがあって、人の動きに合わせた計算や仕様・部品などを見るのは面白いですね。」

―USE Inc.が携わっている製品もどんどん変化していっていますよね。鳥井さんの目から見て、今後USE Inc.はどうなっていくと良い方向に進んでいくと思いますか?

「そうですねえ、もう退職している身だから『会社の将来』を考えることも減りましたけど、やっぱり若い人が話合いながら物事を決めていける会社が良いんじゃないかなと思います。おじさんが作ったルールなんて壊しちゃって良いと思っています。ルールは自分たちで作るものだという事ですね。

編集後記

インタビュー当日に、新幹線の乗り間違えから大幅に遅刻をしてしまったのですが、笑いに変えて(さすが大阪の方??)、にこやかにインタビューに応じていただき感謝です。

カセットテープやCD、MDはお世話になってきたので、その製品仕様を考え工夫をこらし開発してきた方とお話しているというのは不思議な感覚でした。生活の中で当たり前のように使っているものでも、誰かの頭と手によって生み出されたものなんですよね。最後の言葉が、まさにゼロからモノを作り出してきたエンジニアさんならではの言葉と非常に心に響きました

限られた時間の中でのインタビューでしたが、35年築いてこられたエンジニアイズムの一端でもお伝えすることができればという想いで、記事に仕立てました。


e-Bikeの開発にも関わるUSE Inc.

USE Inc. お問合せ先
https://www.use-inc.co.jp/contact/

USE Inc. 採用情報 \これからのモノづくりを支えたいエンジニア募集中/
https://www.use-inc.co.jp/recruit/


インタビュー実施:2023年7月 大阪の新オフィスにて 
Interview & Text 渡部美里

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エンジニア解体新書|USE Inc. Technical Lab. / ユー・エス・イー テクニカルラボ|note

vol.1 歴37年のエンジニアが若手に求める3つのスキル
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