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風の音、虫の声が聞こえない日々

2023年12月
 12月。退職までの有給消化中な日々、白いご飯とお魚と、お漬物となぜかブロッコリーが美味しくて仕方がない。
 仕事柄もあって環境問題意識や健康志向な人たちに囲まれて仕事をしていたので、なんとなく無添加でヴィーガンで減塩な食生活になっていたのだけど(収集するくらい塩好きなのにね)、しっかりと動物性たんぱく質と塩を摂取してごほうびおやつを食べていたら、なんとなく身体の輪郭がしっかりしてきたような、血が濃くなって身体の末端までちゃんと巡っているようなそんな感覚を覚えています。

 12月前半はきょうだいが住む信州の山奥を訪ねていました。暖炉の火の番をしながら猫と遊んだり乾燥柚子をすりつぶしたり(柚子塩用)youtubeで怖い話を見たりしていました。
 何年ぶりだろうか。「しなくてはならない」ことをせずに過ごせる時間。
 薪がはぜる音、早朝畑の霜柱を踏む音、遠くの山から聞こえるキジの鳴く声、山奥の家の周りは厳かな自然の音があふれていて、寒さもあったからだけどツーンと鼻の奥が痛くなった。ちゃんと自分の世界に戻ってきたような気がして嬉しくて少し涙がでました。

 会社員をしている中で当然ながら仕事を中心に日々を送っていたので思考回路も左脳的になってしまい、人にも自分にも厳しい性格むき出しに生きていたのです。
 月を見上げたり河原で風を感じても、ただただ情報処理として「綺麗だな」「涼しいな」「川の匂いがするな」くらいのとらえ方しかしていませんでした。
 社会情勢や環境問題などの本や雑誌やネット記事を読んでは同僚たちと討論し合い(これも職種的に避けられなかったのだけれど)、でもそれはポーズ以外のなにものでもなかったのです。そういう人間が良しとされる環境だったからそう振舞って「すごいね、ちゃんと考えているね」って評価されたかっただけだったのでした。

 そういった義務にも似た縛りの中にいるときにも、私の外側では四季は巡っていたしちゃんと鳥や虫は鳴いていたのです。ようやくそのことに気が付けた2023年12月なのでした。

 ただいま、私の世界。



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