マンキュー入門経済学の入門①「経済学十大原理」
先日知人から改めて「経済学について解説して欲しい」と言う相談があったため、簡易な「マンキュー入門経済学」から解説記事を書いていきたいと思います。
とは言え、「入門経済学」と言う名前がついていますが、日本語版だけでも全530ページ以上あり意外と読み込むのは大変なので、ギュっと縮めていきましょう。
今回は「経済学十大原理」についてです。マンキュー入門経済学では、「経済学の中心となる基本的な考え方」として、この「十大原理」を定義しています。
トレードオフ
「何かを得るためには、何かを諦める必要がある」よね、と言う考え方です。
例えば、新システムを「自社開発するか、外部委託するか」などの選択です。(本の中では、学生がアルバイトをすると、お金は手に入るが勉強する時間が無くなると書かれています)
機会費用
機会費用とはトレードオフに近い概念で、「選択したことで失った価値(費用)」を指す概念です。
例えば、さっきの例で「外部委託を選択」した場合、「時間の削減には繋がりますが、自社開発すれば知見が得られるはずだった」と考えます。(本の中では、大学に進学すると、大学に行かなければ働いて得られるはずの賃金をコストとして考えると書かれいます)
人間は合理的で、限界的な変化を考える(限界分析)
合理的とは
利益とコストを比較し、できるだけ自分にとって良い結果(満足や利益)を得る選択をすること。(そして、必ずしも合理的ではない、と言う考え方が行動経済学でした)
限界的な変化とは
1単位当たりの変化(もう1つ追加購入するか、もう1つ追加生産するetc…)
どのように考えるか
限界利益(1単位増加した際の利益)>限界費用(1単位増加した際の費用)なら行動を追加し、
限界利益(1単位増加した際の利益)<限界費用(1単位増加した際の費用)なら行動を止める。
人々はインセンティブ(誘因)に反応する
正のインセンティブ:報酬。行動を促進する。割引セールなど。
負のインセンティブ:罰則。行動を抑制する。罰金など。
交易(取引)は全ての人々をより豊かにする
これは貿易で良く語られるケースですが、A国の余剰資産がB国で貴重な資産であるケースがあり、また逆にB国の余剰資産がA国での貴重な資産であるケースがあります。
それを「交換」と言う手段だけで、足りないところを補い合えるのであれば、それは両国にとって良いことです。
例えば、日本とブラジルの関係を見れば、日本は車を安く製造できますが、コーヒー豆を安く製造することができません。
しかし、ブラジルは車を安く製造することができせんが、コーヒー豆を安く製造することができます。
両国は車とコーヒーを交換することで、お互いにメリットを受けることができます。
市場は経済を組織する良策(市場経済)
アダム・スミスの「見えざる手」の話ですね。
つまり、市場(マーケット)における価格と供給の関係、消費者と企業の関係は誰か偉い人が決めるのではなく、「みんなが利益を求めていくとちょうどいいバランスになる」と言う概念です。
例えば、企業が「この商品は10,000円じゃなきゃ売らないぞ!」と言っても、誰も買う人がいないと自然と200円ぐらいに落ち着くかも、と言うことです。
政府の役割
前段の市場経済は「自由である」ことが前提の話でした。
しかし、現実には企業の独占や寡占によって「この商品は10,000円じゃなきゃ売らないぞ!」と言った商品を、みんな泣く泣く10,000円で買わざるを得ない状況になります。
それを、政府が「独占禁止法」などの法律によって解消できるケースがあるということです。
逆に補助金などによって、特定企業だけが儲けてしまうケースもあるので、一概に何が成功で何が失敗かを判断するのは難しいところです。
生活水準は生産能力に依存する
生産能力(生産性)とは:労働者1人あたりが一定時間でどれだけの財やサービスを生産できるかを指します。
生活水準は、一国の国民が享受できる財やサービスの量によって決まります。
GDP(国内総生産)の話ですね。1人当たりの所得が、他国と比して高ければ前段の「交換」の概念において、有意な取引ができるようになります。
つまり、日本とブラジルが、車とコーヒーを「等価交換」するわけですが、「日本から見た車の価値、コーヒーの価値」と、「ブラジルから見た車の価値、コーヒーの価値」がイコールではない、という事です。
通貨と物価
インフレーションは貨幣量によってコントロールできるとされています。
つまり100万円は大金ですが、円を大量発行し日本人全員の財布に100万円入っていれば「100万円の価値が落ちる=インフレーション」になるのです。
第二次世界大戦後のドイツなどでは、パン1個を買うためにリヤカーに札束を積んでいく必要があった、と言う逸話があります。
この場合、貨幣発行と言うのは実際には輪転機をぐるぐる動かすのではなく、国債発行と言う形で行われます。(単にお金を印刷しても、受取人がいませんので……)
インフレと失業との短期的なトレードオフ
過度なインフレは経済破綻を起こしますが、適度なインフレは景気を刺激し、企業の業績を引き上げ雇用が増加し、失業率が低下します。
つまり、適度なインフレと失業率の低下が短期的なトレードオフの関係にあるという事です。
ただし、長期的にはインフレーションは購買意欲を低下させ、再度景気の悪化を招きます。
また、実質賃金率が上がらないのに、(好景気ではない)外部要因により物価が上昇する現象をスタグフレーションと言います。(今の日本の状況ですね)
まとめ
この「入門経済学の入門」シリーズは、まとまった量になったら書籍化する予定です。
もしもご希望の解説などがあれば、コメントにて教えて下さい。
また、もしよろしければ、ちょっとマニアックな事業計画書の書き方を書籍にしておりますので、ご興味のある方は是非ご一読下さい。