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お気に入りの木の下で

いい歳をしてなんですが、同年代の友達のお誕生日会を、『私たちの木』の下でやりました。

 私と友達はよく河原を散歩するのですが、その木はその途中にみつけたのでした。それからは『私たちの木』と呼んで、休憩したりお茶をしたりお昼を食べたりしています。
 低木で、みつまたに分かれている枝がちょうどアーチのように中に空洞をつくって覆いかぶさる、そんな子供の秘密基地のような場所なので、実際、子供たちの遊び場でもあるようでした。
 穴が掘られてたりシロツメクサの冠が茶色くなって木にひっかかっていたり、根元の幹の裂け目に折り紙や手紙のようなものが挟まれていることもあるし、そこで文通が行われているのかもしれない。無防備で秘密めいたなつかしいかんじにどきどきします。
 そんな『私たちの木』は程よく木蔭を作ってくれ、夏の暑い日差しから身を守ってくれるし小雨くらいなら雨宿りもできます。真冬になると深く日が差すから温かいポジションに身をおけばいい。
そしてなにより、上空から常に人間を見張っているとんびから私たちを守ってくれるのです!
京都を流れる有名な川は、等間隔で河原に座る人たちが有名ですが上空から神業のように食べ物を狙って襲来するとんびもまた有名です。春や秋などピクニックにたくさんの人が集う河原では常にとんびを警戒しなくてはいけないのです。(来春お花見をするときは、本当に気を付けてくださいね!)

 冒頭の話に戻って友達の誕生日。
 節目の大事な誕生日だったので特別なものにしたく、彼女の好きな南インド料理屋にするか間違いなくおいしいであろう評価の高いちょっといいレストランにするかおうちでケータリングとケーキで人を招いてパーティをするか。悩みに悩んだ結果『私たちの木』の下でお祝いすることにしたのでした。

 ひとりで準備をしていたのですがひょんなことから人の輪が広がって、思いがけず複数人でお祝いすることになりました。
 数日前からアイデアを出し合って、綺麗な包装紙やかわいい折り紙で飾りを作り、当日はそれらを枝に渡したりお花なんかを散りばめて、素敵なブランケットを敷いて持ち寄りのお料理やお菓子をセッティングしました。
そうして準備からみんなが全力で楽しんで取り組んだ結果、バースデーガールの友達は驚きすぎて泣いてしまい、でもそのあとはみんなで笑いっぱなしの数時間を過ごしました。
 自分の誕生日も含め今までに経験したお誕生日会(パーティというより会のほうがしっくりくる)の中では一番の思い出に残るお誕生日会です。

あの日集まったみんなとはそれ以降会う機会がないのですが、なんだかまだ不思議と繋がっているような、そんな余韻が残っています。



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